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ジョージアはクヴェヴリのワインばかりではない。チャチャと呼ばれる蒸留酒や、赤の主要品種サペラヴィでセミスイートワインも造られている。しかし、ペット・ナット(ペティアン・ナチュレル)に出会うとは予想していなかった。首都トビリシから約5キロ。1時間かけて、曲がりくねった道を登り、舗装のない森の中に入ったキケティの村に、その「ゴッツァ・ファミリー・ワイナリー」(Gotsa Family Winery)はあった。
当主のベッカ・ゴッツァゼ(Beka Gotsadze)の祖先は19世紀からワイン造りをしていた。ベッカは建築家の仕事に飽き足らず、標高1300メートルの山中に自力でワイナリーを築いた。クヴェヴリのふたは止め具のついた金属製で、クヴェヴリの周囲に冷却装置を巡らせて温度管理もしている。といっても、現代技術に頼った造り手ではなく、ビオディナミに挑戦している。デメターの認証取得を目指している。
赤のサペラヴィ、白のムツヴァネのようなカヘティ地方の代表的な品種だけでなく、西部イメレティ地方の白ブドウであるツィツカ(Tsitska)、ツォリコウリ(Tsolikouri)も手掛けている。ツィツカはスキンコンタクトなし。ツォリコウリは果梗を入れずに2週間ほどスキンコンタクト。ムツヴァネはスキンと果梗を50%混ぜて9か月間マセラシオンする。サペラヴィは、スキンコンタクトしないロゼと、7日ほどマセラシオンして、18か月間のクヴェヴリと6か月間のニュートラルオークで熟成した赤の2種類がある。白も赤も、品種に合わせて細かく醸造を変えている。
どれも興味深かったが、ジョージアの旅の最終日に訪ねた涼しい山中で開けたペット・ナットに心引かれた。昼でも暖炉に火をくべるほど涼しい。標高550メートルに広がる畑の涼しさも容易に想像される。
「ツィツカ ペット・ナット ナチュラル・スパークリングワイン 2015」(Tsitska Pet’ Nat’ Natural Sparkling Wine 2015)はクヴェヴリ内で一次発酵するワインの糖度が24度まで下がった時に、酵母と糖分ごとボトルに移す。王冠の下で、1年間、瓶内発酵させる。ア・ラ・ヴォレでデゴルジュマンして栓をする。カリン、砂糖漬けのレモンの皮、小麦粉、ナッツ、酵母の香りがあり、うまみとほろさが複雑さを生んでいる。簡素だが、体に染み込む心地よさ。ほのかにシェリー香。残糖はリットル当たり7、8グラム。86点。
ロゼのペットナットが2種類。「ツォリコウリ ペット・ナット ナチュラル・スパークリングワイン 2015」(Tsolikouri Pet’ Nat’ Natural Sparkling Wine 2015)はオレンジを帯びた赤銅色、赤パプリカ、ブラッドオレンジ、軽めのタンニンと細い果実味が調和し、こじんまりとした丸いバランスが心地よい。泡立ちは柔らかく、ジューシー、ピュアなイチゴジュースのようにナチュラル。87点。
「サペラヴィ ペット・ナット ナチュラル・スパークリングワイン 2015」(Saperavi Pet’ Nat’ Natural Sparkling Wine 2015)は最もチャーミングだった。アントシアニンの強いブドウらしく、色調は赤みが強い。まろやかで優しいテクスチャー。小さな野イチゴ、甘草、レッドペパー、かすかなほろ苦さが甘酸っぱさと補い合っている。のびやかな酸があり、塩みを感じる。スパイシーなタッチを帯びたフィニッシュ。ヴォリューム感があり、どこか郷愁をそそられる素朴さ。様々なスタイルに仕上げられるサペラヴィの、エレガンスを引き出している。88点。
世界で人気のペット・ナット。アンセストラル方式だから、シャンパーニュのように洗練されていないが、にごり酒に通じるうまみと柔らかい泡が心地よい。ロワールのティエリー・ピュズラやクリスチャン・ショサールらが流行の震源地と言われる。今では、オーストラリアからカリフォルニア、ニューヨークでも、造られている。
クヴェヴリによるワイン造りの根底には、現在の自然派と同じ、人為的な介入を避けるという思想がある。フランスやイタリアの自然派生産者が、クヴェヴリに自分たちのワイン造りの源流を発見したのは、当然だった。ティエリーらはジョージアをよく訪れるそうだ。ベッカもロンドンの自然派ワインの祭典「ロウ」や「リアルワイン」などを訪れている。クヴェヴリもペット・ナットもルーツをさかのぼる動き。自然なワイン造りを突き詰めると、国にかかわらず同じところにたどりつく。
