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コート・ドールの中心で「ラ・ロマネ」と叫ぶ

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 フランスで最も小さなアペラシヨン、ラ・ロマネ。0・8ヘクタール。ロマネ・コンティが1・8ヘクタール。そのすぐ上の斜面に位置する。

 当主のルイ・ミシェル・リジェ・ベレールは、ナポレオン一世につかえたリジェ・ベレール将軍の流れを引く。かつてはラ・ターシュも所有していた大地主。ひとつ指摘しておくと、ラ・ロマネとロマネ・コンティは同じ畑が分かれたのではなく、最初から別の区画だった。

 長らく不在地主で、栽培と醸造を任せていたため、ラ・ロマネは陰に隠れていた。そこに太陽をもたらしたのがルイ・ミシェル。2006年以降、全権を把握してからは絶好調。秘められていた真価を表している。シャトー・ド・ヴォーヌ・ロマネを刷新し、瓶詰などの施設や建物も整えた。末娘はニュイ・サンジョルジュで柔道を習っているという。日本人が来るというので、柔道着で迎えてくれた。私は小学生でやめましたけど。

 畑を歩けばわかるが、ロマネ・コンティのすぐ上なので、表土は薄い。水はけはいい。雨上がりの日曜に歩いた。ロマネ・コンティも十字架近くの下部斜面の樹が生えてない部分は水はけが悪く、雨上がりは水がたまっていた。ラ・ロマネは問題なし。表土が薄いということは、母岩の石灰岩に直接、樹の根が届くということ。

 ラ・ロマネの畑は南北に畝が走っている。表土の流失が防げる。2003のような年は、日焼けも防げた。南北に走っている畑で有名なのは、あとはクロ・ド・タールやクロ・デ・ランブレーくらいだろう。モンラッシェにも、造り手によって存在するけれど。畝の感覚も狭い。ルイ・ミシェルが早くから馬を飼って、耕作にあてたのは、作業効率の問題もあったのだろう。

 樽からの2012は神品。

 5年ぶりにバレルから試飲した。スケールが増して、構図が巨大になっている。飲んだ瞬間に、雷に打たれたように身動きできなかった。巨大なミラーボールが頭上で回り始めた。放出するエネルギーと光が多すぎて、自分の中でうまくまとめられない。

 ラ・ロマネは、ロマネ・コンティより標高が高く、表土が薄いため、若いころは厳しい。それが世界の認識だし、そう思っていたが、2012は外交的で、最初からプッシュしてくる。前日にDRCで会ったワイン・アドヴォケイトのニール・マーティンが「過去最高」と言っていたのも納得。無限の力がすするたびに湧き出てくる。わずか11樽。14樽のロマネ・コンティより少ない。世界遺産だ。

 余韻に浸っていると、ルイ・ミシェルがボトルを持ってきた。2007。ハーフに入っている。酸が低く、すでに楽しめる。恵まれたヴィンテージではないが、だからこその自信作を提示したのだろう。彼が栽培から醸造、供給まで全面的に支配して、思う通りにできたヴィンテージ。バランス、パワー、エレガンスが巨大な地球儀を描いている。

 夜7時。ヴォーヌ・ロマネの教会の鐘が響いた。

 世界の中心でピノ・ノワールを味わっている。その実感が全身にいきわたる。「愛」ではなく「ラ・ロマネ」と叫びたくなった。

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