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マスター・オブ・ワイン初の日本視察旅行、世界に開かれた歴史的なイベントが成功

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 28人のマスター・オブ・ワイン、マスター・オブ・ワイン協会事務局長、通訳・コーディネーターら計30人が先週、5日間にわたって国内産地のワイアリーを回り、試飲やセミナーを通じて生産者たちと交流し、感想や提言をまじえながら日本ワインの見識を深めた。国内ワイン業界の関係者も世界のトップを行くプロとのコミュニケーションを通じて刺激を受けた。国内のフィールドにとどまっている日本のワイン業界が世界に開かれる歴史的なイベントになった。


 マスター・オブ・ワイン協会が行う視察旅行は毎年、企画されている。発展途上のドウロ、ペルー、ウルグアイなどを、MWたちが手弁当で訪れる。初めての日本ツアーは、会員の約3分の1にあたる150人を超すMWが応募した。東京に集合する前から、参加者たちは熱意にあふれていたという。


 大橋健一MWが3年前から計画を練り上げた。英国ベースのナターシャ・ヒューズを団長に、各国のMWたち28人がブドウ栽培家、ワイン醸造家、酒造業者、オーナーたちと交流を深めた。通訳とコーディネーター、セミナー講師は酒とワインの専門家、鈴木更紗さんが務めた。


 23日の大橋健一MWの総括的なセミナー、ウォークアラウンドの試飲からスタート。24日はシャトー・メルシャン椀子ワイナリー、長野・小諸のテール・ド・シエルなどを椀子のテロワール、低介入栽培といったテーマを定めて、セミナーや試飲して回った。


 25日は山梨であけののグレイス、サントリーの登美の丘を訪問。26日は勝沼醸造、マンズワイン、98Winesで固有品種の甲州、マスカット・ベーリーAにフォーカスし、27日は山梨銘醸で吟醸酒やスパークリングサケについても学び、笹一酒造で山廃の醸造セミナーを行った。


 日程を見るだけでも、産地のテロワールと適応する栽培、固有品種の特色などを通じて、海外で日本ワインに触れる機会の少ないMWたちに、日本ワインの全体像と個性を伝える企画になっていることがわかる。プレゼンに慣れておらず、詳細なデータの準備が不十分だったという面もあるとはいえ成果は十分に残したと言えよう。

 

甲州とマスカット・ベーリーAの可能性に注目


 大橋MWのメンターでMW協会の会長も務めた南アフリカのキャシィ・ヴァン・ジルMWは、日本を代表する固有品種の甲州とマスカット・ベーリーAの可能性に注目した。


 甲州については「あらゆる価格帯、スタイルのバリエーションで、その魅力をさらに高める必要がある。本来の個性を尊重し、畑と醸造所で厳選されたブドウを使用することで、フルーティーで繊細なものから、洗練されて樽熟成していないもの、樽熟成を巧みに用いたまろやかで複雑なものまで、あらゆるスタイルにおいてその個性を最大限に引き出すことが求められる」と提言。


 そのうえで「こうしたワインが増えれば、甲州はオーストリアにおけるグリューナー・フェルトリーナー、ギリシャにおけるアシルティコ、南アフリカにおけるシュナン・ブランのような存在になる可能性を秘めている」と評価した。


 一方、マスカット・ベーリーAは「以前私が飲んだような、フルボディで重厚、あるいは酸化したようなワインではなく、ミディアムボディの赤ワインとして提供さた」と述べ、「生き生きとした果実味、力強い酸味、そしてややしっかりとしたタンニンが感じられ、非常に魅力的で飲みやすいワインだった。このスタイルであれば、ボージョレやスペインのシエラ・デ・グレドスと肩を並べるにふさわしいでしょう」と評価した。


 また、ボルドーの赤ワインブレンドが格段に良くなっている点に言及した。


 「ボルドーの5大品種を真剣に求めるワイン愛好家が求める、抑制された力強さ、しっかりとしたタンニン構造、そして明るい酸味を備えていた。ただ、メルローの単一品種に関しては全体的に苦戦しているように感じた。香りにトマトの葉やピラジンのようなニュアンス、フィニッシュに青臭さを感じることがしばしばあった。これは、ブドウ畑が日本とは全く異なる課題を抱えているにもかかわらず南アフリカでも見られる特徴です」


 ボルドー、オーストラリア、ナパヴァレーなどでは、バイヤーやジャーナリストが産地を訪れるイベントは毎年、定期的に行われている。それが品質向上やマーケティングにつながっている。海外のMWが大挙して来日して産地を回るのは初めてのことだ。

 

98WINEsでは醸造について意見交換


 ワールズ・ベスト・ヴィンヤード2025で日本ワインで最高の20位に入賞した98WINEsのオーナーで醸造家の平山繁之さんは、ル・パンを造るティエンポン・ワインのマネージング・ディレクターを務めるフィオナ・モリソンMWがブドウに日光をあてるマセラシオンなどの独自の醸造にとりわけ興味をもったことを明かした。


 「何もしないワイン造りなのに、彼女は『バランスがよくて、アルコール度が低く豊か』と驚いていた。カルボニック・マセラシオンについても、ボジョレーの専門家ナターシャ・ヒューズMWと意見を交換した。MWの方々からメールもたくさんいただきました。貴重な機会でした」と感想をもらす。わずか3時間の滞在で普段の週末1日に匹敵する20万円以上のワインが売れたという。


 大橋MWは「日本ワインの最大公約数を伝えるところからスタートした。『世界クラスのワインがこれだけあるのに料飲店では他国のワインが優勢なのは奇妙』というMWの評価も聞いた。歴史的にも意義深いトリップになったのでは」と総括した。


 キャシィ・ヴァン・ジルMWは、「日本のワインに関して一つだけ願いを叶えられるとしたら(ブドウの生育サイクルにおける重要な時期に雨が少なくなること以外に)、それはブドウ畑で同様の問題に直面している栽培者やブドウ栽培家との知識交流を増やすことです(ボルドーだけでなくもっと広く旅をして)。世界中のワインコミュニティは緊密なつながりを持っています。問題を共有すれば、問題は半分になるのです」と、日本の生産者にエールを送った。

シャトー・メルシャン椀子ワイナリーで大橋健一MWと「ティエンポン・ワイン」のフィオナ・モリソンMW
ウォークアラウンドの試飲会
グレイスにて三澤彩奈さん(中央)とナターシャ・ヒューズMW(右隣)
大橋MWと平山繁之さん。黄色のダウン(右)がナターシャ・ヒューズMW
キャシィ・ヴァン・ジルMW(右)とフィオナ・モリソンMW(左) 撮影:鈴木更紗
98WINEsに集合

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