当主のベッカ・ゴッツァゼ(Beka Gotsadze)の祖先は19世紀からワイン造りをしていた。ベッカは建築家の仕事に飽き足らず、標高1300メートルの山中に自力でワイナリーを築いた。クヴェヴリのふたは止め具のついた金属製で、クヴェヴリの周囲に冷却装置を巡らせて温度管理もしている。といっても、現代技術に頼った造り手ではなく、ビオディナミに挑戦している。デメターの認証取得を目指している。
赤のサペラヴィ、白のムツヴァネのようなカヘティ地方の代表的な品種だけでなく、西部イメレティ地方の白ブドウであるツィツカ(Tsitska)、ツォリコウリ(Tsolikouri)も手掛けている。ツィツカはスキンコンタクトなし。ツォリコウリは果梗を入れずに2週間ほどスキンコンタクト。ムツヴァネはスキンと果梗を50%混ぜて9か月間マセラシオンする。サペラヴィは、スキンコンタクトしないロゼと、7日ほどマセラシオンして、18か月間のクヴェヴリと6か月間のニュートラルオークで熟成した赤の2種類がある。白も赤も、品種に合わせて細かく醸造を変えている。
どれも興味深かったが、ジョージアの旅の最終日に訪ねた涼しい山中で開けたペット・ナットに心引かれた。昼でも暖炉に火をくべるほど涼しい。標高550メートルに広がる畑の涼しさも容易に想像される。
「ツィツカ ペット・ナット ナチュラル・スパークリングワイン 2015」(Tsitska Pet’ Nat’ Natural Sparkling Wine 2015)はクヴェヴリ内で一次発酵するワインの糖度が24度まで下がった時に、酵母と糖分ごとボトルに移す。王冠の下で、1年間、瓶内発酵させる。ア・ラ・ヴォレでデゴルジュマンして栓をする。カリン、砂糖漬けのレモンの皮、小麦粉、ナッツ、酵母の香りがあり、うまみとほろさが複雑さを生んでいる。簡素だが、体に染み込む心地よさ。ほのかにシェリー香。残糖はリットル当たり7、8グラム。86点。
ロゼのペットナットが2種類。「ツォリコウリ ペット・ナット ナチュラル・スパークリングワイン 2015」(Tsolikouri Pet’ Nat’ Natural Sparkling Wine 2015)はオレンジを帯びた赤銅色、赤パプリカ、ブラッドオレンジ、軽めのタンニンと細い果実味が調和し、こじんまりとした丸いバランスが心地よい。泡立ちは柔らかく、ジューシー、ピュアなイチゴジュースのようにナチュラル。87点。
「サペラヴィ ペット・ナット ナチュラル・スパークリングワイン 2015」(Saperavi Pet’ Nat’ Natural Sparkling Wine 2015)は最もチャーミングだった。アントシアニンの強いブドウらしく、色調は赤みが強い。まろやかで優しいテクスチャー。小さな野イチゴ、甘草、レッドペパー、かすかなほろ苦さが甘酸っぱさと補い合っている。のびやかな酸があり、塩みを感じる。スパイシーなタッチを帯びたフィニッシュ。ヴォリューム感があり、どこか郷愁をそそられる素朴さ。様々なスタイルに仕上げられるサペラヴィの、エレガンスを引き出している。88点。
世界で人気のペット・ナット。アンセストラル方式だから、シャンパーニュのように洗練されていないが、にごり酒に通じるうまみと柔らかい泡が心地よい。ロワールのティエリー・ピュズラやクリスチャン・ショサールらが流行の震源地と言われる。今では、オーストラリアからカリフォルニア、ニューヨークでも、造られている。
クヴェヴリによるワイン造りの根底には、現在の自然派と同じ、人為的な介入を避けるという思想がある。フランスやイタリアの自然派生産者が、クヴェヴリに自分たちのワイン造りの源流を発見したのは、当然だった。ティエリーらはジョージアをよく訪れるそうだ。ベッカもロンドンの自然派ワインの祭典「ロウ」や「リアルワイン」などを訪れている。クヴェヴリもペット・ナットもルーツをさかのぼる動き。自然なワイン造りを突き詰めると、国にかかわらず同じところにたどりつく。
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