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スーパータスカンの最前線を走るオルネッライアを東京で垂直試飲する機会に恵まれた。来日したオーナーのフレスコバルディ家のランベルト・フレスコバルディCEOと技術責任者のマルコ・バルシメッリの話を聴きながら、約半世紀にわたり進化してきたワインの骨格を解剖する。
オルネッライアの栽培面積は赤ワイン用ブドウが119ha、白ワインが15ha。オルネッライア(Ornellaia)、ベッラーリア(Bellaria)、フェルジーニ(Ferruggini)、ボッツェ(Bozze)の4区画に大別される。
テロワールによって比率は異なるが、石灰岩、粘土、砂、石、鉄の土壌が分布している。地中海気候のボルゲリは円形劇場のような地形。日照に恵まれているが、ティレニア海からそよ風が吹きつけ、昼夜の温度差が大きい。8月の昼間は33度まで上がるが、夜は20度以下に下がり、熟度と酸度が乗る。春が暖かく芽吹きは早い。霜害はなくハングタイムが長い。
オルネッライアの敷地を歩くと、森林に囲まれて、生物多様性の豊かさを実感する。オリーブの樹が20haも植えてあり、小動物にも出くわす。ボルドーのトップシャトーのようにアグロ・フォレストリーをする必要はない。とはいえ、畑を放置しているわけではない。80人のフルタイムの栽培スタッフを雇用し、22人のパートタイムスタッフもいる。何かあっても即時対応できる。
ボルドーは長い歴史の中でワイン産業と大学や研究機関が連携して発展してきた。1981年に設立されたオルネッライアは国際的な人脈を起用して、ボルゲリの可能性を開拓した。初期はナパで活躍していたロシア生まれのアンドレ・チェリチェフがコンサルタントを務めた。技術責任者はトマ・デュルー、アクセル・ハインツ、マルコと代替わりしてきた。
3人とも才能ある醸造家だ。トマはシャトー・パルメをボルドーのトップに引き上げ、アクセルはシャトー・ラスコンブのCEOになった。マルコはメドックの守護神エリック・ボワスノと一緒に「ラボラトワール・ボワスノ」で4軒の1級シャトーを含む150を超すボルドー・シャトーのコンサルタントを行ってきた。
ランベルトがアクセルの後任にマルコを採用したのは、ボワスノで12年間にわたり働いてきたカベルネ・ソーヴィニヨンの専門家だからだ。醸造長にはドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルド(ラフィット)傘下のロンダイで7年間にわたり中国で働いてきたデニス・コセンティーノを起用した。
マルコはジャックとエリックのボワスの親子と働き、ボルドーの最新のワイン造りと哲学を学んだ。「トレンドに流されず、バランスやエレガンス、ハーモニーを重視する。エリックからの最大の教訓はタンニンの品質の重要性だ」と明かす。
栽培では干ばつに対処するために植栽密度を減らし、カバークロップを植えて土壌の湿度を保っている。発酵では「R’Pulse」という装置で、果汁に空気を送り込み柔らかい抽出を行っている。ボルドーでは多くのトップシャトーが既に導入している手法だ。
平均樹齢は20年を超す。収穫したブドウを運ぶのは15kgの小型コンテナ。2016年から光学式選果台を導入し、除梗の前と後に職人が選別している。発酵はステンレスとコンクリートのタンク。新樽比率は70%。12か月間の樽熟成後にブレンドしてから樽に戻して、さらに6か月間の熟成。12か月間の瓶熟成後に出荷する。
熟成能力が明白な古いヴィンテージ
垂直試飲は最新の2022年から始めた。6月にワイナリーで試飲した時よりまとまりが出ていた。
「オルネッライア 2022」(Ornellaia 2022)はカベルネ・ソーヴィニヨン55%、メルロー25%、カベルネ・フラン10%、プティ・ヴェルド10%。アクセル・ハインツが醸造した最後のヴィンテージで、マルコとデニスが仕上げて瓶詰めした。ブラックチェリー、プラム、リコリス、凝縮していて、柔らかいタンニン、しなやかなテクスチャー。表現力が豊か。重厚だが、おおらかさがあり、開放的。余韻に黒胡椒。97点。
「オルネッライア 2012」(Ornellaia 2012)は涼しかったヴィンテージを映すエレガントな表現。ダークチェリー、ブルーベリー、甘いスパイス、ジューシーでスムーズなテクスチャー。酸味と果実とタンニンのバランスが優れている。力強さよりはきめ細かさと正確さが前面に出ている。しなやかで近づきやすい。94点。
「オルネッライア 2005」(Ornellaia 2005)はカベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー22%、カベルネ・フラン14%、プティ・ヴェルド4%。コンパクトにまとまった優良ヴィンテージ。ダークチェリー、海苔、砕いた岩、うまみ、タバコ、さわやかな酸、リッチな果実味の奥に海のワインのニュアンスを秘めている。程よい骨格をなめらかなタンニンが柔らかく包みこむ。飲み頃に近づいている。96点。
「オルネッライア 2001」(Ornellaia 2001)はカベルネ・ソーヴィニヨン65%、メルロー30%、カベルネ・フラン5%。プティ・ヴェルドがブレンドされていないのは2002年までは許可されていなかったため。杉、腐葉土、なめし革、スパイシーで、ヴェルベッティなテクスチャー、丸くて、調和している。タンニンは活力があるがほのかに青い。オルネッライアがエレガントに熟成することを示している。95点。
「オルネッライア マグナム 1997」(Ornellaia Magnum 1997)は芳醇でしなやか、ダークチェリーのコンポート、トリュフオイル、ドライハーブ、熟したタンニンはきれいに溶け込んでいる。うまみと塩気を帯びた余韻は長い。レ・セッレ・ヌオーヴェを初めてリリースした年で、厳しい選果が正確さにつながっている。95点。
生産量3000本とも言われる幻のオルネッライア・ビアンコにも5か月ぶりに再会した。
「オルネッライア オルネッライア・ビアンコ 2022」(Ornellaia Ornellaia Bianco 2022)は2013年にアクセルがデビューさせた白ワイン。ソーヴィニヨン・ブラン100%。ライム、黄桃桃、柑橘オイル、ミント、クリーミィで優しいテクスチャー、トースティなタッチとほんのりした塩気が調和している。絶妙のバランス。225Lバリック、320Lと600Lの樽、葉巻型の樽も使って発酵させ、バトナージュする。95点。
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