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冷たいナイフを喉元に、挑戦強いられるルーミエのミュジニー

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 クリストフ・ルーミエはいい男だ。見た目も、気立ても。

 1980年代にアンリ・ジャイエ・スクールがあった。同級生は、パトリック・ビーズ、ドミニク・ラフォン、エティネンヌ・グリヴォ。みなが少しでもいいワインを造ろうと、アンリに試飲してもらい、アンリのワインから学んだ。現在のブルゴーニュ品質革命の始まりと言っていい。パトリックは不幸にも亡くなった。、エティエンヌは87年から92年までギィ・アカッドの下で迷い道をしたが、今はヴォーヌ・ロマネの中心人物の一人になった。

 ドミニクは最もスマートな男だ。米国の伝説的なワイン商ベッキー・ワッサーマンの下で学び、今では米国でもコンサルティングしている。クリストフは正直な農民であり続けている。畑をむやみに増やすでもなく、与えられた条件の下でせいいっぱいの努力をしてきた。日本人が最も好む栽培農家のイメージを体現している。今ではクリストフに教えを乞うた新世代も登場し、ブルゴーニュの大黒柱の一人となった。本人はそんな意識はないようだが。

 アンリの最大の影響は?

 「低温浸漬」とすぐに答えが返ってきた。

 しかし、除梗については、師匠に背いている。温暖化の影響もあり、クリストフも導入している。このあたりは現実主義的だ。師を乗り越えるのも進化の一つだ。

 「今ならアンリもステムを使っているのではないか」

 これはエティエンヌも、同じことを言っていた。

 ともあれ2012のバレル試飲。

 最後のミュジニーは至高の味わい。お隣のジャック・フレデリック・ミュニエのミュジニーも成層圏に突き抜けているが、どこか神秘的なたたずまいだ。ミュジニー自体の、探さないとわからない性格が出ている。ルーミエのミュジニーは最初から線を引いてくる。ディフィニションは明確だ。正確。焦点が合っている。あいまいさがない。ミネラルに縁どられた余韻が果てしなく続くさまは、この世のものを超えている。

 ただ、ルーミエのミュジニーは、飲み手に挑戦を強いる。のど元に冷たく光るナイフの切っ先を突き付けられているようだ。どこまでこのワインの世界を探索できるのか?そう問われるのだ。答えは簡単に出ない。

 2012はわずか1樽。瓶詰めして300本足らず。貴重な液体を20ミリリットル減らした罪悪感を感じながらも、それが幸運な出会いだったのだと自分を納得させつつ、長い余韻に身を任せる。

 語れば語るほど、実態から遠ざかる。

 飲んだ体験を共有するのが難しい。器が試される。そんなパーソナルなワインが、ルーミエのミュジニーだ。

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