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サステイナブルなコト消費、カーブドッチが牽引したワイン観光の聖地新潟ワインコースト

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 ワインはほんの10年前までは、ちょっと特別なお酒だった。日本ワインの成長とともに、暮らしに溶け込んだ飲み物となった。ブドウが育ち、ワインが造られる土地を訪ねるワイン観光も浸透してきた。


 ワイン観光は新世界で発展してきた。カリフォルニアやオーストラリアなどは、ヨーロッパほど長い歴史がない。フランスやイタリアのように、ブドウ畑が身近にあるわけでもない。ワイン産地の訪問は1つの観光スタイルとして広がってきた。


ワイン観光はサステイナブルなコト消費


 産地を訪ねて、ワイン造りを学ぶ。スタッフと話しながら試飲してワインを購入し、食事と合わせて楽しむ。カントリースタイルのホテルに泊まり、畑に吹く風を感じて、大地を踏みしめる。


 学びを秘めた”コト消費”はサステイナブルでもある。気候変動がもたらす自然の変化に気付かされる。流通過程の二酸化炭素排出量を減らせる。ワイナリーは中間コストを除いて、売り上げを増やせる。


 新潟ワインコーストは国内で最も充実したワイン観光の聖地と言える。角田山と車で30分の日本海にはさまれる田園地帯に、5軒のワイナリーが集まる。その歴史はカーブドッチワイナリーがブドウを植えて、ワイナリーを創設した1992年にさかのぼる。


 「国産ブドウ100%で、欧州系ワイン専用品種100%のワインを造る」という目標を掲げ、2005年にアルバリーニョを植えて、ワインの品質を上げてきた。カーブドッチの醸造家、掛川史人さんの主宰するワイナリー経営塾に、志を抱く造り手が集った。


 2006年にフェルミエ、2009年にドメーヌ・ショオがオープンした。その後も、カンティーナ・ジーオセット、ルサンクワイナリーと続いた。


テロワールの形成を助ける


 ワインは土地の文化だから、風土を共有する土地にある程度の生産者が集まるのは大切だ。勝沼や余市はそうして発展してきた。ブルゴーニュやナパヴァレーも、歴史や経済の違いはあれど、栽培に適した土地にブドウが植えられた。そこから、生産者たちの集落が形成され、テロワールを映すワインが生まれた。


 カーブドッチを核とする新潟ワインコーストは、日本人のライフスタイルを意識した施設が集まっている。希少品が買えるワインショップ、日帰り温泉&宿泊施設のヴィネスパ、ベーカーリー&カフェの「コテアコテ」、フレンチレストラン、オーベルジュの「TRAVIGNE」……。


 温泉は地元住民の憩いの場となっている。東京駅からなら、新幹線で2時間、レンタカーで40分。無料の送迎バスも整備されている。日帰りも可能だ。シャンパーニュのランスはパリからTGVで45分、ブルゴーニュのボーヌは2時間半。新潟も決して遠くない。


ワインを売るだけでなく現地体験を渡す


 カーブドッチの掛川さんは、新潟ワインコーストをけん引してきた立役者だ。ワインを消費地の都会で売るという発想は持っていない。


 「売りに行くより、現地に来ていただきたい。売り上げの75%が直接販売で、そのうち25%はショップです。ワインだけを提供するのではなく、ここに来てからの体験もセットにして渡したい。美味しいワイン体験というのが企業理念です。どう滞在してもらうか、どう体験を渡すか。それを考えています」


 15日の訪問時はあいにくの雨だったが、造り手にとっては日常の一コマだ。我々は砂地の畑の水はけのよさを理解できる。海風が吹けば、ワインが帯びる塩味の理由を体感できる。人によって感じ方は様々だろう。


 カーブドッチは多彩なシリーズを造る。「僕は通常のスタイルをたくさん造りたいタイプ」と掛川さん。


 テーブルワイン「ミリュ」、品種を表現する「セパージュ」、鳥や動物をラベルにあしらった「どうぶつ」、食用ブドウを醸した「ファンピー」、自家製ワインを蒸留した「オー・ド・ヴィー」など、懐具合と関心に応じて、愛好家がワインを選べる。


造り手が醸造の情報を共有しない


 「カーブドッチ アルバリーニョ マセラシオン 2019」(Cave d'Occi Albarino maceration 2019)はワイナリーの眼の前の畑のアルバリーニョを72時間、マセラシオンして3年目の樽で熟成した。白い花、白桃、ピンクグレープフルーツ、軽いグリップがあり、広がりのある味わい。フェノールは統合され、バランスがとれている。89点。


 近所のほかのワイナリーもアルバリーニョを生産しているが、醸造の情報は共有していない。


 掛川さんはフェルミエの品質を認めながらも「マネしたくない。ワイン造りの話はしないし、聞かない。異なる考えの下でワインを造れば、人柄がそのまま出る」


 柔軟な考えを持つ醸造家であり、経営者でもある。

 

 シャトー・メルシャン椀子ワイナリーは「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード」で2年連続、トップ50に選ばれている。新潟ワインコーストが選ばれてもおかしくない。


 カーブドッチワイナリーのHPはこちら

掛川史人さん
熟成にステンレスの樽も使う
ベーカーリー&カフェの「コテアコテ」
オーベルジュの「TRAVIGNE」

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