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DRCに迫る自然な味わい、ルシアン・ル・モワンヌのピュリニー・モンラッシェ・フォラティエール

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 ブルゴーニュの赤ワインもデカンタージュする時代が来るかもしれない。炭酸ガスを多めに残して、酸化を防ぎ、フレッシュ感を保つ生産者が増えている。ドメーヌ・フーリエやルシアン・ル・モワンヌがその代表だ。マロラクティック発酵で生じる炭酸ガスを白ワイン並みに残して、亜硫酸は減らし、瓶詰めする。ピチピチとした感触が、ほかの生産者より強い。



 白ワインならまあ違和感はない。ギュファン・エナンのジャン・マリー・ギュファンスは、通常はリットル当たり700ミリグラムの炭酸ガスを、800から850ミリグラムも瓶内に残す。ルシアン・ル・モワンヌも同じだ。「ピュリニー・モンラッシェ・レ・フォラティエール 2013」は、グラスに注ぐと泡が見てとれる。


 飲むのは一工夫いる。当主ムニール・サウマが言うように、デカンタージュして、ガスを飛ばした方がいい。注いだ直後は硬くて、タイト。白桃、ドライアプリコット、濡れた石、まろやかなテクスチャー、リッチでオイリー。緊張感があるが、果実は分厚い。アルコール度は13.5%に達し、ワインの中心に収斂していくエネルギーがある。瓶に栓をして振る。2時間後にはまとまり、長いフィニッシュまで継ぎ目がなく、ハーモニーが整った。


 サウマはオリと、そこから生まれる炭酸ガスに頼って醸造する。牛を飼い、野菜やブドウを育て、ワインは涼しい蔵で熟成させるだけだった昔の手法だ。化学薬品や温度管理の仕組みがなかった時代の智恵を生かし、フレッシュで、深みのある味わいをものにしている。

 

 赤ワインも素晴らしく、凝縮したエキスと自然な味わいは、やはり伝統的な手法で造るDRCに迫る。和牛と冷麺で有名な盛岡駅前の焼き肉屋「盛楼閣」に持ち込んで飲んだ。デカンターはもちろんない。開かせるのに手間がかかった。ソムリエに任せるか、じっくりうち飲みするのに向いている。



 赤は「イゾレ・エ・オレーナ チェッパレッロ 2003」。甘草、タバコ、ミント、シルキーなタンニンに包まれ、ややポート的な濃厚さもあるが、標高の高さから来る酸があって、14%のアルコール度を重く感じさせない。なめし革の香りを伴う長いフィニッシュ。乾いたタンニンが残るが、猛暑の2003とは思えないバランスの良さが印象に残った。トスカーナでトップを行くサンジョヴェーゼであることを再確認した。

 こちらはタレに漬けこんだロースと抜群の相性。焼き肉には熟成したサンジョヴェーゼがいい。トスカーナは骨付きのビステッカ・アッラ・フィオレンティーナなど、肉食いの本場だから合って不思議はない。岩手県は海の幸、前沢牛、山菜、日本酒、お米と、北海道と並ぶ食の宝庫。盛岡で最大の山田酒店の山田隆社長の案内で、その深さを堪能した。

2016年5月10日 岩手・盛岡の「盛楼閣」で

ルシアン・ル・モワンヌ ピュリニー・モンラッシェ・レ・フォラティエール 2013
94点
輸入元:中島董商店
イゾレ・エ・オレーナ チェッパレッロ 2003
93点
輸入元:ジェロボーム

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