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ボルドー・サンテミリオンのプルミエ・グラン・クリュ・クラッセA(PGCCA)のシャトー・アンジェリュス当主ユベール・ド・ブアール・ド・ラ・フォレ氏が、ワインメーカー30周年を記念して来日した。
家族経営のシャトーは1782年からの歴史を持ち、ド・ブアール氏は7代目。ボルドー大で、モダン・ボルドーの祖エミール・ペイノー教授に学び、1985年が最初のヴィンテージ。80年代はミシェル・ロランをコンサルタントに雇っていたが、今は離れた。1985年の格付けはグラン・クリュ・クラッセだったが、1996年にプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに昇格し、2012年に4シャトーしかないPGCCAとなった。
「ターニングポイントになったのは1989ヴィンテージ。(フランスの評論家)ミシェル・ベタンヌがサンテミリオンで2つのトップシャトーの1つと評価してくれた。あれで注目が集まった」
試飲したのは7アイテム。2012から、ラランド・ド・ポムロールで展開するラ・フルール・ド・ブアール、セカンドのル・カリヨン・ダンジェリュス、グランヴァンのアンジェリス。2010からラ・フルール・ド・ブアールとアンジェリュス、アンジェリュスの2009と2007。
ラ・フルール・ド・ブアールはラランド・ド・ポムロールに一族で所有する。1998年に購入した。世界初の逆円錐形の発酵槽を天井から吊り下げて使用している。液面が広く、ゆっくり抽出できるという。2012は紫が強く、ブルーベリー、プラムのジャム、ヴィンテージから想像できない果実の充実感があり、ビシッと筋が通っている。メルロは85%で、残りはカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨン。2010はさらに巨大で、アルコール度は14.5%。鉛筆の芯、ブラックベリー、コーヒー。しっかりした骨組みで、凝縮されているが、質感は柔らかくて、ジューシーさすら感じる。ラランド・ド・ポムロールの概念を変えさせられた。1987年から始めた、アンジェリュスのセカンドのカリヨン・ダンジェリュスは全体の20~25%。2012はややタンニンが粗いが、果実は丸くて、まろやか。ほのかに青くて、ミンティ。メルロ50%、残りはカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨン。
「ラ・フルール・ド・ブアールは砂利の上に粘土が広がるポムロール的な土壌で、なめらかで優しい。タンニンも繊細でチャーミング。レストラン向けのリーズナブルなワインで、早くから楽しめる。カリヨンはしっかりした骨組みがあり、なめらかさはラ・フルールほどないが、カベルネによる深みがある」
アンジェリュスの2012は記念の年。PGCCAに昇格した。シャトーの刷新が終わり、娘ステファニーが8代目として働き始めた。黒地に21.7金をエッチングした特別なボトルに詰めた。緩さはなく、黒みが強い。チェリーのキルシュ、甘草、シルキーなタンニンとたっぷりしたエキスがあり、深みと奥行きがある。アルコール度は14.5%。平均的な2012のイメージとかけ離れた大作だ。55%のメルロと45%のカベルネ・フラン。
アンジェリュスのシグネチャーはカベルネ・フランだ。オーゾンヌ、シュヴァル・ブランと並んで、サンテミリオンでも多用するシャトー。グランヴァンは40~50%のカベルネ・フランをメルロとブレンドする。
「ペイノー教授はアンジェリュスの土壌に適していると話していた。フレッシュで、洗練されている。カシミアのようで、長さと持続性がある。病害に弱く、25年を超す樹齢が必要で、ヘクタール当たり収量は最大で30ヘクトリットルに抑える。白コショウのスパイシーさやメントールの印象がある。過去にはメルロと同時期に収穫したりして、早すぎた。セレクション・マッサールで増やし、区画別に収穫している」
2010と2009は金字塔的なヴィンテージ。パーカーポイントはいずれも99+点。2010は向こうを見通せないほど黒みが強い。ブラックベリーのリキュール、エスプレッソ、黒鉛、ウルトラスムーズなタンニンの粒子は細かく、粘性は高い。巨大なスケールの立体的なワインで、余韻は複雑で長い。享楽的で、開放的な2010に比べると、2009はちょっと控えめで、エレガント。タンニンの質、果実の凝縮度、骨組みの大きさは同レベルだが、底知れない奥深さを感じさせる。2007は柔らかく、開いている。伊勢海老の海肝(ウニ)焼きに合わせられるジューシーさがあった。
「2005、2010と2009は家族が違う。2010はビッグで表現力豊かで、古典的だが、2009はバロック彫刻のようで、『オリエンタル』と呼びたい。2009は1989を思い出させる。2015は2009と2010、2005の中間だ」
アンジェリュスは低収量の栽培と同時に、光学式選果台と13人のスタッフによる選別、手による除梗などきめ細かな醸造を徹底している。ド・ブアール氏はボルドーの右・左岸を中心に国内75ワイナリーとし、海外ではレバノン、タイなど5ワイナリーをコンサルティングしている。サンテミリオンの顔的な存在になってきた。
2015年11月26日 東京・築地の「つきぢ田村」で
ラ・フルール・ド・ブアール 2012
89点
ラ・フルール・ド・ブアール 2010
90点
ル・カリヨン・ダンジェリュス 2012
89点
シャトー・アンジェリュス 2012
94点
シャトー・アンジェリュス 2010
