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鷹狩りとアグロフォレストリー、再生型有機農法のワインはおいしいのか(カーネロスのラムズ・ゲート)

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 時代の変化は早い。ドメーヌ・ルロワが1988年に設立された当時、ラルー・ビーズ・ルロワが導入したビオディナミはカルトな農法として、まともに取り扱われなかった。21世紀に入るとそれは偏見になった。ビオディナミは高品質な目印と見なされている。


 気候変動や栽培技術の進化を受けて、サステナブル・ヴィティカルチャー(持続可能なブドウ栽培)やジェネラティブ・ヴィティカルチャー(再生型ブドウ栽培)も、時間と共に定着していくだろう。


 アグロフォレストリーも近くそうなる。ボルドーのシュヴァル・ブランラフィット・ロートシルトらがトライし、シャンパーニュでも広がっている。カリフォルニアでもフォローするワイナリーが出てきた。さらに広がるのは間違いない。一足先に理解しておこう。


ブドウ畑に果樹や灌木を植えるアグロフォレストリー


 アグロフォレストリーはブドウ畑の中に果樹や灌木を植えて生態系の回廊を作り、生物多様性を回復しようとするもの。先進的な産地が効率重視のワイン造りを進めて、ブドウ栽培に集中してきた結果、ポリカルチャーからモノカルチャーに変質してきた。


 ブルゴーニュの畑を歩くとわかる。トラクターの作業に邪魔な桃の木は切り倒され、果樹はブドウ樹に植え替えられた。整然としていて美しいが、人工的にも見える。高価な畑を有効活用するのは当たり前だが、生態系のバランスが崩れた。病害や品質の低下が進んだ。


 失われた無駄な空間や植物、生き物をよみがえらせ、健全なエコシステムを取り戻そうという発想がアグロフォレストリーの根底にある。


 ソノマのカーネロスにあるラムズ・ゲート(Ram's Gate)は、アグロフォレストリーをいち早く取り入れた。オーナーはジェフ・オニール。2004年にパソ・ロブレスでオニール・ヴィントナーズ・アンド・ディスティラーズ(O'Neill Vintners & Distillers)を創業し、2011年にソノマ・カーネロスにラムズ・ゲートを設立した。Kryss Speegle MWがオニールの上級副社長を務める。


 2025年3月から、ボルドーのシャトーを手本に、在来種のリンゴ、ナシ、サクランボ、マルメロ、プラム、桃など40種を超す果樹を植え始めた。ヘクタールあたり50本の果樹を混植している。ブドウ畑の微気候を調整・保護し、気候変動からブドウ樹を守る狙いがある。


 ここには鷹匠が存在し、ネズミやウサギを狩る鷹狩りも行っている。フクロウの巣箱も設置している。ガーギッチ・ヒルズが取得している再生型有機農法(Regenerative Organic Agriculture=ROC)の認証も2025年10月に取得した。世界で25番目だった。


 再生型有機農法は有機認証が前提だ。アグロフォレストリーと同じく、被覆作物や鳥の巣箱の設置を通じて生物多様性を高めている。温室効果ガスの排出削減や職場環境の改善も認証の要件となっている。


純粋さとテクスチャーが上回るリジェネラティブ・オーガニック・ヴィティカルチャー


 とはいえ、重要なのは味わいだ。栽培手法の違いで味わいがどれだけ変わるのか。2024年にROCの認証を先行して取得したオニール・ヴィントナーズのロバート・ホール・ワイナリーの慣行農法とROCの「カベルネ・ソーヴィニヨン パソ・ロブレス」のワインを比較試飲した。


 最初は2022年から。慣行農法のキュヴェはジャミーで厳格さを残している。タンニンが硬くてややラフ。リジェネラティブのキュヴェはタンニンがしなやかでパウダリー。果実ときれいに統合されて、バランスがとれている。余韻はフレッシュで長い。


 2024年は違いがより際立っていた。慣行農法はグリップがあり力強いものの、タンニンはやや乾いている。認証を取得したリジェネラティブのキュヴェは純粋でジューシー、サテンのテクスチャーはシームレスで洗練されている。強いエキスが重層的で、包み込むような深みがある。


 計測データによると、ROCは土壌の保水性が高く、微生物の活動が活発で二酸化炭素排出量が低い。ワインからもなめらかなテクスチャーとフレッシュ感がくっきりと浮かび上がった。

ネズミやうさぎを狩る鷹匠
ヘクタールあたり50本の果樹を混植
オニール・ヴィントナーズのジェフ・オニールCEOがラムズ・ゲートの広大な畑で
慣行農法(左)とリジェネラティブ・オーガニックの畑
オニール・ヴィントナーズの上級副社長を務めるKryss Speegle MW(左)

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