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7年ぶりに光明がさしている。ブルゴーニュの2017は、どの生産者に聞いても、素晴らしいヴィンテージだと強調する。ブドウの出来がよく、平年並みの収穫量に戻った。生産者、流通業、レストラン、愛好家……すべてのワイン関係者が待ち望んだヴィンテージとなりそうだ。10年間、コート・ドールの畑を観察し続けてきた私も興奮せずにいられない。
収穫直前になると、必ずブルゴーニュを回る。今年で10年目になる。この10年間は、生産者にとって試練の時期だった。1980から2000年代は、豊作が続いたが、それは恒常的なものではなく、小康状態にすぎなかった。2011年から6年間、雹害、霜害、病原菌、干ばつ、ウィルスなど、毎年のように災難に襲われ、ブドウ収穫量の低下は甚だしい。
2017年の春は、寒いのかと思えば、突然暑くなり、また寒くなるという気温の変化が激しかったが、ブドウの成長は早かった。4月末にフランス中を寒波がおおった時、生産者たちはよく防寒に努め、これに対抗した(シャブリとクリュニーでは少なからず被害はあったが)。6月第一週目に早くも開花が始まり、その折の天候は完璧で、ブドウの花の結合は速やかに進んだ。2003年、2007年、そして2011年に似た速さで、今年の収穫はとても早くなると予想された。
7月のフランス農務省の発表によると、フランス全体の収穫量は1945年以来の過去最低の見通しとなったが、ブルゴーニュ地方だけが収穫量アップを記録すると報じられた。前年の12%アップの見通しで、ここ5年間のうちでも7%アップである。それは、ようやく平年並みの収量に戻ったことを意味する。フランス中の生産者たちが悲鳴を上げる中で、ブルゴーニュは運が良かった。
8月27日、パリから車を走らせ約3時間、最初の村のジュヴレ・シャンベルタンに入った。特級畑リュショット・シャンベルタンのすぐ横の、一級畑フォントニィまで来ると、村中の畑が一望できる。フォントニィは軽やかで、キビキビした酸味のある上品な味わいのワインを生む一級畑で、私の最もお気に入りの畑の一つである。見るからに凝縮し、とても良い状態のブドウが見てとれる。去年は、この畑のブドウはかなり酸っぱくて、糖度が伸びあぐねたが、今年のブドウはジューシーで甘い。2013、2010年のような小粒揃いの甘さではなく、2009年や2015年のような、みずみずしくも熟度の高い、素晴らしいヴィンテージだ。もう収穫しても良いと思った。
ジュヴレ・シャンベルタンからニュイ・サン・ジョルジュまで、コート・ド・ニュイの畑は、一概に素晴らしい状態であった。糖度、酸度、タンニンすべてにおいて申し分ない。局地的な雹の被害や、ベト病の被害があるものの、ブドウは甘く、とても凝縮している。最高のピノ・ノワールが生まれそうな予感がする。
コート・ド・ボーヌの畑はここ数年、収穫量が激減してきた。毎年、この産地を訪れるのが正直、怖くなっていた。かなりの頻度で、ブドウが悲惨な状態になっているからだ。2011年は夏の雨期にベト病が蔓延、2012年は全域における雹害、2013年は初夏における数回の雨と雹、2014年は6月の集中的な雹害、2015年は雷雨・病害こそないものの水不足で収量激減、そして2016年は春の霜害……列記するだけでも無慈悲な天候が続いてきたのだ。
三つのアペラシオン(ボーヌ、ポマール、ヴォルネイ)に特級畑がないのは、土壌の質が悪いわけでも、情熱的な生産者がいないわけでもない。天災の被害を受け易い立地条件にあることが問題なのだ。今年は、本当に今年こそは、彼らにとって天使の微笑んだヴィンテージとなった。どこの畑へ行っても病気はなく、大ぶりのブドウの房がたわわと実っている。あるポマールの生産者の「5年間も天災に苦しんだんだから、今年こそは収穫を楽しまなくちゃ」という言葉から、お祝いムードの気持ちが伝わってくる。
モンラッシェも豊作である。去年、春霜の大被害を受けた生産者にとって待望の年となるだろう。心なしか、いつもより強めに剪定をしているように見える。特に、南側の造り手は、昨年は生産を諦めなければいけないほどの被害を受けたので、一つの樹についている房の量は、平均よりも1.5倍ほどあるように感じた。そのためかどうかわからないが、ブドウの熟度はイマイチであった。居合わせたある生産者によると、「今年はモンラッシェをいつ収穫すべきか非常に迷っている。糖度はあってもフェノール分がまだ熟していない。雨不足が原因なんだ。だからといって収穫期に雨が降って水分が増すのも困る。先週のうちに雨が降っていてくれれば完璧だったのに」
この会話の2日後と5日後、コート・ドールで雨が降った。この生産者にとって、その雨は吉と出たのか凶とでたのか。
