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プリオラート最前線、テロワール・アル・リミットの挑戦

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 スペイン・カタロニア州のプリオラートからテロワール・アル・リミットのワインメーカー、ドミニク・フーバーが来日し、既成のイメージとは異なる最前線を行くワインを披露した。
 プリオラートはリオハと並んでDOCa(特選原産地呼称)に認定される産地。30キロ離れた地中海の影響と大陸性気候が入り混じる。昨年公開されたドキュメンタリー映画「プリオラート」で描かれたように、アルバロ・パラシオス、ルネ・バルビエら1980年代に登場した4人組が凝縮したワインを世に出し、評論家ロバート・パーカーが高得点を与えて、世界に広がった。
 テロワール・アル・リミットのワインは、その後の四半世紀にわたる変化を反映している。過熟を避け、全房発酵を導入、穏やかに抽出し、中古の大樽で熟成している。ワイナリーの初ヴィンテージは2003年。南アフリカのカリスマ、イーベン・サディとフーバーの2人で始めたが、5年前にサディが去った。その後は、ドイツ人のフーバーが主導している。「醸造に頼るのではなく、畑に語らせるのが私の哲学」と。
 プリオラートの土壌の主体となるリコレリャ(粘板岩)をベースに、5区画のガルナッチャとカリニェナををブレンドする村AOCの「ビ・デ・ビラ」(Vi de Vila)、単一区画のカリニェナ3種、標高の高い粘土・石膏土壌のガルナッチャ単一区画の計5アイテムの赤を造る。赤の強いこの産地で、ペドロ・ヒメネス、ガルナッチャ・ブランカ、モスカテルなどで白も生産している。5種のワインを試飲した。
 「テロワール・アル・リミット チャレッロ 2013」(Terroir Al Limit Xarel.Lo  2013)はマンゴ、黄桃の皮、アカシアのハチミツ、エキゾチックな香りがある反面で、キレのよい酸が乗っていて、チョーキーなフィニッシュ。酸化的に造られているが、正確さは保たれている。90点。
 「テロワール・アル・リミット マスカット 2013」(Terroir Al Limit Muscat 2013)はモスカテル・デ・アレハンドリア100%。粘板岩質の標高400メートルの平地と斜面から。酸化的なスタイルで、濃い目の黄色、石灰的なミネラル感、スモーキーで、テクスチャーは柔らかい。フラワリーで、黄桃、ピンクペッパー、ほろ苦みがあり、塩っぽいフィニッシュ。92点。
 「テロワール・アル・リミット ペドラ・デ・ギッシュ 2013」(Terroir Al Limit Pedra de Guix 2013)はガルナッチャ・ブランカ、マカペオ、ペドロ・ヒメネスのブレンドで、それぞれの土壌は粘板岩、沖積土壌、粘土質。洋ナシ、黄桃、やや厳格で、酸化的なハンドリングがされている。石灰的なニュアンスが、クリーミィなテクスチャーに溶け込んでいて、フィニッシュはリニアで、塩っぽい。酸化のタッチは酸化熟成したペドロヒメネスからくるという。1万2000円。93点。
 ポピュラーではない品種を使った白ワイン造りには理由がある。「カバの造られているペデネスのブドウを、プリオラートの粘板岩土壌に植えるのは興味深い。ペドロヒメネスは100年以上前にアンダルシアから持ち込まれたのではないか。スペインの将来の一つは酸化的なワイン造りにある。暑い地中海側は黒ブドウより白ブドウの方が耐性がある。バレンシアやカタロニアでは、だから酒精強化ワインが造られてきた」
 赤ワインは2種。「テロワール・アル・リミット トロッジャ ビ・デ・ビラ 2011」(Terroir Al Limit Torroja Vi de Vila 2011)は粘板岩土壌のカリニェナと粘土・粘板岩のガルナッチャを各50%。淡いルビー、アーシーで、ザクロ、ブラッドオレンジ、なめし革、極少量のブレットが複雑性を生んでいる。カルボニック・マセラシオンのニュアンスが、ジューシーさとフレッシュ感を与えている。明るさと、粒子が明瞭に見えるような正確さがある。ガルナッチャの果実と、カリニェナのアーシー感がうまくブレンドされている。全房発酵は50%。ストッキンジャーの古樽で24か月間の熟成。7200円。92点。
 「テロワール・アル・リミット 随機 2010」(Terroir Al Limit T随機 2010)はプライベート・キュヴェのバックヴィンテージ。ガルナッチャ100%。標高700-800メートルのモンサン山脈の畑から。こちらもマセラシオン・カルボニックで。黒みを帯びていて、スミレ、中華系スパイス、ダークベリー、オレンジの皮、なめらかなテクスチャーで、タンニンはシルキー、輪郭のはっきりした酸に支えられ、チョコレートのタッチとヨード香も。リニアで焦点のあったフィニッシュ。きれいなスタイル。94点。
 「プリオラートの4人組は南部の産地で遅摘みによってワインを造った。トロッジャは北寄りで標高が高い。ガルナッチャが適している。プリオラートも多彩なミクロクリマと土壌がある。私のメンターはイーベン・サディと(イタリアの)エリザベッタ・フォラドーリ」というフーバーは、歴史を振り返り、テロワールを考え、自然派的な手法も取り入れている。抑制されたピュアなワインで、新たな領域を切り開いている。
 輸入元はワイナリー和泉屋。

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