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世界で最も多くのボルドーを売る男と呼ばれたサイモン・ステイプルズが、先月亡くなっていたことがわかった。55歳だった。
ジャンシス・ロビンソンによると、サイモンは11月22日に亡くなった。豪放らい落な性格で、陽気なジョークを連発し、豪快にワインを飲んだ。何よりもワインを愛していて、世界各地に広がる顧客に高級ワインを売っていた。
最も一緒にワインを飲んだ友人の1人だった。「俺たちほど恵まれた仕事はないよな」というのが口癖で、世界のワイン業界の動向や造り手の人柄などを直に教わった。早すぎる死にショックを受けている。英国のワイン業界も悲しみに沈んでいるだろう。
サイモンはハロッズのワイン売り場を経て、老舗ワイン商のベリー・ブラザーズ&ラッド(BB&R)に入社。2011年にロンドンから香港に異動して、ワインの関税が撤廃された市場を開拓してボルドー・プリムールを売りまくった。
2014年に東京に異動し、セールス・ディレクターに就任。富裕層を相手にボルドー、ブルゴーニュなどの高級ワインを売りまくった。ボルドーではランシュ・バージュとオー・バイィが好みで、日本に広めるのに一役買った。2016年に英国に呼び戻された。ボルドー・プリムールの取材中に、シャトー・ラトゥールでばったり出くわしたのもいい思い出だ。
情報量の多さと外向的な性格から、幅広い人脈を誇り、様々なメディアに登場した。2014年に日本で公開されたドキュメンタリー映画「世界一美しいボルドーの秘密」に出演した。
ジャンシスとも仲がよかった。彼女が来日した際に夫妻を寿司屋に招待した。2017年、大橋健一MWとジャンシスのロンドンのマンションに招かれた席で再会し、相変わらず冗談を連発していた。
サイモンは最後はレイ&ウィーラーで個人顧客の担当ディレクターを務めていた。彼のいない世界は火が消えたようだ。
日本時代に彼の下で働いたスタッフには、独立してワインショップやワインスクールを興した人材も少なくない。日本にも確実に種をまいている。
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