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シャトー・メルシャンの椀子ヴィンヤードを立ち上げて世界に冠たるワイナリーに育てた、シャトー・メルシャンの第6代ゼネラル・マネジャー(工場長)の斎藤浩の著書『ヴィニュロンの流儀』が刊行された。
国内のワイナリー数が400軒を超えるブームの中で、新たな生産者たちには栽培・醸造の教科書となるだけでなく、日本ワインを深く掘り下げたい愛好家にはヴィニュロン(栽培家)の心意気を伝える読み物となっている。
副題は「ボルドーと椀子ヴィンヤード ワインのブドウ畑から私が伝えたいこと」となっている。世界の栽培と醸造を扱った本は、醸造学校や実務的な専門書である程度学んだ人を対象にしたものが多い。ややハードルが高いが、著者は一般向けのセミナーなどもこなしてきただけあって、表現が平易でわかりやすい。実際の体験から発した言葉に説得力がある。
「剪定」や「土壌」や「除葉」など、よく目にする言葉についても、背景とその意味合いを書き込んでいる。表面的に理解しているつもりでも、専門家に見えている世界は広く深いことを思い知らされる。
著者は1980年代から1990年代にかけて、UCデイヴィス校に留学し、ボルドーのシャトー・レイノンにも駐在した。当時の最新の技術や思想をシャトー・メルシャンに持ち帰り、それは日本ワイン発展の原動力になった。
蓄積された経験や経営能力が、2000年に入って、土地探しから始めた長野の椀子ヴィンヤードのプロジェクトの成功と結びついている。これからワイン造りをしようと志している栽培醸造家の参考になるだろう。
椀子ヴィンヤードは「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード・アワーズ 2020」で、歴史的なワイナリーに混じって30位に選ばれ、日本ワインの転換点を刻んだ。プロジェクトを推進したリーダーの本著は、日本ワイン史の重要な断面を描いている。
発行元はイカロス出版。2400円(税抜き)
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