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プリューレ・ロックといえども自然には勝てない。2004年はチャレンジングだったようだ。
定温倉庫から最近、取り出した中にプリューレ・ロックが1本だけ含まれていた。ニュイ・サン・ジョルジュのプルミエクリュを詰めたニュイ”1”(アン)。クロ・デ・コルヴェの畑から造られるワインの中では最も低いレンジに属する。
2004年は難しい年だ。冷涼で、雨がちだったため、テントウムシが大量に発生した。ビオディナミの生産者は殺虫剤をまかないから、虫がブドウの房の内側にもぐりこむ。虫の体液など(リフレックス・ブラッド)がワインに混じったため、濁りのある味わいになってしまったとされる。全房発酵ならなおさら問題となる。レディ・ビートル・テイントと呼ばれ、世界的に知られている。
現在はコルギンの支配人を務めるポール・ロバーツ。ボンドの支配人時代に、ナパヴァレーで会った時、2004年のロマネ・コンティを飲んだ話になった。
「レディ・テイントは大丈夫だったか?」
開口一番聞いてきた。
「問題なかったよ」
「さすがロマネ・コンティだな」
マスター・ソムリエの資格を持ち、3つ星のフレンチ・ランドリーでワイン・ディレクターも努めた男だけに鋭い。
2004年はドメーヌ・ルロワがすべてのグランクリュとプルミエクリュを格落ちさせたヴィンテージ。やはりレディ・テイントの特色があり、いつものルロワの透明感がない。ロックはどうだったのか。それがこのボトルを開けた理由だ。
残念ながら、ルロワと同じ状況にあった。オレンジの皮、スパイシーな風味。松茸の吸い物を思わせるロック節は健在だが、ピュアな果実味や酸の伸びに欠ける。にごった味がして、やや苦味が残る。畑の格が違うが、ルロワの複雑性もない。ロックはさんざん飲んだ。ニュイのドメーヌに訪れて、夜中の2時まで10種以上を飲んだこともある。こういう味わいは記憶にない。
この年、ロックはヴォーヌ・ロマネのクロ・ゴワイヨット、レ・オート・メズィエール、レ・スショ、レ・クルをブレンドして格落ちさせVVとして発売した。ルロワと同じく、問題を感じたのだろう。そのロックも共同経営者として参画するロマネ・コンティは、やや弱いが、香り高さも、果実のピュアさもこの世のものとは思えなかった。
ワインは自然の産物。造り手も万能ではない。
(2013年12月 自宅で)
ドメーヌ・プリューレ・ロック ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエクリュニュイ”1”
購入:楽天市場 5000円
死ぬまでにもう一度飲みたい度:85点
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