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リオハ・アラベサのボデガス・ビラール、筋金入りのビオディナミスト(2018年6月リオハ)

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 フランスよりイタリア、イタリアよりスペイン。ヨーロッパは田舎に行くほど、人が親切になる。リオハを回っていてしばしば困ったのは、ホームページに村名しか書いていないこと。GPSで村まではたどり着けても、通りや番地がわからない。その先は、日陰で休む老人やバルでくつろぐ地元民に聞くしかない。一生懸命説明してくれる。スペイン語が通じないとわかると、隣の席に乗り込んでくる。同乗して、方向を指示しようというのだ。最初は驚いたが、何度かそんな経験をした。ごく当たり前の親切なのだ。
 リオハ・アラベサ地区エルビラール(Elvillar)村のボデガス・ビラールも、そうやって訪ねた。軒先でくつろいでいた道案内の人を、自宅近くまで送り返すのに時間がかかったが、いずれにせよありがたい話だ。ボデガスは新築中。村の中心から外れて反対側の丘の上部にあった。回りは畑のみ。どう見ても通りも、番地もない。わからないわけだ。日本で言えば、「字」の番地が1つしかないところに広がる田んぼのような場所だった。
 当主ダビッド・サンペドロ・ジルは4代続く栽培農家の生まれ。リオハ大学で醸造学を修め、バスクの醸造専門学校で、栽培やマーケティングを学んだ。コンサルタントを経て、2012年から自分のワインを造り始めた。9.5haの自社畑はビオディナミで耕作し、スペインではまだ珍しい馬による耕作を実践している。ワイナリー下の畑「アベヘラ」(Abejera)は白っぽい石灰岩土壌。株仕立ての古木の間に、カバークロップが自由に生え茂り、馬がゆったりと草をはんでいる姿は絵になる。
 「オーガニックへの転換を進める中で、ある朝、動物や昆虫が戻ってきたのに気づいた。我々には畑のバイオダイバーシティ(生物的多様性)を保つ責任がある」
 彼の単一畑のフラッグシップ「フィンカ・ラリ」(Phinca Lali)はわずか0.54ha。孤立した北向き斜面に、1910年に植えられたテンプラニーリョとビウラがまばらに育っている。栽培というよりは、ブドウ樹が自生しているのをそのままに放置している感じだ。ビオディナミで栽培しているのは見ればすぐわかる。道もないような斜面の下生えを踏みしだかないと畑にたどり着けない。
 日本にはエントリーレベルの「ブランコ」と「ティント」しか入っていないが、それですらビラールの実力を知るには十分だろう。ティム・アトキンMWの格付けは2級だが、いずれ昇格されるに違いない。

 「ボデガス・ビラール ティント 2016」(Bodegas Bhilar Tint 2016)はエルビラールのすべての畑のブレンド。テンプラニーリョ85%、ガルナッチャ10%、ビウラ5%。オレンジの皮、レッドチェリー、しなやかでナチュラルなタンニン、継ぎ目がなく、バランスのとれたパレット、しっかりと余韻が長い。90点。3100円。

 「ボデガス・ビラール フィンカス 2013」(Bodegas Bhilar Phincas 2013)は樹齢50年以上の畑から60%は全房発酵。500Lのフレンチオークで3年間の熟成。ブレンド比率はティントとほぼ同じ。流れるようなマウスフィール、香り高く、サワーチェリー、ミント、ジンジャー、真っ直ぐな酸とギュット詰まった果実のバランスがとれている。終盤にかけて広がりがあり、フレッシュなフィニッシュ。9330本生産。91点。

 「ボデガス・ビラール フィンカ・アベヘラ 2013」(Bodegas Bhilar Phinca Abejera 2013)は1929年に植えた0.27haの畑。純粋な石灰岩土壌にガルナッチャを多く植えている。テンプラニーリョとガルナッチャ各40%とビウラ10%。サワーチェリー、プラム、クローブ、シルキーで上質なタンニン、コアの果実は詰まっているが、軽やかな躍動感がある。フィニッシュに、ミントチョコとかすかにレーズンのタッチ。透明感があり、リフレッシュさせられる。野生酵母により、500Lの開放式桶を用いて全房発酵比率は40%。93点。

 「ボデガス・ビラール フィンカ・エル・ヘダオ 2014」(Bodegas Bhilar Phinca El Vedao 2014)は搾りたてのストロベリー、ブラッドオレンジ、バルサミックで、ローズマリーのノート。素晴らしくフレッシュで、なめらかなテクスチャー、アーシーなフィニッシュ。標高450mの30年樹齢のガルナッチャだけから造られる最新の単一畑でこれが初ヴィンテージ。生産は1296本。92点。

 「ボデガス・ビラール フィンカ・ハパ ティント 2016」(Bodegas Bhilar Phinca Hapa Tint 2016)は、白と赤の両方を造るフィンカ・ハパの畑から。標高360mのチョーキーな白い土壌に1967年に植えた。。全房発酵によるフレッシュでスパイシーなスタイル。レッドチェリー、ドライトマト、軽やかでアプローチャブルな昔ながらのスタイル。ビオのボージョレを連想させる。テンプラニーリョとグラシアーノ。94点。

 赤はすべてビオディナミらしい透明感のある酸と純粋な果実が印象に残る。全房発酵を部分的に導入することで、フレッシュ感と香りの複雑性が加わっている。リオハの中でも本気度の高いビオディナミストだ。
 エルビラール村はアルタディなど高品質生産者がブドウを購入にくることで有名。標高が高いため、切れのある白ワインも生まれる。ビウラの魅力を日本人はもっと発見すべきだ。

 「ボデガス・ビラール ブランコ 2017」(Bodegas Bhilar Blanco 2016)はビウラ90%とガルナッチャ・ブランカ。柑橘、黄桃、粘性は高くエキゾチック、熟成のフレンチオーク由来のフェノリックスはなめらかに統合され、大西洋気候からくる酸が緊張感を与えている。フレッシュでセクシー。ビウラはスペインのシャルドネだ。90点。3100円。

 「ボデガス・ビラール フィンカ・ハパ ブランコ 2017」(Bodegas Bhilar Phinca Hapa Blanco 2017)は、ビウラにガルナッチャ・ブランカを12%ブレンド。コンクリートタンクで果皮とともに2か月間、発酵したオレンジワイン。600Lのフレンチフードルで1年間の熟成。薄い紅茶の色調、緑茶、ネクタリン、甘やかなタンニン、統合されたテクスチャー、丸みがあり、バランスがとれている。リオハの最良のオレンジの1つ。93点。

 輸入元はウミネコ。
フィンカ・アベヘラの畑で
フィンカ・アベヘラは表土の薄い石灰岩土壌
急斜面にある単一畑「フィンカ・ラリ」

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