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北限で造られるビオディナミ・シャンパーニュ、透明感に包まれるフランシス・ブラール

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 シャンパーニュの北限マッシフ・ド・サンティエリー(Massif de Saint-Thierry)に本拠を置くフランシス・ブラールの輸入元が変わり、日本で復活した。めでたい。2017年にビオディヴァンからビオディナミの認証を得た家族ドメーヌ。2018年に訪問して以来、透明感あふれる味わいに魅了されてきた。


 マッシフ・ド・サンティエリー(サンティエリー山塊)はランスの北西に広がる地区で主に珪質石灰岩土壌。シャルトーニュ・タイエのいるメルフィも含まれる。コルミシー(Cormicy)村がシャンパーニュを造れる北限で、フランシス・ブラールはその南のコーロワ・レ・エルモンヴィル(Cauroy-les-Hermonville)に拠点を置く。その南に隣接するのがミニエール F&Rのあるエルモンヴィル村だ。


ランス北西のマッシフ・ド・サンティエリー
早い時期からビオディナミを実践


 プティット・モンダーニュ・ド・ランスと呼ばれることもあるが、グランド・モンターニュが主に石灰質粘土の上に深い白亜層が重なっているのに対し、サン・ティエリーの表土は粘土、砂、砂岩など多彩な層からなる。この地域のワインのスタイルは多様で、ムニエが最も重要な品種だ。

 
 当主デルフィーヌ・ブラール(Delphine Boulard)は2009年、父フランシスと共にフランシス・ブラール・エ・フィーユ(Francis Boulard & Fille)を設立した。フランシスはその前は兄弟姉妹と共に、レイモン・ブラールを経営し、栽培醸造責任者を務めていた。


 農薬を使ったブドウ栽培が普及し始めた1970年代初頭、フランシスも化学肥料、殺虫剤、除草剤を使い始めた。1990年代後半、化学物質が畑とワインに悪影響を与えることに気づいて、ビオディナミにトライした。ビオディナミの区画と従来の畑から造ったワインを比較したら、表現力の違いは明らかだった。


 彼はビオディナミの転換を提案したが、激しい抵抗にあった。3haの畑を自分のものにして、たもとを分かった。ヘリコプターの農薬散布に規制がなかった時代の話だ。2010年代初頭にようやく、有機栽培の畑から120m以内でヘリコプターが農薬を散布するのを禁じる法律が可決された。


 9年間、父と一緒に働いていた娘のデルフィーヌもドメーヌの設立に加わった。彼女は大学でインテリアデザインを専攻していたが退屈していた。ブドウ栽培や醸造学にコースを変えて、経営管理も学んだ。フランシスは2017年に引退し、デルフィーヌが継承した。


 ドメーヌのある村はランスから約20分。森が多くシャンパーニュらしからぬ風景が続く。2009年にAB/EUROFEUILLEによる有機認証を取得した。栽培面積は3.4ha。コルミシー、ヴァレ・ド・ラ・マルヌのパラディ、モンターニュ・ド・ランスのマイィ・シャンパーニュにも畑を所有している。


 畑の3分の2はマッサール・セレクション(集団選抜)したブドウを植えている。剪定は短い。完熟したブドウを摘んで、キュヴェ(一番搾り)を中古の300Lのオーク樽やドゥミ・ミュイなどで発酵させる。SO2は最小限。ドザージュはほとんどしない。


丸い酸がありたおやかなバランス


 5つのキュヴェを試飲した。すべてがブリュット・ナチュール。妥協がない。厳しい酸ではなく、丸みがあり調和している。


 「フランシス・ブラール レ・ミュルジェ ブリュット・ナチュール」(Francis Boulard Les Murgiers Brut Nature)はムニエ60%、ピノ・ノワール28%、シャルドネ12%。2022ベース。ムニエはマルヌの6区画から。レモン、洋ナシ、クルミ、ジンジャー、純粋ではつらつとしている。キレのいい酸、明るい果実味、丸みがあり、洗練されている。ミュルジュはかつてムニエ100%だったが、ブレンドにしてバランスが増した。1万3000円。92点。


 「フランシス・ブラール レ・ヴェイユ・ヴィーニュ ブラン・ド・ブラン ブリュット・ナチュール」(Francis Boulard Les Vieilles Vignes Blanc de Blancs Brut Nature)は2021ベース。純粋でクリーン、軽やかで繊細、引き締まっている。白い花、熟したレモンの皮、オレンジの花、濡れた石、ブリュット・ナチュールとは思えない丸みと骨格がある。刺激的で美しい輪郭に縁取られている。1万6500円。93点。


 「フランシス・ブラール マイィ グラン・クリュ ブリュット・ナチュール」(Francis Boulard Mailly Grand Cru Brut Nature)はピノ・ノワール75%、シャルドネ25%。2022ベース。収穫後すぐにブレンドしている。クランベリー、オレンジの皮、フレッシュなハーブ、フローラルで、マイィの力強さと繊細さが鮮やかな酸と調和している。クリーミーなムース、シームレスなテクスチャー、深みのある余韻。1万6500円。92点。


 「フランシス・ブラール ル・ミュルテ プティット・モンターニュ ブリュット・ナチュール」(Francis Boulard Le Murtet Petite Montagne Brut Nature)はピノ・ノワール60%、シャルドネ40%。1965年に植えた珪質石灰質土壌のコルミシーの単一畑ル・ミュルテから。熟した桃、柑橘、ブリオッシュ、純粋でまろやか、清涼感のある酸、きめ細かいムース。ブラン・ド・ブランより厚みがあり、しっかりしたテクスチャー。まろやかで、塩気を帯びた余韻が長い。1万6500円。92点。


 「フランシス・ブラール レ・ラシェ ブリュット・ナチュール」(Francis Boulard Les Rachais Brut Nature)は2016のシャルドネ100%。1967年に植えた0.5haの南向き区画から。柔らかい口当たり、アプリコット、白桃、カキ殻、ふくよかで生き生きしている。優しくてエレガント、焦点が合っていて、緊張感が走っている。ヨードのタッチがあり長い余韻が続く。素晴らしい。2万3000円。94点。


 ビオディナミのナチュラル・シャンパーニュの中ではすっきりしたバランスがあり、値段も比較的お手頃。ミニエール同様に、知名度の低いテロワールでも美しいシャンパーニュが造れることを示している。


 輸入元はヴァンクロス。
 

Facebook@Champagne Francis Boulard & Fille
レ・ラシャの畑でデルフィーヌ・ブラール
表土は砂や粘土
古樽で醸造 Facebook@Champagne Francis Boulard & Fille
マッシフ・ド・サンティエリーの地図

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