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気候変動を抑止、発酵中の二酸化炭素を回収して再利用

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 気候変動のネガティブな影響が強まる中で、原因となっている二酸化炭素排出量を削減するため、ワイン生産者が発酵中に生じる二酸化炭素を回収して再利用する取り組みを始めている。


 ワイン産業では、トラクターによる畑の耕作、ボトルの輸送など様々な局面で、温室効果ガスが発生する。発酵時には酵母が二酸化炭素を発生させ、換気をしないと酸素不足で事故が起きるほどだ。


 気候変動につながる二酸化炭素排出量を少しでも減らそうと、サステイナブルなワイン造りに力を入れるボルドーのシャトー・モンローズは2018年から、発酵で生じる二酸化炭素を100%リサイクルするプロジェクトに取り組んできた。ワイン・エステートでも先駆的だ。


 二酸化炭素を継続的に回収する自動化システムを採用し、回収した二酸化炭素を炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムと反応させ、重炭酸塩を生成する。2019年の収穫時には、15トンの重炭酸ナトリウムと重炭酸カリウムを生産した。重炭酸塩は食品、化粧品、薬など様々な分野で利用できる。


コストはかかるがテロワールを守る


 一方、ブルゴーニュのドメーヌ・デュジャックでは、2代目当主ジェレミーと結婚したUCデイヴィス校卒の醸造家ダイアナが、民間企業「Carbon Engineering」社の開発した大気を直接回収する(DAC=direct air capture)技術の導入を検討している。


 「SevenFifty Daily」に寄稿したエッセイによると、二酸化炭素を重炭酸塩に変換する設備の見積もりは10万ユーロ。1年で最も忙しい収獲と醸造の時期に、30トンの重炭酸塩を生成する手間もかかり、設備投資費用としては大きい。重炭酸塩を市場で再利用されるめどもたっておらず、この作業によって削減できる二酸化炭素は年間8トンと多くはない。


 それでも、二酸化炭素排出量削減に対する情熱を抱いている。彼女は産地の生産者が集団でパイプラインを敷設し、回収した二酸化炭素からバイオ燃料を生産するという計画のビジョンも語っている。


 ドメーヌはサステイナビリティを真剣に考慮している。2022年の収穫に向けて、環境に配慮した新しいワイナリーの建設を進めている。木材、再生コルク、ブルゴーニュ産のワラなど、再生可能な素材を使用。自動車用の充電ポイントを設置し、従業員の電気自動車に一部補助金を出すことにしたという。地下に2つのタンクを設置し、雨水を貯めて洗浄や畑に利用している。


 小規模なドメーヌでは、サステイナブルな取り組みのコストは大きいが、カリフォルニアでもワイン造りやコンサルティングをし、新旧世界で働いたダイアナはグローバルなパースペクティブを有している。


 「私たちのテロワールを取り巻く範囲は地球の大気圏そのものにまで広がっている。私たちの責任は自らの影響範囲を広げること」と語り、「何世代にもわたって生産を続けられるのは、人々が長い時間をかけてシームレスに協力し合ってきたおかげ」としている。

シャトー・モンローズで導入した二酸化炭素を回収する装置

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