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ブルゴーニュ品種の新潮流、ウエスト・ソノマ・コーストのコア・メンバーが来日

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 冷涼な気候からエレガントなシャルドネ、ピノ・ノワールやシラーを産するウエスト・ソノマ・コーストAVAに注目が集まっている。ワイナリーと生産者で造る「ウエスト・ソノマ・コースト・ヴィントナーズ」(West Sonoma Coast Vintners)のメンバーが初来日し、東京と大阪でプロモーションを行った。


かつてはトゥルー・ソノマ・コース


 ウエスト・ソノマ・コーストはかつて、トゥルー・ソノマ・コーストと呼ばれた、ソノマ郡の最も西に位置する冷涼気候の産地。カリフォルニアワインの古くからの愛好家は注目してきた。マーカッシンに始まり、スティーヴ・キスラーも2010年代に「オクシデンタル」を設立して、家族でワインを造っている。


 しかし、ここのワインは1987年に設立された広大なソノマ・コーストAVAに含められ、テロワールの特異性が消費者に伝わりにくかった。トゥルー・ソノマ・コーストと呼ばれていた時代、6生産者が2011年に集まり、2015年からAVA認証を請願する運動を続けてきた。


 昨年5月、ソノマ郡で19番目のAVAに認められた。サンフランシスコから北に約2時間。北からアナポリス(Annapolis)、フォート・ロス・シーヴュー(Fort Ross-Seaview)、フリーストーン・オキシデンタル(Freestone-Occidental)の3つのサブリージョンからなる。5万7403haをカバーしている。


明るい酸が支配、控えめなアルコール度
冷涼な海洋気候が生むエレガンス


 太平洋の沿岸に広がり、標高100-500mの険しい尾根沿いにブドウ畑が広がる。1年中11度の海の冷気と午前中の霧、午後の冷たい海風によって、冷涼さが保たれる海洋性気候。気温は内陸部のほかの地域より10度は低い。昼夜の温度差が大きく、酸が乗る。内陸には針葉樹レッドウッドの巨木が生い茂る。


 太平洋プレートと北米プレートの衝突によって形成されたサンアンドレアス断層が、カリフォルニアの沿岸に南北に走っている。土地の隆起によって、水はけのいい堆積岩、砂岩、火成岩の土壌をもたらした。ワインは控えめなアルコール度、明るい酸、ジューシーなタンニンを秘めた純粋な風味に仕上がる。


 ヴィントナーズは独立系の生産者主体で設立された。辺境の深遠なる産地から産する、酸に支配されたピノ・ノワール、シャルドネ、シラーの個性を世界に広めようという志を抱いている。


メンバーは以下の通り。


32 Winds Wine、Alma Fria、Balletto、Banshee、Black Kite Cellars、Boars’View、Ceritas、Cobb Wines、DuMOL、Ernest Vineyards、Failla Wines、Flowers Vineyards & Winery、Freeman Vineyard & Winery、Gros Ventre Cellars、Hirsch Vineyards、Joseph Phelps Vineyards、Littorai Wines、Marine Layer、Matt Taylor Wines、Occidental、Paul Hobbs、Peay Vineyards、R A E N winery、Red Car Wine、Small Vines Wines、Senses Wines、Stressed Vines、Wayfarer、Whistler Vineyard


産地を牽引する造り手たちが来日
アキコさん、テッド・レモン、ジャスミン・ハーシュ


 今回はフォート・ロス・シーヴューを1980年代に開拓したハーシュ・ヴィンヤーズのジャスミン、ホワイトハウスの晩餐会に涼風シャルドネが採用されたフリーマン・ヴィンヤーズのアキコさん、ブルゴーニュのルーロで米国人初のワインメーカーを務めたリトライのテッド・レモン、ブルゴーニュのトップドメーヌを彷彿とさせるロス・コブら中心人物が来日した。


 9生産者のワインを着席で試飲した。2021年以前のヴィンテージなのでAVAはいずれもソノマ・コースト。


 「アルマ・フリア シャルドネ キャンベル・ランチ 2021」(Alma Fria Chardonnay Campbell Ranch 2021)はフローラルで、レモンオイル、白桃、マンダリン、抑制されていて、ストレートに伸びる。空気に触れてエキゾチックなタッチ、トースティなニュアンスがきれいに統合される。ワインメーカーのキャロル・ケンプと醸造家のヤン・ホルターマンが2012年に設立。オーガニックとビオディナミを実践する。92点。


 「アーネスト・ヴィンヤーズ シャルドネ 2021」(Ernest Vineyards Chardonnay 2021)はややトースティだが、アルコール度は12%で引き締まっている。熟したリンゴ、柑橘、砕いた貝殻、開放的で、明るい酸の伸びがある。開放的で、表現力が豊か。ヴィントナーズを牽引したエリン・ブルックスが2012年に設立した。フリーストーンの畑を有機栽培している。91点。


