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アジアの大砲、MWの資質も備えるヤン・ルーMS

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 マスター・ソムリエもトップクラスになると、マスター・オブ・ワインと同様のコンサルタント的な素質を持ち合わせる。来日した中華圏初のマスター・ソムリエのヤン・ルー(Yang Lu)MSと話していて、改めて認識した。米国では、コルギンのポール・ロバーツのようにワイナリー経営者もいるから当たり前なのだが。

 ルーMSは2017年8月にMSに合格する前に、WSETのディプロマも取得している。WSETに必要なのは「なぜか?」を突き詰める姿勢だ。そこにMSに必要な百科事典的な知識が加わっている。

 「ソムリエで有名になるには2つの方法しかない。コンクールで優勝するか、資格を取得するか」という彼は、2014年の中国の最優秀ソムリエというタイトルとMSの両方を手にしている。戦略的だ。「ソムリエがブルゴーニュの有名ドメーヌの違いを知っているのは当たり前で、それだけでは足りない。そのワインがなぜ優れているのかをお客に理解させる能力が必要」と。

 大橋健一MWをまじえて、23日夜に東京・赤坂の日本料理店「乃木坂 しん」で会食をした。店主の石田伸二・料理長のナチュラルな会席料理と飛田泰秀ソムリエの精緻なペアリングを楽しむ合間に、私と大橋MWが持ち込ませていただいたのはギリシャの1995年のクシノマヴロとカリフォルニア・ソノマコーストの2008年のピノ・ノワール。

 クシノマヴロは、大橋MWがMWプログラムを受講中に、当時はギリシャで唯一のコンスタンティノス・ラザラキスMWからもらったという記念碑的な1本。アーシーで、黒トリュフ、ドライハーブ、ややダスティなタンニンだが、うまみあふれる味わいで、ジューシーな果実。MWでも熟成したネッビオーロと間違えるであろう味わいだった。MSがいなければ、わざわざセラーから持ち出してこなかったであろう貴重な体験だった。

 私のボトルはリトライのピヴォット・ヴィンヤードのピノ・ノワール 2008。これを開けた理由をMWもMSもすぐ気づいた……2008年はソノマが山火事の影響を受けた年。テッド・レモンはアンダーソン・ヴァレーの単一畑を格落ちさせた「レ・ラルム」(Les Larmes」というピノ・ノワールを生産した。レ・ラルムとは涙の意味。ソノマ・コーストのハーシュ・ヴィンヤードも格下げした。2008の発売当時は、リトライのスモーク・テイントについて米国のMSらが議論していた。過去最大の山火事が問題になっている現在、10年間の熟成の変化を確認しようという狙いだった。

 「リトライ ピノ・ノワール ピヴォット・ヴィンヤード ソノマコースト 2008」(Littorai Pinot Noir The Pivot Vineyard Sonoma Coast 2008)はフローラルで、スミレ、レッドカラント、オレンジの皮、森の下草、若々しく、スムーズなテクスチャー。やや厳格で、いつもの生き生きした果実の躍動感に欠けるところがあるが、うまみは乗っていて、きれいなフィニッシュ。テッドは2008年はすべてのピノ・ノワールを除梗した。スモーク・テイントの焦げたような香りは感じられない。3人の共通した意見だった。90点。

 ルーMSもリトライのファンで、熟成したボトルは初めてと喜んでいた。香港にベースを置くシャングリ・ラ・ホテル&リゾーツのコーポレート・ディレクター・オブ・ワインの彼はMWも視野に入れているようだ。MSの信条から、思い出のボトル、スモーク・テイントまで充実した一夜だった。
アジアを代表するMWとMS
1995年のクシノマヴロ

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