衛星アペラシオンからスーパー・メルロ、ル・プリュ・ド・ラ・フルール・ド・ブアール

　ボルドー2015のプリムール試飲会で、印象的だったのは右岸の衛星アペラシオンの品質向上だった。中でも、ポムロールに隣接するラランド・ド・ポムロールはお買い得の宝庫だった。この地の名を上げたのが、サンテミリオンのアンジェリュスを所有するド・ブアール家のラ・フルール・ド・ブアールだ。

　元々はラ・フルール・サンジョルジュという名だったが、アンジェリュスのユベール・ド・ブアールが1998年に購入して、名前を変えた。2014年から娘のコラリーが運営している。プリムールから帰国直後に来日した彼女と垂直試飲する機会に恵まれた。
　プラトーにある33ヘクタールの畑の栽培比率は、メルロ80％、カベルネ・フラン15％、カベルネ・ソーヴィニヨン5％。砂と粘土に砂利が混じる。ここで有名なのは、逆円錐形で、宙に浮かんだUFOと呼ばれるステンレス発酵槽。横を広く、縦を短くすることで、果帽と果汁の接触を増やし、繊細なタンニンを抽出する狙いだ。

　「シャトー・ラ・フルール・ド・ブアール」の2010、2012と、トップキュヴェ「ル・プリュ・ド・ラ・フルール・ド・ブアール」の2005、2012を試飲した。
　「シャトー・ラ・フルール・ド・ブアール　2010」は、ダークベリー、甘草、鉛筆の芯、凝縮していて、タンニンはきめ細かい。2010のすごさが詰まった、巨大にそびえるワイン。「シャトー・ラ・フルール・ド・ブアール　2012」は驚くことに、2010にひけをとらない。タンニンの抽出が驚くほどなめらかで、よい酸があり、ワインとしての完成度が高まっている。ブレンドはいずれもメルロ80％、カベルネ・フラン15％、カベルネ・ソーヴィニヨン5％。
　「ル・プリュ・ド・ラ・フルール・ド・ブアール　2005」はメルロ100％。ル・パンやサンテミリオンのガレージワインに匹敵するスーパー・メルロだ。凝縮度はすさまじく、ブラックチェリー、エスプレッソの香り。テクスチャーはまろやかで、柔らかく、メルロの醍醐味が詰まっている。「ル・プリュ・ド・ラ・フルール・ド・ブアール　2012」もこれに負けない。ブラックベリー、コーヒー、カキの殻の香りがあり、凝縮度は劣るものの、タンニンのなめらかさは上回る。きわめてフレッシュ。醸造の進化がうかがえる。古いヴィンテージを先に飲んだのは理由があったのだ。

　コラール・ド・ブアールは「毎年、改善している。オリと共に3年近く熟成することで、フレッシュ感を保っている。ル・プリュはメルロ100％のエレガンスを表現し、ある意味でアンジェリュスより複雑。塩っぽい余韻を伴う」とコメントした。

2016年4月13日　東京・品川で

シャトー・ラ・フルール・ド・ブアール　2010
93点
価格：9000円
シャトー・ラ・フルール・ド・ブアール　2012
92点
価格：7000円
ル・プリュ・ド・ラ・フルール・ド・ブアール　2005
95点
価格：3万8000円
ル・プリュ・ド・ラ・フルール・ド・ブアール　2012
94点
価格：1万9000円
輸入元：LR　SELECTION