 「ウェイフェアラー・ヴィンヤード シャルドネ 2020」(Wayfarer Vineyard Chardonnay 2020)はふくよかで、すがすがしい酸、バランスがとれている。リンゴ、マイヤーレモン、オレンジオイル、クリーミィでほどよい厚みがありまろやか。リフレッシュさせられるフィニッシュ。父ジェイソンからパルメイヤーを引き継いだクレオ・パルメイヤーがフォート・ロス・シーヴューの自社畑の9区画をブレンド。1万6500円。93点。


 「ペイ・ヴィンヤーズ ピノ・ノワール ポマリアム・エステート 2014」(Peay Vineyards Pinot Noir Pomarium Estate 2014)はダークチェリー、ザクロ、下草、ドライハーブ、ジューシーなタンニン、硬質なテクスチャー、ほどよいストラクチャーのあるミディアムボディ。生き生きした果実味を保つアーシーなフィニッシュ。アンディとニック兄弟、名うてのワインメーカーのヴァネッサ・ウォンによる家族ワイナリーが、自社畑から造る。92点。


 「リトライ ピノ・ノワール ザ・ピヴォット・ヴィンヤード 2015」(Littorai Pinot Noir The Pivot Vineyard 2015)は輝きのある明るい果実、ブラックラズベリー、ブラッドオレンジ、ポプリ、クローブ、グリップがあり、シルキーで、きめ細かいタンニン。多層的で、しっかりした背骨に貫かれ、深みがある。浮遊感のあるフィニッシュ。世界の生産者から尊敬されるテッド・レモンが、セバストポールの丘の上にあるワイナリーを取り巻く畑でバイオダイナミックにより造っている。植樹は2014年。100%除梗。94点。


 「ハーシュ・ヴィンヤーズ ピノ・ノワール ウエスト・リッジ・エステート 2018」(Hirsch Vineyards Pinot Noir West Ridge Estate 2018)はフローラルで香り高い。クラッシュしたスミレ、レッドチェリー、クランベリー、現時点ではやや厳格だが、テクスチャーはシルキー。生き生きした果実、ソルティで、枠組みがしっかりしている。ジャスミン・ハーシュが、父デヴィッドの植えたフォート・ロス・シーヴューの尾根の粘土とマグネシウムの多い3つのブロックから造る。40%はマウント・エデン・クローン。93点。


 「コブ・ワインズ ピノ・ノワール ドックス・ランチ・ヴィンヤード 2019」(Cobb Wines Pinot Noir Doc's Ranch Vineyard 2019)はラズベリー、クランベリー、明るい果実、水が流れるようにシルキーなテクスチャー、エキスがたっぷりとありジューシー。ピュアで透明感に包まれ、浮遊感のあるフィニッシュ。太平洋から5キロの尾根にヘリテージとディジョン・クローンを植樹。長期賃借している自社畑。全房発酵35%。1万6000円。96点。


 「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー ピノ・ノワール ユーキ・エステート 2019」(Freeman Vineyard & Winery Pinot Noir Yu-ki Estate 2019)はダークチェリー、ラズベリー、ヨード、柔らかくて開放的。凝縮していて、コアにフレッシュ感を秘めている。甘やかなタンニン、ジューシーな酸、バランスがとれている。うまみを帯びて、グリップのあるフィニッシュ。2015年に安倍首相とオバマ大統領の公式晩餐会に涼風シャルドネが供され名を轟かせた。ソノマで最も有名な日本人ワインメーカーのアキコさんが、オクシデンタルのオーガニックの自社畑から造る。92点


 「センシーズ・ワインズ ピノ・ノワール ボデガ・ティエリオ・ヴィンヤーズ 2021」(Senses Wines Pinot Bodega Thieriot Vineyards 2021)はダークチェリー、野いちご、クローブ、シナモン、凝縮力している。フルーティで、丸い酸、スパイシーなフィニッシュ。幼なじみの20代の若者3人がオクシデンタルの畑から造る。ワインメーカーは名高いトーマス・リヴァース・ブラウン。90点。


 ブルゴーニュは気候変動でアルコール度が上がり、豊満なワインが増えている。熟しているが、スタイルは変わりつつある。控えめなアルコール度とフレッシュな酸を備えるウエスト・ソノマ・コーストのワインは、日本に多いブルゴーニュの愛好家も目を離せない産地だ。

世界の造り手から尊敬されるテッド・レモン
アキコ・フリーマンさんとジャスミン・ハーシュ
資生堂パーラーのパフェがお気に入りのロス・コブ
来日した造り手たち
(C)VINOUS

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