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ピノと見分けがつかないガメイ、ピエール・フェローのサンタムール 1985

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 ガメイを熟成させるとピノ・ノワールと区別がつかないという体験は何度かした。ボージョレのサンタムールに拠点を置くピエール・フェローが、日本輸出30周年を記念した試飲会でも、そのことを実感した。

 1882年からの歴史を有し、生産量は90万本。イヴ・ドミニク・フェロー社長が当主になった1986年から、現・JALUXを通じて日本への輸出を始めた。89年には日本でボージョレ・ヌーヴォーのブームが起きたが、近年は日本市場の縮小に伴って、ヌーヴォー全体の出荷量が減少している。
 フェローは「ヌーヴォーの90%はボージョレACから産するが、ワインの買取価格が10月に比べて12月は35-40%も下がるから、生産者が不満を感じる。私は早い時期に決まった価格で購入する。ボージョレ全体の生産量は120万ヘクトリットルだが、かつてはその半分がヌーヴォーだった。近年は25万-40万ヘクトリットルまで減り、ボージョレの栽培面積も減少している」と語る。

 父ジャン・ミッシェルはヌーヴォーの比率が全体の30%を占めた時期もあるが、イヴ・ドミニクは15%に抑えてクリュ・ボージョレに力を注いでいる。「サンタムール キュヴェ・アンソルセルーズ 1985」、「ジュリエナ ピエール・ド・ブチ 1995」、「ムーラン・ナヴァン ラ・ダイナスティー・デ・フェロー 2005」の3本を試飲した。
 ブルゴーニュの良作年の「サンタムール キュヴェ・アンソルセルーズ 1985」は、オレンジを帯びたエッジ、フレッシュな酸があり、スリムなボディ。ミント、オレンジの皮、紅茶、腐葉土の香り、ピノ・ノワールを連想させるうまみがあり、繊細なフィニッシュとジリジリと続く余韻。粘土の多い土壌が生んだ繊細な味わい。落とし卵の赤ワインソースとよく合った。

 「ジュリエナ ピエール・ド・ブチ 1995」はより濃厚、オレンジのリキュール、ブラウンシュガー、森の下草、酸に見合うタンニンがしっかりしていて、ミッドパレットが厚い。スパイシーなフィニッシュ。シャンボール・ミュジニーを連想させるエレガントなスタイル。
 「ムーラン・ナヴァン ラ・ダイナスティー・デ・フェロー 2005」は凝縮した果実があり、タイトニット。ストロベリーのコンポート、酸化した鉄、骨組みがしっかりしていて、さらに20年の熟成の可能性を感じさせる。コート・ド・ボーヌ的なヴォリューム感がある。ムーラン・ナヴァンのバレル・セレクションで造られる。
 フェローは「ガメイは早く飲まれがちだが、クリュ・ボージョレを熟成させると、ピノ・ノワールと区別のつかないブルゴーニュ的なワインになる。ただし、シルーブルとレーニエは熟成に向かない」という。

 マルセル・ラピエールでも、20年以上熟成させたモルゴンに驚かされた経験があるが、しっかり造られたボージョレは探索すべき面白さがある。 

2016年6月2日 東京・日比谷の帝国ホテル「セゾン」で

ピエール・フェロー サンタムール キュヴェ・アンソルセルーズ 1985
91点
ピエール・フェロー ジュリエナ ピエール・ド・ブチ 1995
93点
ピエール・フェロー ムーラン・ナヴァン ラ・ダイナスティー・デ・フェロー 2005
92点
輸入元:JALUX

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