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ポテンシャルあふれる北海道の可能性を探る

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 北海道は可能性のある産地だ。台風と梅雨の影響を受けず、温暖化によって、ブドウの熟度も上がっている。ブルゴーニュのドメーヌ・ド・モンティーユのエティエンヌ・ド・モンティーユが函館周辺に進出してワイナリーを開くのも、その可能性を見越してのことだ。
 ワイン造りの歴史は、北海道開拓使庁が明治時代に札幌市にブドウ園を開いたところにさかのぼる。先駆者は1963(昭和38)年の十勝ワインで、72年のふらのワインがこれに続いた。ワイナリーは2000年代に入って急増している。中心は道内のワイナリーの3分の1が集中する余市町と仁木町。発展し続ける北海道ワイン産業の象徴的な産地となっている。果実栽培が盛んだが、80年代にワイン用品種の栽培を始め、函館ワイン、北海道ワイン、サッポロビールの契約栽培農家が広がった。
 中心的な存在の一つがドメーヌ・タカヒコ。ココ・ファームの栽培責任者として各地の畑を見てきた曽我貴彦さんが、2010年にドメーヌを創業。その後に、余市がワイン特区となり、多様なワイナリーが生まれた。彼の下で研修した鈴木淳之さんが15年に創業したドメーヌ・アツシ・スズキ、16年にオープンしたドメーヌ・モン、ワインツーリズムに力を入れるNIKI Hills ヴィレッジなどが、ケルナー、ツヴァイゲルト、ピノ・ノワールなどに注力している。
 小樽郊外に本拠を置く北海道ワインは、国内産ブドウを100%使った日本ワインの最大手生産者だ。設立は74年。北海道産ブドウの4分の1の量を仕込む。空知地方に広がる約450haの鶴沼ワイナリーは、日本最大のブドウ園で、約30品種を栽培している。
 札幌市の東に位置する空知地方は、日本初の自社畑ブドウ産生産者として2002年に誕生した山崎ワイナリーや、野生酵母による発酵、亜硫酸無添加、全房発酵などに挑戦するタキザワ・ワイナリーなど個性的なワイナリーで活況を呈している。
 十勝ワインは北海道のパイオニアというだけでなく、63年に日本初の自治体ワイナリーとして誕生した。その後の第三セクター方式のワイナリーの手本となった。 道央のふらのワインは72年に富良野市が設立した。北海道庁が政策として、北海道ワインの販売促進を進めており、産地としての将来は明るい。
 今回は北海道の30軒を超す主要ワイナリーに呼びかけて、14ワイナリーからサンプルの提供を受け、一部は購入した。ワイナリーを代表する銘柄の送付をお願いして集まったのは26銘柄。3人のレギュラー・テイスターに加えて、英国のジャーナリスト、ジェイミー・グッドと南アフリカのキャシィ・ヴァン・ジルMWも参加して、10月から11月にかけて2回にわたり試飲した。平均点が85点以上の7本を掲載する。NIKI Hills ヴィレッジから3銘柄、ドメーヌ・タカヒコから2銘柄、ドメーヌ・アツシ・スズキとドメーヌ・モンの各1銘柄が優良(85-89点)だった。

ワインの評価はこちhttps://www.winereport.jp/archive/1317/
 
サンプル提供を受けたのは以下の14ワイナリー。

アップルランド山の駅おとえ

十勝ワイン(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)

TAKIZAWA WINERY

ドメーヌ・アツシ・スズキ

ドメーヌ・タカヒコ

ドメーヌ・モン

NIKI Hills ヴィレッジ

はこだてわいん

ふらのワイン(富良野市ぶどう果樹研究所)

北海道中央葡萄酒

北海道ワイン

増毛フルーツワイナリー

松原農園

山崎ワイナリー

山本昭彦
「言うまでもなく、北海道は国内で最も興味深いテロワールの一つ。冷涼紀行の固有品種という世界の潮流と照らし合わせても興味深い。規模の大きなワイナリーから、挑戦的な新進生産者まで多様性がある。生産量が少ないせいか、優れた造り手のサンプルは集められなかったが、紹介するワイン以外にも宝石が眠っている。自然派ワインを好むジェイミー・グッドが予想以上に高い評価をした。インターナショナル・ワイン・チャレンジのコ・チェアマンを務め、世界を旅するジャーナリストの彼が高い得点をつけたということは、世界の舞台で評価できる素地があることを意味する」

大橋健一
「他の都道府県同様すべての生産者に高品質の太鼓判を押せる状況ではないものの、世界から注目される産地となりつつある。北海道はスキー観光客も多く、今後はさらに外国人観光客も増える可能性が高い。クラフト・ワイナリーが投資回収が大変なのは理解できるが、畑から醸造までをより緻密に考えて、更なる品質の向上を図っていただきたい。ドメーヌ・タカヒコに代表されるいくつかの生産者に関して私は毎年試飲を続けさせて頂いているが、海外の産地よりヴィンテージ毎の香味における幅が大きいように感じる。それだけセンシティブな産地であると言え、そこに安定感をもたらしてゆくのか、それとも気象条件を忠実に映し出してゆくのか、そこが生産者のスタイルを二分してゆくようにも感じる。」

大越基裕
「ほかの産地より注目が遅れたのは、途中参入組や若手の生産者が多いせいだろう。日本の中で間違いなく冷涼な産地ではあるが、酸が高いだけで、味が乗っておらず、凝縮感に欠けるものも多かった。経験的に、レストランでは使いやすいワインは多い。ケルナー、ツヴァイゲルト、ピノ・ノワール、ソーヴィニョンブラン、シャルドネの一部には将来性を期待している。貴彦さんの影響で生まれているピノ・ノワールは興味深い。土地が広いから、これから始めようという生産者にも会っている。私の出身地でもあり、ひんぱんに足を運んで、最もよく見ている。若手に頑張ってほしい」

ジェイミー・グッド
「スタイルの多様性が印象的だった。ケルナーの経験は少ないが、興味深く、ポテンシャルを感じた。NIKI Hills ヴィレッジは生き生きしていて、フルーティではないが、ストーニーなミネラル感があっていい。松原農園のミュラー・トゥルガウは、ほんのりと甘さのあるイージー・ドリンキング・スタイルで、よくできていた。ドメーヌ・モンのモン・ブラン・ド・ノワールはよい複雑性があった。ドメーヌ・アツシ・スズキは、酸化気味で、揮発酸は高めだが、スパイシーで飲みごたえがある。ドメーヌ・タカヒコのナナツモリ ピノ・ノワールはハードコアなナチュラルワイン。挑戦的だ。酸が高めで、アーシーで、ちょっと青さのある独特のスタイルだが、私は好きだ。インターナショナル・ワイン・チャレンジでシルバーメダルやブロンズメダルをとれるワインが結構あった」
IWCのコ・チェアマンを務め、世界をまたにかけるジャーナリストのジェイミー・グッド

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