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自然派ワインの生産者から生まれたペットナット(Pet-Nat)の人気が広がっている。ペットナットは「ペティアン・ナチュレル」(Petillant Naturel)の略称。ラングドック・リムーで16世紀に考案されたメトード・アンセストラル(メトード・ルーラル)で造られる。ガス圧は低く、フレッシュで、ほのかに甘いものが多い。王冠で栓をしているものも多く、カジュアルに楽しめる。
メトード・アンセストラルは、シャンパーニュの瓶内二次発酵方式とは異なる。シャンパーニュは一時発酵で造ったワインを瓶内に詰めて、酵母と糖分(リキュール・ド・ティラージュ)を加えて、二度目の発酵をさせて泡を閉じ込める。これに対して、ペット・ナットはブドウの糖分がすべて発酵する前に果汁を瓶に詰め、瓶内で発酵させる。王冠やコルクで栓することによって、ガスが閉じ込められる。栓をする前の果汁の糖度を計算しておかないと、瓶が破裂したり、気圧が不足したりする。瓶内で発酵した後に残糖をどこまで残すかも造り手の考え方次第で、辛口もあれば、ほの甘いワインや、オリを取り除かず曇っているワインもある。
この古典的な製法によるワインがいま、ファッショナブルな存在になっている。流行が始まったのは、1990年代のロワールという説が有力だ。ティエリー・ピュズラや今は亡きクリスチャン・ショサールが、有機栽培のブドウを使って、なるべく人の手を入れない醸造の実験をする中で、偶然生まれたとされている。米国の自然派ワイン輸入業者のジュールズ・ドレスナーによると、「ペット・ナット」という言葉を最初に使ったのはショサールだという。
シャンパーニュがロレックスなら、ペット・ナットはスウォッチ
2007年、モンルイ・シュール・ロワールに「ペティアン・オリジネール」というAOCが生まれ、人気は一般化した。その規定では、発酵は一度だけで、収穫されたブドウだけで造ることになっている。手摘み、全房圧搾、9か月間の瓶内熟成も義務付けられ、酵母や糖分の添加は禁止されている。今や、ジュラやブルゴーニュにも広がり、カリフォルニアやオーストラリアなど新世界にも拡大している。
シャンパーニュがロレックスだとすれば、ペット・ナットはスウォッチ。そんな文句をどこかで見た。ペット・ナットの魅力は、アルコール度の低さ、ナチュラルな味わい、軽やかで心地よい泡の刺激、カジュアルなスタイル。自然派ワインのファンを惹きつける要素に満ちている。スパークリングワインは、シャンパーニュばかりではない。暑い夏。ペット・ナットをうまく取り入れれば、ワインライフが広がるだろう。
モンルイには「ペティアン・オリジネール」AOCが誕生
今回はロワールのペット・ナットにフォーカスした。品種はシュナン・ブラン、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネから、ガメイ、カベルネ・ソーヴィニヨンまで様々。残糖量、曇り具合も多様だが、いずれも、有機栽培したブドウから、人為的な介入をおさえた自然な手法で造られている。大半がヴァン・ド・フランスだが、「ルドヴィック・シャンソン ペティアン・ナチュレル レ・ピオン」と「ドメーヌ・フランツ・ソーモン ペティアン レ・ガル!レ・フィユ!15」はAOCモンルイ・シュール・ロワール ペティアン・オリジネール。
「傑出」に選ばれたのは「レ・カプリアード メトード・アンセストラル ペパン・ラ・ビュル 2015」のみ。安定感のあるスタイルのワインが得点が高かった。全ワインのコメントはこちhttps://www.winereport.jp/archive/980/
脚の短いグラスやないもので楽しみたい
山本昭彦
シャンパーニュは偶然から生まれ、瓶内二次発酵方式を洗練させるうちに、洗練された高品質を手に入れた。ある意味では人工的だが、ペット・ナットはよりナチュラルに造られている。フォーマルな場を飾るシャンパーニュと違って、普段着感覚で楽しめる。背筋を伸ばして飲む必要がない。浜辺でダラダラ飲んだり、ビール代わりにのどをうるおすのに向いている。コップ酒感覚で楽しめる。自然派の生産者ばかりだったので、揮発酸や硫化物が気になるボトルもあったが、それすら楽しんでしまうくらいの気軽さで楽しみたい。スパークリングには様々な可能性があること知ってほしい。
大橋健一
ペット・ナットはティエリー・ピュズラらロワールの造り手に触発されて広がった。泡物を気軽に楽しもうという意味合いも強いだろうし、すいすい飲める。シャンパーニュのメソッドは二次発酵の人間の英知による技術的側面な面が否めない一方で、ペット・ナットはよりナチュラルな造りの印象が持たれる。しかし産地の地元で数か月以内に消費されるならいいが、名前やラベルもまだまだひとりよがりなところがある。瓶によるムラも大きいことは否めなく、点数も今日と明日では変わる可能性もある。バイヤーやソムリエはその点を理解しておく必要がある。カプリアードは経験的によくできているが、残念ながら値段がやや高い。
大越基裕
コンサルタントしている「ラ・ボンヌターブル」では、国産のペット・ナットを使っている。シャンパーニュよりゆるく、親しみやすい。甘酸っぱいので、食前酒に使いやすい。サラダ、特に酸味ののったドレシングと合わせると、自然の美味しさが広がる。脚の高いグラスは合わず、脚の短いワイングラスや脚のない物がいい。残糖があっても、冷やし目で供する事でフレッシュ感と旨味を残糖とバランス良く楽しめる。味のばらつきや硫化物が気になる場合もあるが、カジュアルなシーンでは、シャンパーニュがスパークリングワインの中で君臨する存在では必ずしもない。
