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世界最大級のワインコンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」(IWC)の2018年SAKE部門の審査が山形県で開かれ、9部門のトロフィー受賞銘柄が18日、発表された。
IWCは1984年に英国で設立された世界最大級のワイン品評会。大勢のマスター・オブ・ワイン、トップバイヤー、ジャーナリストらが審査員に名を連ね、ブラインド・テイスティングによる厳格な審査方式で、最高の権威と市場に対する大きな影響力を誇る。SAKE部門は2007年に始まり、国内開催は3回目。今年は清酒「山形」が2016年に国の保護するGI(地理的表示)を取得した山形県が誘致した。
審査会は、15か国から59人の審査員が天童市のホテルに缶詰めになり、過去最多456社の1639銘柄をブラインド・テイスティングで審査した。審査部門は、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、本醸造酒、吟醸酒、大吟醸、古酒、スパークリング、普通酒の9つに分かれる。ゴールド、シルバー、ブロンズのメダルを選び、ゴールドメダルの中からさらにトロフィーを選んだ。また、ゴールドメダルの中で優れたコストパフォーマンスの酒がグレートバリューに選ばれた。
2018年のゴールドメダルは97銘柄で、東北地方が32銘柄で受賞する強みを見せた。開催地の山形県は17銘柄で5年連続で数がトップ。栃木の9銘柄、福島の7銘柄、新潟と兵庫の各6銘柄と続いた。
トロフィーは以下の通り。
▼普通酒 「天鷹 旨辛」(天鷹酒造、栃木)
▼本醸造 「初孫 伝承生もと」(東北銘醸、山形)
▼純米 「純米酒 月弓」(名倉山酒造、福島)
▼純米吟醸 「フモトヰ純米吟醸山田錦」(麓井酒造、山形)
▼純米大吟醸 「金雀40%」(堀江酒場、山口)
▼吟醸 「奥の松 あだたら吟醸」(奥の松酒造、福島)
▼大吟醸 「宮の雪 大吟醸」(宮崎本店、三重)
▼古酒 「貴醸大古酒 古時計」(加茂川酒造、山形)
▼スパークリング 「一ノ蔵すず音Wabi」(一ノ蔵、宮城)
IWCのSAKE審査はワインと同じく、厳格に運営されている。審査員は、経験や能力に基づいて、アソシエイト・ジャッジ、ジャッジ、シニアジャッジ、パネルチェア、コ・チェアの5段階に分かれている。59人のうちMWは4人。11のテーブルに、経験豊かなパネルチェアが1人ずつ配置され、シニアジャッジの助けを借りながら、各テーブルの意見をまとめる。部門と醸造データ以外は完ぺきなブラインド・テイスティングとなっている。
ラウンド1では「アウト」(79点以下)、「コメンディッド」(80-84点)、「メダル」(85-100点)の3段階に分類し、ラウンド2ではメダルの候補をゴルード、シルバー、ブロンズに分ける。最後のトロフィー・テイスティングは、コ・チェアとパネル・チェアがすべてのゴールドを再審査して絞り込む。
5人のコ・チェアが要だ。ラウンド1では、メダルにもれたアウトとコメンディッドをチェックし、ラウンド2では金銀銅の区別に誤りがないかを確認して、セイフティネット役を果たす。テーブルの議論が割れた時はアドバイスをする。メダル受賞酒は10人以上、ゴールドは少なくとも20人以上が試飲していることになる。多彩な審査員の何重にもわたるチェックによって、質の高いSAKEだけが選ばれる仕組み。また、1日の試飲数は100以下に抑えられ、疲れで判断がぶれないようになっている。
私も審査員を務めてまだ2年目だが、1本の酒の評価に議論が白熱して30分近くかかる場合もある。コストをかけて出品している造り手の情熱に報いるという思いは審査員に共通している。自らの試飲能力を試される場でもあり、経験豊かな審査員との議論は、発見と興奮に満ちている。そうした経験が審査員の質の向上にもつながっている。
今回の審査を終えて、パネルチェアのアンソニー・モスMWは「2年前に比べて、吟醸スタイルSAKEの酸が高めになっていて、多様なアロマ、ストラクチャー、テクスチャーが、多様な方向を新たに模索している。純米酒は米、乳酸やウマミのある古典的なスタイルが減って、純米吟醸的なスタイルが増えている(優れたものは純米らしいパレットのインパクトを保っている)」とFacebookでコメントした。
コ・チェアの大橋健一MWは「山形は岩手の南部杜氏と新潟の越後杜氏にはさまれて、刺激を受けながら高品質を保っている。ゴールドメダルの中でもヴァリュエーションが広がり、スタイルの多様性が目立った。IWCの教育効果が出ている。メダルやトロフィーを受賞したSAKEは、日本の消費者心理に訴えて売り切れになることもある。そうしたプロモーション効果もある」と語った。
トロフィー9銘柄から最高評価となる「IWCチャンピオンSAKE」は7月、ロンドンで発表される。世界遺産に登録された和食の人気が広がり、ロンドン、ニューヨーク、パリなど世界の主要都市に和食レストランが増加している。それに伴って、SAKEの需要が高まっている。今回の審査員にも、ニューヨークやロンドンで活躍するコンサルタントがたくさん含まれていた。外務省は在外公館でIWCの受賞SAKEをふるまうなど、日本文化の一つとしてのSAKEプロモーションに力を入れている。
◆
一方、IWCはSAKE大国の日本をワイン市場としても重視している。日本ワインの出品をこれまで以上に促す方針だ。9月24日前後に、イベント・ディレクターのクリス・アシュトンがプロモーションで再来日する。その際に、大橋MWが甲府市で、ワイン審査について解説するマスタークラスを開く予定。
