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シチリアの太陽と地中海の風、魚に合うC.O.S.のフラッパート

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 シチリアのワインは面白い。土着品種もさることながら、生魚に合う。地中海最大の島の人々は魚食いだ。赤ワインでも、小肌やイワシに寄り添ってくれる。現地のトラットリアでも、新鮮な白身魚のマリネを赤ワインで楽しんでいた。 
 シチリアの品種と言えば、ネロ・ダヴォラ、ネレッロ・マスカーレゼに光が当たっているが、私が好きなのはフラッパートである。ガメイのように、フレッシュ感と小さな赤い果実の香りがある。可愛らしいワインに仕上がる。シチリア唯一のDOCGチェラスオーロ・ディ・ヴィットリアに、ネロ・ダヴォラとブレンドして使われるが、単独品種も味わい深い。
 島の南東部ラグーザ県に本拠を構えるC.O.S.(コス)のものなら外れがない。ワイナリーの名前は、設立者3人の頭文字をとった。ジャンバティスタ・チリア、ジュスト・オッキピンティ、チリノ・ストラノという3人の若者が1980年に集まり、プロジェクトを始めた。現在はチリアとオッキピンティの2人になった。バイオダイナミックスで醸造し、亜硫酸の使用を抑えている。新樽で醸造していたが、コンクリートタンクや古樽も試し、2000年からは粘土製のアンフォラ(テラコッタ)を地中に植えて醸造している。
 はるか北にあるフリウリのグラヴナーがアンフォラに取り組み始めたのが1990年代半ば。それほど時期は遅れていない。シチリアのアンフォラの先駆者である。シチリア南西部のアグリジェント県では最近、紀元前4000年にワインが造られていたことを示す壺が見つかったばかり。シチリアは古代から、多彩な文明が行きかう要衝だった。コスのワイン造りは、ルーツをさかのぼる取り組みとも言える。
 「コス フラッパート 2015」(C.O.S. Frappato 2015)は野イチゴ、もぎたてのブラッドオレンジ、生アーモンド、シルキーなタンニン、ジューシーでかろやかな飲み口だが、グリップはある。アーシーなフィニッシュは伸びやか。シチリアとは思えない冷涼感があり、心躍るチャーミングな赤。実売3000円。89点。
 コスのフラッグシップはチェラスオーロ・ディ・ヴィットリアだが、今回はヴィットリア・ロッソのピトス・ロッソを開けた。ピトスは古代ギリシャ語で壺を意味する。コスは100以上のアンフォラを所有する。
 「コス ピトス・ロッソ ヴィットリア・ロッソ 2014」(C.O.S. Pithos Rosso Vittoria Rosso 2014)はネロ・ダヴォラ60%、フラッパート40%。ネロ・ダヴォラが骨組みと力強さ、フラッパートがアロマと軽やかさをもたらしている。ザクロ、ダークチェリー、火山岩を感じさせるミネラル感、高めの酸があり、チョコレートのアロマ、テクスチャーはしなやかで、ジューシーな味わい。フィニッシュはスモーキーで、赤系スパイスのヒント。アンフォラで造るワインに共通するなめらかなタッチとナチュラルな果実味が心地よい。シチリアの太陽と地中海の風を感じる。アルコール度は12.5%。実売3500円。90点。
 いずれもフレッシュ感と純粋さがある。自然派ワインの愛好家なら好きにならずにいられない。3000円前後でこんなに楽しめて、生魚と合う赤ワインはちょっとない。コスの数多いワインを飲んで失望したことがない。
 輸入元はテラヴェール。

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