メトード・アンセストラルは、シャンパーニュの瓶内二次発酵方式とは異なる。シャンパーニュは一時発酵で造ったワインを瓶内に詰めて、酵母と糖分(リキュール・ド・ティラージュ)を加えて、二度目の発酵をさせて泡を閉じ込める。これに対して、ペット・ナットはブドウの糖分がすべて発酵する前に果汁を瓶に詰め、瓶内で発酵させる。王冠やコルクで栓することによって、ガスが閉じ込められる。栓をする前の果汁の糖度を計算しておかないと、瓶が破裂したり、気圧が不足したりする。瓶内で発酵した後に残糖をどこまで残すかも造り手の考え方次第で、辛口もあれば、ほの甘いワインや、オリを取り除かず曇っているワインもある。
この古典的な製法によるワインがいま、ファッショナブルな存在になっている。流行が始まったのは、1990年代のロワールという説が有力だ。ティエリー・ピュズラや今は亡きクリスチャン・ショサールが、有機栽培のブドウを使って、なるべく人の手を入れない醸造の実験をする中で、偶然生まれたとされている。米国の自然派ワイン輸入業者のジュールズ・ドレスナーによると、「ペット・ナット」という言葉を最初に使ったのはショサールだという。
シャンパーニュがロレックスなら、ペット・ナットはスウォッチ
2007年、モンルイ・シュール・ロワールに「ペティアン・オリジネール」というAOCが生まれ、人気は一般化した。その規定では、発酵は一度だけで、収穫されたブドウだけで造ることになっている。手摘み、全房圧搾、9か月間の瓶内熟成も義務付けられ、酵母や糖分の添加は禁止されている。今や、ジュラやブルゴーニュにも広がり、カリフォルニアやオーストラリアなど新世界にも拡大している。
シャンパーニュがロレックスだとすれば、ペット・ナットはスウォッチ。そんな文句をどこかで見た。ペット・ナットの魅力は、アルコール度の低さ、ナチュラルな味わい、軽やかで心地よい泡の刺激、カジュアルなスタイル。自然派ワインのファンを惹きつける要素に満ちている。スパークリングワインは、シャンパーニュばかりではない。暑い夏。ペット・ナットをうまく取り入れれば、ワインライフが広がるだろう。
モンルイには「ペティアン・オリジネール」AOCが誕生
今回はロワールのペット・ナットにフォーカスした。品種はシュナン・ブラン、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネから、ガメイ、カベルネ・ソーヴィニヨンまで様々。残糖量、曇り具合も多様だが、いずれも、有機栽培したブドウから、人為的な介入をおさえた自然な手法で造られている。大半がヴァン・ド・フランスだが、「ルドヴィック・シャンソン ペティアン・ナチュレル レ・ピオン」と「ドメーヌ・フランツ・ソーモン ペティアン レ・ガル!レ・フィユ!15」はAOCモンルイ・シュール・ロワール ペティアン・オリジネール。
「傑出」に選ばれたのは「レ・カプリアード メトード・アンセストラル ペパン・ラ・ビュル 2015」のみ。安定感のあるスタイルのワインが得点が高かった。全ワインのコメントはこちhttps://www.winereport.jp/archive/980/
脚の短いグラスやないもので楽しみたい
山本昭彦
シャンパーニュは偶然から生まれ、瓶内二次発酵方式を洗練させるうちに、洗練された高品質を手に入れた。ある意味では人工的だが、ペット・ナットはよりナチュラルに造られている。フォーマルな場を飾るシャンパーニュと違って、普段着感覚で楽しめる。背筋を伸ばして飲む必要がない。浜辺でダラダラ飲んだり、ビール代わりにのどをうるおすのに向いている。コップ酒感覚で楽しめる。自然派の生産者ばかりだったので、揮発酸や硫化物が気になるボトルもあったが、それすら楽しんでしまうくらいの気軽さで楽しみたい。スパークリングには様々な可能性があること知ってほしい。
大橋健一
ペット・ナットはティエリー・ピュズラらロワールの造り手に触発されて広がった。泡物を気軽に楽しもうという意味合いも強いだろうし、すいすい飲める。シャンパーニュのメソッドは二次発酵の人間の英知による技術的側面な面が否めない一方で、ペット・ナットはよりナチュラルな造りの印象が持たれる。しかし産地の地元で数か月以内に消費されるならいいが、名前やラベルもまだまだひとりよがりなところがある。瓶によるムラも大きいことは否めなく、点数も今日と明日では変わる可能性もある。バイヤーやソムリエはその点を理解しておく必要がある。カプリアードは経験的によくできているが、残念ながら値段がやや高い。
大越基裕
コンサルタントしている「ラ・ボンヌターブル」では、国産のペット・ナットを使っている。シャンパーニュよりゆるく、親しみやすい。甘酸っぱいので、食前酒に使いやすい。サラダ、特に酸味ののったドレシングと合わせると、自然の美味しさが広がる。脚の高いグラスは合わず、脚の短いワイングラスや脚のない物がいい。残糖があっても、冷やし目で供する事でフレッシュ感と旨味を残糖とバランス良く楽しめる。味のばらつきや硫化物が気になる場合もあるが、カジュアルなシーンでは、シャンパーニュがスパークリングワインの中で君臨する存在では必ずしもない。
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