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アキコさんの感性引き継ぐ新醸造家発表、デリケートでうまみ豊かなフリーマンのピノ・ノワール

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 米国の公式な晩さん会や午さん会で供されたワインで知られる日本人ワインメーカーのアキコ・フリーマンさんが来日し、夫のケン・フリーマンさんと共同経営する「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー」の後任のワインメーカーを発表した。


 アキコさんは美術館のキュレーターを目指して留学したニューヨークでケンと出会い、2001年にソノマのグリーン・ヴァレーにワイナリーを設立した。ワインメーカーに迎えたエド・カーツマンの下で働きながらワイン造りを覚えて、独学でワインを造るようになった。カリフォルニアで数少ない日本人女性の醸造家。生産者団体「ウエスト・ソノマ・コースト・ヴィントナーズ」に加盟している。


 彼女はブルゴーニュのドメーヌ・デュジャクの愛好家。従来のカリフォルニアのワイナリーとは一線を画す、控えめな新樽と酸味を生かした優雅な味わいのシャルドネやピノ・ノワールが人気を集めている。


米国のステート・ディナーで注がれる


 2015年4月、オバマ大統領が安倍晋三首相を招待したホワイトハウスのステート・ディナーで、冷涼な気候を生かした名前通りの「涼風シャルドネ 2013」が供されて注目を集めた。


 当時のホワイトハウスのワインディレクター、ダニエル・シャンクスから電話がかかってきて、ワインを送ったら採用された。日本人ワインメーカーのワインが採用されたのは初めて。ホワイトハウスの数少ない公式晩餐会では国賓のお国柄が重視される。和食との相性も良かった。ゼロからワインを造り始めて、アメリカン・ドリームを実現した。


 2024年4月、カマラ・ハリス副大統領とブリンケン国務長官が国務省で主催した昼食会でも、スパークリングワイン「ユーキ・エステトート ブラン・ド・ブラン 2019」「涼風シャルドネ 2022」「アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール 2021」が供された。


 グリーン・ヴァレー、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、オクシデンタルなど、太平洋の影響を受ける冷涼なウエスト・ソノマ・コーストに畑が広がる。グロリア・エステート、ユーキ・エステートに加えて3番目の畑を購入したばかり。それを合わせると自社畑比率は95%に達する。農家のブドウ調達が一般的なカリフォルニアで、ドメーヌ的にワインを造っている。


新ワインメーカーは長沢鼎の子孫


 彼女の後を継ぐワインメーカーは赤星映司ダニエルさん。ブラジル・サンパウロに生まれて南米で育った。カリフォルニア州立大学フレズノ校で醸造学の修士号を取得した。ナパのペジュやロンバウアーでワイン造りをしていた。カリフォルニアでワイン王として名声を築いた薩摩藩士の長沢鼎の子孫という縁で、日本人の血脈がつながっている。


 アキコさんが還暦を過ぎて後任のワインメーカーを探しているという噂を聞いて手を挙げた。既に2年間、一緒にワインを造っている。彼女の哲学と感覚に近いという。複数の醸造家がブレンドしたワインをスタッフがブラインド・テイスティングで選んで仕込む「アキコズ・キュヴェ」で、彼のワインはアキコさんのワインをしのぐ最も高い支持を集めた。アキコさんは「うれしくてほっとした。この先任せて大丈夫だと」と明かす。


 赤星さんもピノ・ノワールの愛好家。13年前のホーム・パーティで飲んだフリーマンのワインに「鳥肌がたった」という。それがワインメーカーに立候補した動機にもなっている。オーナー兼醸造家のアキコさんはディレクター・オブ・ワインメイキングに就任する。


 代表的なワインを試飲した。


 スパークリングワイン「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー ユーキ・エステート  ブラン・ド・ブラン ウエスト・ソノマ・コースト 2020」(Freeman Vineyard & Winery Yu-ki Estate Blanc de Blancs West Sonoma Coast 2020)は2019年が初リリース。冷涼なオクシデンタル(Occidental)の自社畑のシャルドネ100%。ほのかにヴァニラ、レモン、柑橘、潮の飛沫、引き締まったリニアなテクスチャー、純粋ではつらつとしている。10か月間の樽熟成。瓶熟成とリドリング(動瓶)は自前で行っている。熟成期間を伸ばせば複雑さが増すだろう。フルマロ。ブリュット・ナチュール。1万2500円。88点。


 「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー 涼風 シャルドネ グリーン・ヴァレー・オブ・ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2022」(Freeman Vineyard & Winery Ryo-fu Chardonnay Green Valley of Russian River Valley 2022)はフローラルで、青りんご、白い果実、柔らかい口当たり、生き生きしていて、テクスチャーはクリーミィ。デリケートで、冷涼感が心地よい緊張感を与えている。塩気を帯びた後味。太平洋からの風が吹き込むハインツ・ランチとダットン・ランチのブドウを使用。8800円。90点。


 「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー エステート「輝」ピノ・ノワール グリーン・ヴァレー・オブ・ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2019」(Freeman Vineyard & Winery Estate Pinot Noir Green Valley of Russian River Valley 2019)はワイナリーに隣接する自社畑。レッドチェリー、ブラッドオレンジ、洗練されたタンニン、ジューシーな酸、たおやかで調和している。うまみを帯びている。1万円。89点。


 「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー ユーキ・エステート ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2019」(Freeman Vineyard & Winery Yu-ki Estate Pinot Noir Sonoma Coast 2019)はスモーキーで、ダークラズベリー、ワイルドベリー、こなれたタンニン、ほどよい構造のあるミディアムボディ。下草、セージ、食欲の増す塩味を帯びた余韻。1万1500円。90点。

 
 「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ウエスト・ソノマ・コースト 2021」(Freeman Vineyard & Winery Akiko's Cuvee Pinot Noir West Sonoma Coast 2021)はユーキ、グロリア、プラットのブレンド。レッドチェリー、ブルーベリー、ヨード、純粋で鮮やか。上質なタンニン、噛めるような果実味、清々しいフレッシュ感がある。エキスが豊かで出汁的なうまみ、包み込むような広がりがある。たおやかで、控えめなフィネスを秘めている。長期熟成が期待できる。1万4000円。91点。


 ピノ・ノワールはすべて除梗されている。冷涼なテロワールを穏やかな抽出で上品に表現している。アキコさんの好きなデュジャックのデリケートなタッチを感じさせる。


 輸入元はWINE TO STYLE。
 

アキコ・フリーマンさんと赤星映司ダニエルさん
グリーン・ヴァレーに本拠を置く
畑の地下を掘ったケーブ
自宅リビングで
若かりしアキコさんとケン

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