世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. サンタ・クルーズ・マウンテンの奇跡、新旧世界を超えるリース

サンタ・クルーズ・マウンテンの奇跡、新旧世界を超えるリース

  • FREE
 リースはカリフォルニアで最も入手困難なピノ・ノワールの造り手だろう。少量でも日本に入っているのが奇跡だ。多い年で生産量は1万ケース。99%がメーリングリストの顧客に販売される。リスト入りは2年待ち。1%が日本への輸出とニューヨーク、サンフランシスコのディストリビューターに向かう。評論家アントニオ・ガッローニが「見つけたら迷わず入手せよ」というのは大げさではない。トップキュヴェはオークションでしか買えない。ジャンシス・ロビンソンMWが絶賛し、世界の注目も集まっている。

 カリフォルニにはいくつかの冷涼な産地がある。ソノマ・コースト、サンタ・リタ・ヒルズ、ロシアン・リヴァー・ヴァレー……しかし、いま最も面白いのはサンタ・クルーズ・マウンテンかもしれない。サン・ノゼに宿をとり、サラトガを経て、山道を登る。小1時間。漫画「頭文字D」に出てきそうな、直線で150キロは出る刺激的な道が続くが、脚の柔いレンタカーでは飛ばせない。リースの住所はスカイライン・ブールヴァード。よくもこんな高原に畑と醸造施設を切り開いたものだ。
 ソフト開発で成功したケヴィン・ハーヴェイ氏が大金を投じて、固い岩盤をくり抜いたカーヴを造り、標高の高い畑を購入した。サンタ・クルーズ・マウンテンAVAには、太平洋プレートと北米プレートが衝突したサン・アンドレアス断層が走っている。リースの畑の大半は太平洋プレート側にあり、モンテベロで有名なリッジは北米プレート側にある。東側の向こうの尾根にモンテベロが見える。

 プレートの衝突によって、元は海底だった土地が隆起し、複雑な土壌が生まれた。リースのサンタ・クルーズの5つの畑は砂岩とシェールが主体で、そこに石灰岩や粘土も混じる。政府の公開する土壌の地図と、標高や傾斜のわかるグーグルマップを重ね合わせて、ブルゴーニュ品種に適した畑を探したという。青い部分が石灰岩で、リッジの畑だ。
 ハーヴェイ氏とワインメーカーのジェフ・ブリンクマン氏は、年に1度はブルゴーニュを訪問するブルゴーニュ・オタク。エティエンヌ・ド・モンティーユらから教わり、栽培や醸造の手法を編み上げた。旧世界の知恵と新世界の観察、実験によって、新旧世界の別を超えた世界クラスのワインが出来上がっている。

 試飲はすべてハーフボトルから。シャルドネのホースシュー・ヴィンヤード2013から始まった。ホースシューはピノ・ノワールが主体で、シャルドネは10%ほどしか造らない。白桃、白トリュフ、バター。豊満だが、明るい酸とヨード香を伴うミネラル感があり、リッチすぎない。新樽は50%。テンションと飲みごたえがある。カリフォルニアのムルソー・ペリエールといっていいだろう。

2015年12月7日 カリフォルニア・サンタ・クルーズ・マウンテンのリースで
リース シャルドネ ホースシュー・ヴィンヤード 2013
92点
輸入元:中川ワイン 希望小売価格2万3000円

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP