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ワイン産業のサステナビリティ ボルドーから探る(3)

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従業員の労働環境を改善
インセンティブ高いカリフォルニア


 ワイン生産は商業行為だ。経営手法や労働環境にも関わっている。ナパヴァレーのオーガニックワインの先駆者フロッグス・リープは、コストの安い巡回労働者ではなく、年間を通じて栽培労働者を雇用している。これが、ヒスパニック住民も暮らすコミュニティの多様性と安定性を生んでいる。


 ラフィット・ロートシルトを所有するドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルド(ラフィット)のオーナー、サスキア・ド・ロスチャイルドはNYタイムズのアフリカ特派員も務めた。柔軟な思考の30代の女性だ。労働問題に関心が高く、毎年、数十人の難民を雇用している。


 アルゼンチンを代表するメンドーサのカテナ・サパタのラウラ・カテナは、若者たちに語学や醸造を学べる機会を与え、博士号を目指す人間も出ている。女性オーナーだからではない。新世代のオーナーたちが将来にも持続できるワイン造りを考えている。


 サスティナブルというと、取り組みも認証団体もカリフォルニアが先行している印象があるだろう。太陽が降り注ぐ下で、エアコンの効いた大型車を乗り回し、ファストフードを食べる。そうした一般的なイメージからかけ離れているが、生産者に会うとヨーロッパよりはるかに真剣で熱心だ。


 なぜだろうか?歴史が浅くて保守的な思考にとらわれていないせいか。環境保護運動のプレッシャーが強いせいか。


 いずれも答えの1つになりうるが、ヨーロッパとはワイン造りの根幹にある哲学が違うせいなのでないか。フランスの造り手にとって、ブドウ栽培やワイン造りは古くから続く生き方である。


 造り手たちは、テロワール表現やよりよい品質を求めて、オーガニックやサステイナブルに向かうように思える。 ワイン造りが科学と芸術のミックスとすれば、芸術の要素がより強いとも言える。

 

サステイナブル先進産地のボルドー
フランスで最も多いHVE認証


 今回フォーカスしたいのはボルドーだ。裕福な実業家のひしめく最先端の高級ワイン産地と思っている愛好家も多いだろうが、サステイナブルな取り組みではフランスで先頭を走っている。


 20年以上にわたり、ワイン生産者が環境問題に取り組んできた。ボルドーワイン委員会(CIVB)は、栽培から消費者に届くまでの全段階で環境にかける負荷の低減を目指している。農薬使用の削減、地元住民との共生、生物多様性の維持、カーボンフットプリント、水やエネルギーの削減、永続的ワイン生産への革新などを共通の目標としている。


 SME(環境管理システム)が2010年に立ち上がり、ボルドーのブドウ畑の18%がSMEを遵守した生産に取り組
み、システムの基盤となるISO14001規格を取得している。フランスの農水省による環境認証「HVE(Haute ValeurEnvironnemental)」(環境価値重視)は、ボルドーが国内で最も進んでいる。


 HVEはサルコジ大統領時代の2007年の環境グルネル会議で導入が決まり、2011年に認証制度が発足した。レベル1から3まで3段階に分けられている。生物多様性、植物防除、肥料、灌漑の4つの分野について規定を定めている。農業全般を対象にしているが、80%以上がブドウ栽培に適用されている。


 2020年1月の時点で、フランス国内でHVE認証を受けたワイン農家は4532軒に達し、ボルドーはこの時点で1047軒が認証を得ていた。CIVBの2021年の最新データでは1500軒以上に増えている。さらに、2014年にサステイナブルやビオディナミの認証を得た畑は全体の35%だったが、2016年には55%に増え、2019年には65%を超した。


 アジャンス・ビオによると、ABとユーロ・リーフのオーガニック認証を受けた畑は2019年末の時点で、年間で30%増加し、1万3900haが認証を受けるか転換中だ。


 デメターとビオディヴァンは2019年末の時点で、61シャトー(約1400ha)が認証を受けている。テラ・ヴィティス認証は同時点で、2018年より66%増えて、7800haに達した。
 

DBRラフィットを引っ張るサスキア・ド・ロスチャイルド(右)とジャン・ギョーム・プラッツCEO
シャトー・モンローズが導入した電動トラクター
テントウムシがいるラグランジュがビオディナミに取り組む畑

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