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ピンキオーリ限定、隠れスーパータスカンのピアントナイア

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 一般には流通していないキュヴェが、名門ワイナリーにはときおり存在する。

 オーパスワンでのみ直売するセカンドワインのオーヴァーチャー、DRCが自家消費用に生産するバタール・モンラッシェ、そして、ポッジョ・スカレッティがメルローで造るピアントナイアもその一つに入れていいだろう。

 このピアントナイア。フィレンツェの3つ星「エノテカ・ピンキオーリ」と系列店でしか飲めない。ジョルジオ・ピンキオーリが、ポッジョ・スカレッティのヴィットリオ・フィオーレに特別に詰めてもらっているワインだ。その量は1000本とも数千本とも言われる。

 シェフのアニー・フェオルデに、かつて、エノテカ・ピンキオーリ銀座店でインタビューした際に、お土産としていただいた。6、7年寝かせていたが、日本一のワイン本翻訳家のTさんと飲むことになって、ワインバーで開けた。こういうレアものは、価値のわかる人間と飲まないともったいない。

 事前に調べたら、1999年はデビューヴィンテージだった。新樽100%熟成とある。ビッグワインだったら嫌だなと思ったが、醸造コンサルタントとして活躍するフィオーレのワインには杞憂だった。

 間違いなくメルローだが、ポムロールでもボルゲリでもない。グレーヴェ・イン・キアンティの冷涼な気候で、おそらくガレストロ土壌から生まれたに違いない。果実は熟していて、血のついた生肉やすりぶつした黒オリーブの香り。甘いチョコレート的な方向ではなく、繊細な美しさを秘めている。

 「ここ数年で飲んだ最高のメルロー」というのは、Tさんのお世辞ではなく、私も同感だった。

 トマトクリームソースのパスタ、鴨肉のロティとよかった。さすがはイタリアンに詳しいソムリエのMさん。

 フィオーレがサンジョヴェーゼ100%のイル・カルボナイオーネの補助品種として植えたのだろうか。そこに目をつけたピンキオーリはさすがだ。イタリアでは、トップ同士の友情から始まるプロジェクトが多い。

 好みでいえば、カステッロ・ディ・アマのラッパリータや、オルネライアのマッセートよりも上だ。冷涼な気候と細部のチューニングが、サンジョヴェーゼとキアンティの土地を知り尽くしたフィオーレならでは。イタリアのリストランテは、仲良くなると、メニューにない特別料理が次々と出てくる。ワインもその例外ではないようだ。

(2013年9月 銀座「ミュール」で)
ポデーレ・ポッジョ・スカレッティ ピアントナイア 1999
エノテカ・ピンキオーリでいただきもの
一生に一度は飲みたい度:92点

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