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コラヴァンが日本上陸、高価なワインがグラスで楽しめる

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 特殊なニードルで瓶内に窒素ガスを注入し、ワインを酸化させることなく、長期間楽しめる「コラヴァン」が、ついに日本に上陸した。欧米では有名レストランやワイナリーの多くが採用している。レストランやワインショップが高価なワインをバイ・ザ・グラスでサービスしたり、愛好家が古いヴィンテージを少量ずつ楽しむなど、従来とは異なるワインの楽しみ方を可能にする便利な器具だ。
 コラヴァンを開発したのは、マサチューセッツ工科大学出身の物理学者グレッグ・ランブレヒト。核融合炉の設計や、生体工学エンジニアとして人工関節の開発などを行ってきた。夫婦で週末にワインを楽しむ愛好家だったが、好きなワインを少しだけグラスで飲みたいという思いから、コルクを開けずにワインを注ぐというアイデアを思いついた。それが1998年12月のこと。安定性と利便性を求めて実験を繰り返し、2005年に特許を取得。コラヴァンで保存するワインと開けたてのワインのブラインドテイスティングを積み重ね、2011年にコラヴァン社を設立。2013年に最初の製品「コラヴァン 1000システム」を売り出した。
 コラヴァンはほぼ片手で操作できる小型の器具。高さは21センチ、重さは445グラム。ボトルをはさみこみ、カプセルの上から特殊なニードルをコルクに差し、瓶内に窒素ガスを注入する。その状態で、ニードルを通して内部のワインをグラスに注ぐ。コルクに開けた穴は自然に閉じ、窒素ガスの詰まった瓶内のワインは酸素に触れることなく、長期保存が可能になる。オリジナル製品は窒素ガスではなく、アルゴンガスを使っていた。日本の法律では食品添加物として認められていないため、同じ製品を発売できず、窒素ガスで代替する製品を開発した。
 「開発過程で、注入する不活性ガスとして、アルゴン、窒素、ヘリウム、二酸化炭素を実験した。空気よりも重いアルゴンガスが最も効果的なので、欧米などで既に発売したオリジナル製品に採用した。日本ではアルゴンガスが使用できないため、窒素ガスを使用している。効果は変わらない」と、来日したグレッグは説明する。
 米国で始めた製品だが、短期間でワイン文化の歴史が長いヨーロッパにも広まった。英国ではデカンター誌、ドリンクス・ビジネス、評論家ジャンシス・ロビンソンMWらが製品を紹介してきた。日本は50番目の国。2017年中に53か国まで拡大する予定。グレッグによると、2017年の世界のベストレストラン50でトップになったニューヨークの「イレブン・マディソン・パーク」、3つ星の「ベルナルディン」、英国の「ファット・ダック」、パリの「タイユヴァン」など有名レストランで使われている。ファット・ダックでは、ロマネ・コンティなど高価なワインをコラヴァンで、バイ・ザ・グラスで供しているという。
 また、フランスやカリフォルニアのワイナリーにも広まっている。カリフォルニアの多くのセラードアでは、古めのライブラリーワインをこれでグラス売りする例が見られる。オーパスワン、イングルヌック、ジョセフ・フェルプス、ロバート・モンダヴィなどは購入して、使用しており、ハーラン、ダナ、キスラーなども使用している。
 グレッグは「フランスはやや保守的だが、ボルドーのオー・バイィが真っ先に採用してくれた。ラトゥールやマルゴー、ブルゴーニュのルーロ、ルフレーヴ、ボノー・デュ・マルトレらもユーザー。マルトレでは、1992年を試飲する際に使用していた」と語った。
 日本料理「乃木坂 しん」(東京・赤坂)に15日、グレッグの好きな「ブリュンドルマイヤー グリューナー・ヴェルトリーナー 2012」と「マルキ・ダンジェルヴィーユ ヴォルネイ・フレミエ 2012」を持ちこんで、コラヴァンで保存したボトルと、開けたてのボトルをブラインド試飲した。グリューナー・ヴェルトリーナーは3月3日、ヴォルネイ・フレミエは3月16日に、香港でコラヴァンのガスを注入して保存していた。香港のセラーで保存し、スーツケースに入れて日本に持ち込んだ。試飲の結果、違いがわからなかった。フレッシュ感が保たれている。14日に国内トップソムリエが試飲した際も、わかる人間はいなかったそうだ。
 「これまでも、マスター・オブ・ワインやマスター・ソムリエがブラインド試飲しているが、コラヴァンで保存しているかどうかをすべてあてた人間はいない。日本ではレストランのバイ・ザ・グラスやワインショップの試飲コーナーだけではなく、家庭でも楽しんでほしい。米国では、高価なワインだけでなく、20ドル程度のデイリーワインのサービスに使うレストランもある。これまでの経験で、1年間は問題なく保存できる」と。
 純度99%の窒素ガスを詰めたコラヴァンカプセルを交換して使用する。ニードルは、内部直径の異なる3タイプがある。バクテリアの繁殖を防ぐため、ニードルを洗うのが重要という。
 ブラックの「コラヴァン モデル2」が6万5000円、ワインボトル2、3本分の抽出が可能なカプセルが2本セットで3000円、ニードルが3本入りで1万6000円。
 問い合わせはシナジートレーディング(フリーコール0800-888-4449と06-6233-3066)。
高さは21センチ
カプセルの上からニードルを刺す
ニードルからワインを注ぐ
ブラインドテイスティングに使ったワイン。いずれも2012
チェアマンのグレッグ・ランブレヒト(左)とプレジデント&CEOのフレデリック・レヴィ
ナパヴァレーのフリーマークアビーのセラードアでも使用

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