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トレンディなリアス・バイシャス、魚介にあうヘラルド・メンデスのアルバリーニョ

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 アルバリーニョ。ポルトガル北東部、あるいはスペイン北西部ガリシア州で生まれたとされる白ブドウを使う白ワインが、世界的な人気を集めている。湿潤な気候と海の影響を受けたミネラル感豊かなワインは、魚介を主体にしたヘルシーな料理と相性が良く、先端のワインバーではバイ・ザ・グラスに多用されている。


 大西洋岸のリアス式海岸が広がるリアス・バイシャスから、長老格の生産者ヘラルド&マヌエル・メンデス親子が初来日した。世界が注目するガリシアのテロワールとアルバリーニョから醸すワインの魅力を、取材と試飲から探った。


 ガリシア州はスペイン北西部に位置し、南はポルトガルと国境を接している。州南部のリアス・バイシャス(Rias Baixas)DOは、オ・ロサル、コンダード・ド・テア、ソウトマイオール、バル・ド・サルネス、リベイラ・ド・ウジャの5つのサブリージョンに分かれる。バル・ド・サルネスが最も重要な地域で、ヘラルド・メンデスはその中のメアーニョ村にある。


 元々はカイーニョ・ティント、メンシア、エスパデイロなどの黒ブドウが多かったが、1986年にDOに認定されてからアルバリーニョの栽培が増えた。87年ごろは50万キロしかなかった生産量が、現在は4000万キロに増えた。海の影響で年間降水量は1600ミリと多く、日照時間は少なめ。主に花崗岩の地質で、風化した砂状の表土が広がる土壌や酸化鉄が広がる土壌もあり、一部に粘板岩や粘土も含まれる。湿度が高いため、棚式栽培が中心となっている。


 ボデガス・ヘラルド・メンデスは、ヘラルドの父フランシスコが73年にワイン造りを始め、DO認可に貢献した。自家消費用に造っていた。ヘラルドがワイン造りの面白さに魅了されて、本腰を入れた。DO認可の前は、手作りのラベルを貼って、地元の飲食店や訪問者への直接販売が主体だった。フランシスコは鍛冶屋(フェレイロ)とワイン生産を兼業していたため、「ド・フェレイロ」とブランド名をつけた。


 「DOの認可を受けなかったら、ワイン造りを続けていられたかどうかわからないね。アルバリーニョは果皮が厚く、房の中で粒がばらけているから湿気の強さに耐えられる。棚仕立てで風通しをよくしている」とヘラルド。


 樹勢が強いので、収量の管理が重要だ。ヘクタール当たり1万2000キロまで認められているが、ヘラルドは8000キロ以下に抑えている。60ヘクトリットル以下に相当する。平均樹齢は40-45年だが、200年以上の自根の古木も生き延びている。創業時から農薬を使わず、有機栽培を続けている。べと病とうどんこ病は、硫黄と銅で対処する。近年はエスカも問題になっている。


 13haの畑から、「アルバリーニョ・ド・フェレイロ」と古木の「アルバリーニョ・ド・フェレイロ セパス・ヴェリャス」のほか、3つの畑別ワインを生産している。12-24時間のスキンコンタクト後に、野生酵母によりステンレスタンクで発酵し、オリと共に熟成するのが基本。キュヴェにより樽も使う。ノンマロ。降雨量が600ミリと少なく、猛暑で8月28日に収穫を始めた2017ヴィンテージを主体に6キュヴェを試飲した。


 「ヘラルド・メンデス アルバリーニョ・ド・フェレイロ 2017」(Gerardo Mendez Albarino Do Ferreiro 2017)は白い花、レモンの皮、フレッシュな柑橘のトーン、果皮からくる軽めのフェノリックス、軽やかで、日照の多さを感じる豊かなフィニッシュ。アプローチャブル。4500円。88点。


 「ヘラルド・メンデス アルバリーニョ・ド・フェレイロ 2016」(Gerardo Mendez Albarino Do Ferreiro 2016)は熟成によって2017とは全くの別物。フリンティでヨード、洋ナシの皮、ジンジャー、塩気交じりのうまみがじわじわと広がる。果実のふくらみがある一方で、フィニッシュは垂直的に伸びて、焦点があっている。2016は貴腐がついて豊かになったという。4500円。91点。


 「ヘラルド・メンデス アルバリーニョ・ド・フェレイロ ロウリド 2017」(Gerardo Mendez Albarino Do Ferreiro Lourido 2017)は赤い花崗岩、風化した花崗岩、海水と交じり砂状の花崗岩など6つの区画から。海まで300mと最も近い畑。ステンレスタンクで14か月間、オリと熟成。潮のしぶき、グレープフルーツ、カモミーユ、クリーミィなテクスチャー。空気に触れると、口蓋に張り付く硬さがほどけて、コアに詰まった果実が顔をのぞかせる。シャープなリンゴ酸が残っていて、正確なフィニッシュ。6000円。89点。


 「ヘラルド・メンデス アルバリーニョ・ド・フェレイロ アディナ 2017」(Gerardo Mendez Albarino Do Ferreiro Adina 2017)は酸化鉄を多く含む粘板岩土壌から。海から2.5キロ離れているが、霧の影響を強く受けている。レモンのムース、洋ナシ、シルキーで、石をなめるようなニュアンスが強く、ミネラル感に富んでいる。シソ、ジンジャー、海から上がった時のように唇に塩気が残る海のワイン。6000円。90点。


 「ヘラルド・メンデス アルバリーニョ・ド・フェレイロ ドウス・フェラドス 2017」(Gerardo Mendez Albarino Do Ferreiro Dous Ferrados 2017)は古い樽で発酵し、オリと共に7か月間寝かせる。フローラルで、クリーミィなテクスチャーにふくらみがある。よく熟したレモン、タラゴン、はつらつとしたドライブ感があり、精妙なうまみが乗っている。酸と果実のバランスがとれていて、エネルギーのあるフィニッシュ。6000円。91点。

 
 「ヘラルド・メンデス アルバリーニョ・ド・フェレイロ セパス・ヴェリャス 2017」(Gerardo Mendez Albarino Do Ferreiro Cepas Vellas 2017)は樹齢200年の古木からステンレスタンクで11か月間熟成。洋ナシ、オレンジのタッチ、フローラルで、オリのニュアンスが強い。水平的な広がりがあり、ほろ苦みを伴うミネラル感、うまみが乗っていて、緊張感が保たれている。7000円。92点。


 リアス・バイシャスの白ワインが広がったのは、86年にDO認定を受けてから。マドリッドの料理人が魚介に合わせるようになり、それが外国に広まったという。地元では朝、仕事に出かける前にクイッと1杯飲んだり、フレッシュな魚介料理やタパスと合わせる。魚介料理の多い日本でも、もっと活躍の余地がある。


 輸入元はワイナリー和泉屋。

200年を超すセパス・ベーリャスのアルバリーニョ
ヘラルド(右)とマヌエル・メンデス親子
棚仕立てされるセパス・ベーリャス

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