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米国最大級のワイン企業「サン・ミッシェル・ワイン・エステーツ」(Ste.Michelle Wine Estates)が、12億ドルで投資企業「シカモア・パートナーズ」(Sycamore Partners)に売却された。
サン・ミッシェル・ワイン・エステーツはワシントン州を代表する大手ワイン企業。フラッグシップのシャトー・サン・ミッシェルのほかにコロンビア・クレスト、カリフォルニアのスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ、パッツ&ホールなどのブランドを所有する。ワイナリー数はワシントンに7つ、カリフォルニアに2つの計9軒。
ワイン生産量では米国8位。2007年にはイタリア・トスカーナのアンティノリと共同で1976年の「パリスの審判」の勝者スタッグス・リープを買収した。アンティノリとのジョイント・ヴェンチャー「コル・ソラーレ」も傘下に有する。
2008年に買収した親会社のタバコ企業「アルトリア」(Altria)は、フィリップ・モリスUSAや大麻メーカーのクロノスなどを所有する。売却によって、中核のたばこ事業に注力する。サン・ミシェルは余剰在庫と売り上げ減少の問題を抱え、新型コロナウイルスによるセラードアの販売激減が懸念されていた。2021年下半期中に売却は完了する予定。
ニューヨークに本拠を置くシカモア・パートナーズはファッションのアン・テイラー、オフィス用品のステープルズなど小売ブランドの投資に特化したプライベート・エクイティ・ファーム。州外への流通など、特殊な条件を備えるアルコール飲料事業の経験はない。
サン・ミシェルはワシントン州のブドウ栽培面積の大半と契約し、ワイン生産量の60%を占める。リースリングの世界最大級の生産者でもある。ワシントン州のワイン産業に与える経済的・文化的影響は大きい。
プライベート・エクイティ・ファームは短期利益を重視し、買収するとまず現物資産を売却する。ワシントン州とカリフォルニア州の畑を切り売りするのかどうか。また、デイリーワインに強いブランドを保持し続けるのかどうか。ブランド・ビジネスに特化してきたシカモア・パートナーズが、サン・ミシェル・ワイン・エステーツをどう経営し、それがワシントンのワイン産業にどうインパクトを与えるのかは未知数だ。
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