98点
シャトー・アンジェリュス 2009
97点
シャトー・アンジェリュス 2007
91点
家族経営のシャトーは1782年からの歴史を持ち、ド・ブアール氏は7代目。ボルドー大で、モダン・ボルドーの祖エミール・ペイノー教授に学び、1985年が最初のヴィンテージ。80年代はミシェル・ロランをコンサルタントに雇っていたが、今は離れた。1985年の格付けはグラン・クリュ・クラッセだったが、1996年にプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに昇格し、2012年に4シャトーしかないPGCCAとなった。
「ターニングポイントになったのは1989ヴィンテージ。(フランスの評論家)ミシェル・ベタンヌがサンテミリオンで2つのトップシャトーの1つと評価してくれた。あれで注目が集まった」
試飲したのは7アイテム。2012から、ラランド・ド・ポムロールで展開するラ・フルール・ド・ブアール、セカンドのル・カリヨン・ダンジェリュス、グランヴァンのアンジェリス。2010からラ・フルール・ド・ブアールとアンジェリュス、アンジェリュスの2009と2007。
ラ・フルール・ド・ブアールはラランド・ド・ポムロールに一族で所有する。1998年に購入した。世界初の逆円錐形の発酵槽を天井から吊り下げて使用している。液面が広く、ゆっくり抽出できるという。2012は紫が強く、ブルーベリー、プラムのジャム、ヴィンテージから想像できない果実の充実感があり、ビシッと筋が通っている。メルロは85%で、残りはカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨン。2010はさらに巨大で、アルコール度は14.5%。鉛筆の芯、ブラックベリー、コーヒー。しっかりした骨組みで、凝縮されているが、質感は柔らかくて、ジューシーさすら感じる。ラランド・ド・ポムロールの概念を変えさせられた。1987年から始めた、アンジェリュスのセカンドのカリヨン・ダンジェリュスは全体の20~25%。2012はややタンニンが粗いが、果実は丸くて、まろやか。ほのかに青くて、ミンティ。メルロ50%、残りはカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨン。
「ラ・フルール・ド・ブアールは砂利の上に粘土が広がるポムロール的な土壌で、なめらかで優しい。タンニンも繊細でチャーミング。レストラン向けのリーズナブルなワインで、早くから楽しめる。カリヨンはしっかりした骨組みがあり、なめらかさはラ・フルールほどないが、カベルネによる深みがある」
アンジェリュスの2012は記念の年。PGCCAに昇格した。シャトーの刷新が終わり、娘ステファニーが8代目として働き始めた。黒地に21.7金をエッチングした特別なボトルに詰めた。緩さはなく、黒みが強い。チェリーのキルシュ、甘草、シルキーなタンニンとたっぷりしたエキスがあり、深みと奥行きがある。アルコール度は14.5%。平均的な2012のイメージとかけ離れた大作だ。55%のメルロと45%のカベルネ・フラン。
アンジェリュスのシグネチャーはカベルネ・フランだ。オーゾンヌ、シュヴァル・ブランと並んで、サンテミリオンでも多用するシャトー。グランヴァンは40~50%のカベルネ・フランをメルロとブレンドする。
「ペイノー教授はアンジェリュスの土壌に適していると話していた。フレッシュで、洗練されている。カシミアのようで、長さと持続性がある。病害に弱く、25年を超す樹齢が必要で、ヘクタール当たり収量は最大で30ヘクトリットルに抑える。白コショウのスパイシーさやメントールの印象がある。過去にはメルロと同時期に収穫したりして、早すぎた。セレクション・マッサールで増やし、区画別に収穫している」
2010と2009は金字塔的なヴィンテージ。パーカーポイントはいずれも99+点。2010は向こうを見通せないほど黒みが強い。ブラックベリーのリキュール、エスプレッソ、黒鉛、ウルトラスムーズなタンニンの粒子は細かく、粘性は高い。巨大なスケールの立体的なワインで、余韻は複雑で長い。享楽的で、開放的な2010に比べると、2009はちょっと控えめで、エレガント。タンニンの質、果実の凝縮度、骨組みの大きさは同レベルだが、底知れない奥深さを感じさせる。2007は柔らかく、開いている。伊勢海老の海肝(ウニ)焼きに合わせられるジューシーさがあった。
「2005、2010と2009は家族が違う。2010はビッグで表現力豊かで、古典的だが、2009はバロック彫刻のようで、『オリエンタル』と呼びたい。2009は1989を思い出させる。2015は2009と2010、2005の中間だ」
アンジェリュスは低収量の栽培と同時に、光学式選果台と13人のスタッフによる選別、手による除梗などきめ細かな醸造を徹底している。ド・ブアール氏はボルドーの右・左岸を中心に国内75ワイナリーとし、海外ではレバノン、タイなど5ワイナリーをコンサルティングしている。サンテミリオンの顔的な存在になってきた。
2015年11月26日 東京・築地の「つきぢ田村」で
ラ・フルール・ド・ブアール 2012
89点
ラ・フルール・ド・ブアール 2010
90点
ル・カリヨン・ダンジェリュス 2012
89点
シャトー・アンジェリュス 2012
94点
シャトー・アンジェリュス 2010
98点
シャトー・アンジェリュス 2009
97点
シャトー・アンジェリュス 2007
91点
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