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ワイン産業のサステナビリティ ボルドーから探る(2)

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生産過程を広く見直すサスティナブル


 オーガニック、ビオディナミ、自然派など様々な歴史を歩んだ延長上に、サスティナブルという概念が登場した。文字通りの意味は「持続可能であること」。1980年代後半に、国連の報告書で「持続可能な開発」(サスティナブル・デベロップメント)という用語が提唱された。


 環境保全の文脈で使われていたが、あらゆる産業でサステイナビリティ(持続可能性)が重要な課題として浮上した。人類が豊かな暮らしや社会を継続する上で、欠かせない考え方や手段、あるいは目標となっている。


 ワイン造りの歴史を振り返れば、農民は自分の暮らす土地で、果実や野菜を栽培し、家畜を飼って、収穫されたブドウからワインを造ってきた、自家消費していた飲み物はやがて、資本主義のシステムに組み込まれ、世界に流通するコモディティとなった。


 産業として持続可能な発展を続けるために、抱える課題は栽培と醸造だけではない。農薬を使わず、環境との調和を図るだけではすまないのだ。幅広い視野から、ワイン生産のすべての過程を見つめ直す必要がある。


環境を保全し生物多様性を保持
気候変動を防ぐ多彩な対策


 ボルドーやブルゴーニュの銘醸畑を回ると、ブドウ以外の農作物をあまり目にしない。ブドウ栽培に適した畑は希少だから、集約的に栽培する。それは当然のことだが、ブドウだけが育つモノカルチャーでいいのか?


 ブドウ畑を取り巻く土地の生物多様性を保つのは重要だ。自然の生態系を保つためには、畑を囲む森林があるのは大切だ。風通しや気温の調整に役立つ。畑にカバー・クロップを植えて益虫を引き寄せたり、ハーブを植えれば、ポリカルチャーにつながり、生態系のバランスを保てる。


 害虫が発生するのはそもそも生態系のバランスが崩れているからだ。農薬で減らすのではなく、セクシャル・コンフュージョンで、害虫の繁殖を抑える方が環境に優しい。これはヒメハマキガやホソハマキガへの対策として、雌の蛾のフェロモンを出すカプセルを設置することで雄を撹乱する仕組み。


 アカグモを捕食するためにダニを畑に導入する。有害なげっ歯類を減らすためには、フクロウや鷹などの住み家となる木立を守り、巣箱を設置する。そうした取り組みをすれば、長い目で見て、生物的な多様性と持続的な安定性を保てる。


 気候変動は農業だけでなく、人類の将来を左右する深刻な問題となってきた。新世界の森林火災、春霜の害、栽培品種の変更など、ワイン造りにも大きなインパクトを及ぼしている。サスティナビリティを意識した対処が求められる。


 畑の手入れを例にとると、50年代に姿を消した耕作馬が復活している。馬は土を踏み固めず、土中の微生物の生息を活発にする。それだけでなく、トラクターのように温暖化を招く二酸化炭素を排出しないという利点がある。


 ワインの生産過程で、最も温室効果ガスを生むのは輸送過程だ。ボトルの重量を減らすのが、二酸化炭素を減らす最も有効な手段となる。シャンパーニュ委員会は2003年、世界のワイン産地で初めてカーボン・フットプリントの測定を始めた。軽量な瓶の導入などで、この20年間でボトル1本あたりの二酸化炭素排出量を20%以上削減したという。


 デイリーワインでは、消費地までバルクワインを輸送して瓶詰めするのも、サステイナブルな試みだ。ガラス容器を代替容器に変える動きもある。


 ジョニー・ウォーカーのブランドを所有する英国の大手飲料企業ディアジオは、パッケージ企業の「Pulpex」とヴェンチャーを組んで紙製ボトルを開発した。軽量で、再利用が可能。二酸化炭素排出量の削減にも寄与する。ワインでも94%再利用できるボール紙製ワイン容器が開発され、イタリアのワイン生産者が採用した。


 こうした試みがヨーロッパで盛んなのは、消費者がサスティナビリティに敏感だからだ。

ボルドーはブドウ畑がひしめく典型的なモノカルチャー 
シャトー・ラトゥールを耕作する馬
重い瓶が二酸化炭素排出量を増やすシャンパーニュ

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