IWCは1984年に英国で設立された世界最大級のワイン品評会。大勢のマスター・オブ・ワイン、トップバイヤー、ジャーナリストらが審査員に名を連ね、ブラインド・テイスティングによる厳格な審査方式で、最高の権威と市場に対する大きな影響力を誇る。SAKE部門は2007年に始まり、国内開催は3回目。今年は清酒「山形」が2016年に国の保護するGI(地理的表示)を取得した山形県が誘致した。
審査会は、15か国から59人の審査員が天童市のホテルに缶詰めになり、過去最多456社の1639銘柄をブラインド・テイスティングで審査した。審査部門は、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、本醸造酒、吟醸酒、大吟醸、古酒、スパークリング、普通酒の9つに分かれる。ゴールド、シルバー、ブロンズのメダルを選び、ゴールドメダルの中からさらにトロフィーを選んだ。また、ゴールドメダルの中で優れたコストパフォーマンスの酒がグレートバリューに選ばれた。
2018年のゴールドメダルは97銘柄で、東北地方が32銘柄で受賞する強みを見せた。開催地の山形県は17銘柄で5年連続で数がトップ。栃木の9銘柄、福島の7銘柄、新潟と兵庫の各6銘柄と続いた。
トロフィーは以下の通り。
▼普通酒 「天鷹 旨辛」(天鷹酒造、栃木)
▼本醸造 「初孫 伝承生もと」(東北銘醸、山形)
▼純米 「純米酒 月弓」(名倉山酒造、福島)
▼純米吟醸 「フモトヰ純米吟醸山田錦」(麓井酒造、山形)
▼純米大吟醸 「金雀40%」(堀江酒場、山口)
▼吟醸 「奥の松 あだたら吟醸」(奥の松酒造、福島)
▼大吟醸 「宮の雪 大吟醸」(宮崎本店、三重)
▼古酒 「貴醸大古酒 古時計」(加茂川酒造、山形)
▼スパークリング 「一ノ蔵すず音Wabi」(一ノ蔵、宮城)
IWCのSAKE審査はワインと同じく、厳格に運営されている。審査員は、経験や能力に基づいて、アソシエイト・ジャッジ、ジャッジ、シニアジャッジ、パネルチェア、コ・チェアの5段階に分かれている。59人のうちMWは4人。11のテーブルに、経験豊かなパネルチェアが1人ずつ配置され、シニアジャッジの助けを借りながら、各テーブルの意見をまとめる。部門と醸造データ以外は完ぺきなブラインド・テイスティングとなっている。
ラウンド1では「アウト」(79点以下)、「コメンディッド」(80-84点)、「メダル」(85-100点)の3段階に分類し、ラウンド2ではメダルの候補をゴルード、シルバー、ブロンズに分ける。最後のトロフィー・テイスティングは、コ・チェアとパネル・チェアがすべてのゴールドを再審査して絞り込む。
5人のコ・チェアが要だ。ラウンド1では、メダルにもれたアウトとコメンディッドをチェックし、ラウンド2では金銀銅の区別に誤りがないかを確認して、セイフティネット役を果たす。テーブルの議論が割れた時はアドバイスをする。メダル受賞酒は10人以上、ゴールドは少なくとも20人以上が試飲していることになる。多彩な審査員の何重にもわたるチェックによって、質の高いSAKEだけが選ばれる仕組み。また、1日の試飲数は100以下に抑えられ、疲れで判断がぶれないようになっている。
私も審査員を務めてまだ2年目だが、1本の酒の評価に議論が白熱して30分近くかかる場合もある。コストをかけて出品している造り手の情熱に報いるという思いは審査員に共通している。自らの試飲能力を試される場でもあり、経験豊かな審査員との議論は、発見と興奮に満ちている。そうした経験が審査員の質の向上にもつながっている。
今回の審査を終えて、パネルチェアのアンソニー・モスMWは「2年前に比べて、吟醸スタイルSAKEの酸が高めになっていて、多様なアロマ、ストラクチャー、テクスチャーが、多様な方向を新たに模索している。純米酒は米、乳酸やウマミのある古典的なスタイルが減って、純米吟醸的なスタイルが増えている(優れたものは純米らしいパレットのインパクトを保っている)」とFacebookでコメントした。
コ・チェアの大橋健一MWは「山形は岩手の南部杜氏と新潟の越後杜氏にはさまれて、刺激を受けながら高品質を保っている。ゴールドメダルの中でもヴァリュエーションが広がり、スタイルの多様性が目立った。IWCの教育効果が出ている。メダルやトロフィーを受賞したSAKEは、日本の消費者心理に訴えて売り切れになることもある。そうしたプロモーション効果もある」と語った。
トロフィー9銘柄から最高評価となる「IWCチャンピオンSAKE」は7月、ロンドンで発表される。世界遺産に登録された和食の人気が広がり、ロンドン、ニューヨーク、パリなど世界の主要都市に和食レストランが増加している。それに伴って、SAKEの需要が高まっている。今回の審査員にも、ニューヨークやロンドンで活躍するコンサルタントがたくさん含まれていた。外務省は在外公館でIWCの受賞SAKEをふるまうなど、日本文化の一つとしてのSAKEプロモーションに力を入れている。
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一方、IWCはSAKE大国の日本をワイン市場としても重視している。日本ワインの出品をこれまで以上に促す方針だ。9月24日前後に、イベント・ディレクターのクリス・アシュトンがプロモーションで再来日する。その際に、大橋MWが甲府市で、ワイン審査について解説するマスタークラスを開く予定。
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