ブドウの状態だけで、すべてを推し量るのは無意味なことだが、ここ7年間、収穫量が減っていたブルゴーニュに、光が戻ってきた。
収穫直前になると、必ずブルゴーニュを回る。今年で10年目になる。この10年間は、生産者にとって試練の時期だった。1980から2000年代は、豊作が続いたが、それは恒常的なものではなく、小康状態にすぎなかった。2011年から6年間、雹害、霜害、病原菌、干ばつ、ウィルスなど、毎年のように災難に襲われ、ブドウ収穫量の低下は甚だしい。
2017年の春は、寒いのかと思えば、突然暑くなり、また寒くなるという気温の変化が激しかったが、ブドウの成長は早かった。4月末にフランス中を寒波がおおった時、生産者たちはよく防寒に努め、これに対抗した(シャブリとクリュニーでは少なからず被害はあったが)。6月第一週目に早くも開花が始まり、その折の天候は完璧で、ブドウの花の結合は速やかに進んだ。2003年、2007年、そして2011年に似た速さで、今年の収穫はとても早くなると予想された。
7月のフランス農務省の発表によると、フランス全体の収穫量は1945年以来の過去最低の見通しとなったが、ブルゴーニュ地方だけが収穫量アップを記録すると報じられた。前年の12%アップの見通しで、ここ5年間のうちでも7%アップである。それは、ようやく平年並みの収量に戻ったことを意味する。フランス中の生産者たちが悲鳴を上げる中で、ブルゴーニュは運が良かった。
8月27日、パリから車を走らせ約3時間、最初の村のジュヴレ・シャンベルタンに入った。特級畑リュショット・シャンベルタンのすぐ横の、一級畑フォントニィまで来ると、村中の畑が一望できる。フォントニィは軽やかで、キビキビした酸味のある上品な味わいのワインを生む一級畑で、私の最もお気に入りの畑の一つである。見るからに凝縮し、とても良い状態のブドウが見てとれる。去年は、この畑のブドウはかなり酸っぱくて、糖度が伸びあぐねたが、今年のブドウはジューシーで甘い。2013、2010年のような小粒揃いの甘さではなく、2009年や2015年のような、みずみずしくも熟度の高い、素晴らしいヴィンテージだ。もう収穫しても良いと思った。
ジュヴレ・シャンベルタンからニュイ・サン・ジョルジュまで、コート・ド・ニュイの畑は、一概に素晴らしい状態であった。糖度、酸度、タンニンすべてにおいて申し分ない。局地的な雹の被害や、ベト病の被害があるものの、ブドウは甘く、とても凝縮している。最高のピノ・ノワールが生まれそうな予感がする。
コート・ド・ボーヌの畑はここ数年、収穫量が激減してきた。毎年、この産地を訪れるのが正直、怖くなっていた。かなりの頻度で、ブドウが悲惨な状態になっているからだ。2011年は夏の雨期にベト病が蔓延、2012年は全域における雹害、2013年は初夏における数回の雨と雹、2014年は6月の集中的な雹害、2015年は雷雨・病害こそないものの水不足で収量激減、そして2016年は春の霜害……列記するだけでも無慈悲な天候が続いてきたのだ。
三つのアペラシオン(ボーヌ、ポマール、ヴォルネイ)に特級畑がないのは、土壌の質が悪いわけでも、情熱的な生産者がいないわけでもない。天災の被害を受け易い立地条件にあることが問題なのだ。今年は、本当に今年こそは、彼らにとって天使の微笑んだヴィンテージとなった。どこの畑へ行っても病気はなく、大ぶりのブドウの房がたわわと実っている。あるポマールの生産者の「5年間も天災に苦しんだんだから、今年こそは収穫を楽しまなくちゃ」という言葉から、お祝いムードの気持ちが伝わってくる。
モンラッシェも豊作である。去年、春霜の大被害を受けた生産者にとって待望の年となるだろう。心なしか、いつもより強めに剪定をしているように見える。特に、南側の造り手は、昨年は生産を諦めなければいけないほどの被害を受けたので、一つの樹についている房の量は、平均よりも1.5倍ほどあるように感じた。そのためかどうかわからないが、ブドウの熟度はイマイチであった。居合わせたある生産者によると、「今年はモンラッシェをいつ収穫すべきか非常に迷っている。糖度はあってもフェノール分がまだ熟していない。雨不足が原因なんだ。だからといって収穫期に雨が降って水分が増すのも困る。先週のうちに雨が降っていてくれれば完璧だったのに」
この会話の2日後と5日後、コート・ドールで雨が降った。この生産者にとって、その雨は吉と出たのか凶とでたのか。
ブドウの状態だけで、すべてを推し量るのは無意味なことだが、ここ7年間、収穫量が減っていたブルゴーニュに、光が戻ってきた。
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