アリゴテにも才能、ティボー・リジェ・ベレール

　ティボー・リジェ・ベレールは忙しい男だ。ニュイ・サン・ジョルジュに本拠を置くドメーヌはもちろん、ボージョレのムーラン・ナヴァンも情熱を注ぎ、プルミエクリュ・レ・サンジョルジュのグランクリュ昇格運動も先導する。近年はネゴシアンに力を入れている。白の「ブルゴーニュ・レ・シャルム　2012」と赤の「ブルゴーニュ・レ・ドゥー・テール　2013」を試飲した。


　ブルゴーニュ・レ・シャルムはマコネのリュニーとコート・シャロネーズのモンタニーの2つの畑をブレンドした。土壌はそれぞれ、石灰質主体と、粘土、泥灰土主体と異なり、タイトさとまろやかさという違いが出る。ステンレスタンクで14か月間の熟成。温かさを感じるおおらかな味わい。酸は柔らかく、丸みを感じる。熟したグレープフルーツ、白桃の香り。6年前に除草剤を廃止した畑をビオディナミに転換している。もっと良くなるだろう。
　ブルゴーニュ・レ・ドゥー・テールはガメイ70％とピノ・ノワール30％。畑を知り尽くしているムーラン・ナヴァンがガメイの40％を占める。タンニンがまろやかで、パストゥグランにありがちなタイトさとスパイシーさが目立たず、フルーティ。
　ドメーヌものに、白ワインが新たに加わった。「ブルゴーニュ　アリゴテ　ル・クロ・デ・ペリエール・ラ・コンブ　2013」。ニュイ・サン・ジョルジュ村から冷涼なオート・コート・ド・ニュイに抜ける谷に近いレ・アルジラに隣接するくぼ地の畑。石灰質が豊富な南向き斜面の0.8ヘクタールから。フレッシュで正確だが、トロリとした口当たりと熟した果実。昨年11月にドメーヌで試飲した時より、複雑に発展し、広がりがある。コート・ド・ニュイには少ない、親しみやすいアリゴテ。

　「熟成前酸化を防ぐため、プレスした後、果汁を果梗、果皮と一緒に、低温で1週間ほど漬けこむ。発酵はしないから、オレンジワインにはならない。タンニンの抗酸化作用で酸化が防げる。ローヌのエリック・テキシエに教わった方法だ」とティボー。


　ムーラン・ナヴァンも試飲した。「ムーラン・ナヴァン　レ・ルショー　2012」「ムーラン・ナヴァン　レ・ヴェイユ・ヴィーニュ　2012」「ムーラン・ナヴァン　ラ・ロッシュ　2012」「ムーラン・ナヴァン　レ・ヴィーニュ・ソントネール　マグナム　2012」の4種を試飲。
　「レ・ルショー」は最も柔らかく、スミレやレッドチェリーの香る近づきやすいキュヴェ。「レ・ヴェイユ・ヴィーニュ」はタイトでしっかりした骨格、継ぎ目がなく、ほろ苦い。「ラ・ロッシュ」はスレート、砕けた岩、グリップが強く、快活。湧きあがるエネルギーにあふれている。樹齢80年の「レ・ヴィーニュ・ソントネール」のマグナムは、フィロキセラ以前の自根の樹の3区画をブレンドし、50％は全房発酵。レッドチェリーのリキュール、藻塩、バランスのとれた巨大な構造が調和を保っている。20年後に再会したい。
　

2016年4月22日　東京・青山で

ティボー・リジェ・ベレール　ブルゴーニュ・レ・シャルム　2012
86+点
税別希望小売価格：3200円
ティボー・リジェ・ベレール　ブルゴーニュ・レ・ドゥー・テール　2013
86点
税別希望小売価格：3600円
ティボー・リジェ・ベレール　ブルゴーニュ　アリゴテ　ル・クロ・デ・ペリエール・ラ・コンブ　2013
88+点
税別希望小売価格：4400円
ティボー・リジェ・ベレール　ムーラン・ナヴァン　レ・ルショー　2012
89点
税別希望小売価格：4400円
ティボー・リジェ・ベレール　ムーラン・ナヴァン　レ・ヴェイユ・ヴィーニュ　2012
90点
税別希望小売価格：4500円
ティボー・リジェ・ベレール　ムーラン・ナヴァン　ラ・ロッシュ　2012
91点
税別希望小売価格：5500円
ティボー・リジェ・ベレール　ムーラン・ナヴァン　レ・ヴィーニュ・ソントネール　マグナム　2012
93点
税別希望小売価格：1万6000円