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南北両半球でピノ・ノワールを生産、オーガニックのドメーヌ・トムソン

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 フランスのブルゴーニュとニュージーランドのセントラル・オタゴ。北半球と南半球を代表するピノ・ノワールの産地でワインを造る唯一の造り手がいる。ドメーヌ・トムソンである。香港に拠点を置くオーナーのデイヴィッド&PM・ホール・ジョーンズ夫妻が、2つの半球を行き来しながら、ワイン生産を指揮する。オーガニック認証を得たセントラル・オタゴのワイナリーを、4月の収穫祭に訪れた。
 ブドウ畑はクイーンズタウンの空港から約1時間のセントラル・オタゴ地区のサブリージョン、ローバーンにある。2000年に購入し、2011年にオーガニック、2013年にバイオダイナミックスに転換。2016ヴィンテージで、「ビオグロ」からオーガニック認証を得た。ダンスタン湖を臨む斜面に広がる畑に3頭の牛を飼育し、ハーブやカバークロップを植えて、プレパラシオン(調剤)も自社で造っている。
 ニュージーランドでオーガニックかバイオダイナミックスの認証を受ける畑は6%にとどまる。マールボロに続く国内で2番目の生産量を誇るピノ・ノワール産地のセントラル・オタゴは、フェルトン・ロード、バーン・コテージなどバイオダイナミックスの生産者が多く、全体の16%を超す。セントラル・オタゴは10-4月の生育期の降雨量が約300ミリと少なく、有機農法に適している。PMは「バイオダイナミックに転換したことで、畑の生命力が豊かになった。ミツバチが飛び、鳥が飛んでくる」と語る。
 ドメーヌがここから造るワインは、エクスプローラーとサーヴェイヤー・トムソンの2種。デヴィッドの高祖父がニュージーランド初の測量技師で、サーヴェイヤー・トムソンと呼ばれたことにちなんでいる。もう一つが、ブルゴーニュで造るジュブレ・シャンベルタン・レ・ゼヴォセル。夫妻が2000年、ジュブレ・シャンベルタンのクロ・サンジャックを臨む家を避暑用に借りた。やがて地元に溶け込んで、2013年に村名格のレ・ゼヴォセル0.4ヘクタールを購入できた。
 収穫祭でバーベキューを食べながら試飲した「ドメーヌ・トムソン サーヴェイヤー・トムソン ピノ・ノワール 2013」(Domaine-Thomson Surveyor Thomson 2013)は、アーシーで、レッドチェリー、バラの花芯、柔らかく、うまみあふれる味わい。シルキーなタンニンが心地よく、背骨はしっかりとしている。かすかにタンニンが乾くが、精妙なフィニッシュ。アルコール度は13.5%。90点。
 ローバーンの、15万年前の地層のサウス・ブロックと45万年前の地層のムーン・ブロックのブドウをブレンドしている。クローンは777と115が主体。土壌は氷河期に形成された沖積土とその風化黄土(レス)。全房発酵の比率は33%で、年々少しずつ増やしている。ポンプピングオーバーの回数も減らし、抽出は優しくなっている。低温浸漬が7日間、発酵に7日間、醸しに7日間。ワインメーカーのディーン・ショウは、オーガニックへの転換と同時に、よりエレガントな方向に向かっている。生産量は1500ケース。
 「ドメーヌ・トムソン ジュブレ・シャンベルタン レ・ゼヴォセル 2013」(Domaine-Thomson Gevrey-Chambertin Les Evocelles 2013)も試飲した。オレンジの皮、プラム、ドライハーブ、シルキー、フレッシュな味わいだが、スパイシーで、ジュブレ・シャンベルタンらしい硬さとアーシーなタッチがある。フルーティな明るさのあるサーヴェイヤー・トムソンと比べるとよりミネラル主体のスタイル。時間がかかる。南北半球で造るワインを同時に試飲できるのはこのドメーヌだけだ。88点。
 サーヴェイヤー・トムソンは早くから楽しめるのが魅力だが、熟成力もある。日本に持ち帰り、「ドメーヌ・トムソン サーヴェイヤー・トムソン ピノ・ノワール 2009」(Domaine-Thomson Surveyor Thomson 2009)を試飲してわかった。スミレ、ブラックラズベリー、ドライトマト、紅茶の葉、ベーコンを焦がしたようなスモーキーなアロマが強めに出ている。抽出がやや強めに感じたが、1週間ほど飲みつなぐと、タンニンと酸のバランスがとれてきた。焦げたニュアンスが、なめし革、森の下草などのセクシーな香りに発展し、うまみあふれるバランスのとれた味わいにまとまった。オーガニックに転換してからの2013の方がナチュラルだが、畑のポテンシャルはあるということだ。逆に言えば、待つことで真価を発揮する。91点。
 生産量を絞り込み、北半球と南半球で、産地のテロワールを表現したワインを生産している。オーナーの好みもあっていずれも抑制感のあるエレガントスタイル。セントラル・オタゴは、プロフェッツ・ロックとコラボレーションしているコント・ド・ヴォギュエのフランソワ・ミエだけでなく、ドメーヌ・デ・ランブレイのティエリー・ブルーアンらブルゴーニュの造り手も、ポテンシャルに注目している。ドメーヌ・トムソンの発展が注目される。
 輸入元はBB&R。
3頭の牛を飼育
デヴィッド&PM・ホール・ジョーンズ
支配人のクラウディオ・ヘイ
プレパラシオンも自家製
網で鳥を防ぐ

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