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完熟ピノとシャルドネのミネラル、熟成したセロス・ロゼの完ぺきなバランス

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 ロゼ・シャンパーニュがブームだ。2015年の輸出市場は量で3.4%、額で11.6%増加した。ロゼのトップ市場は米国。シャンパーニュの種類別比率で14.6%に達する。日本も13%と多い。日本人が飲むシャンパーニュの10本に1本以上はロゼという勘定だ。女性の飲み物と言われていたのに、すっかり浸透した。

 ロゼの決め手は、方式がブレンドでもセニエでも、完熟したピノ・ノワールを使うこと。クリスタルやドン・ペリニヨンのロゼが優れているのは、いい畑を使えるからだ。グローワーズ(レコルタン・マニピュラン)はその点で不利だが、ジャック・セロスは恵まれている。セロスはエグリ・ウーリエが樽発酵したアンボネイのピノ・ノワールを8%ブレンドする。友情関係の賜物だ。
 今回はポスト・デゴルジュマンの熟成を探るのが狙いだった。デゴルジュマンから8年たった瓶を、日本料理「晴山」に持ち込んだ。瓶内熟成は最低でも60か月間。通常は3ヴィンテージをブレンドするから、2000年代前半のシャルドネがベースとなる。イニシャルと区画は違うが、リザーヴワインは60%ブレンドする。長く寝かせたのに、オレンジがかった明るいピンク色。酸化させる造りなのに、若々しさを保っていた。ブルゴーニュの赤ワイン同様に、タンニンが完熟しているからだろう。

 長年、横にしていたので、瓶の側面にはオリがつもり、底には塊があった。ラズベリー、サワーチェリーのリキュール、生き生きした果実は力強く、タンニンと酸が継ぎ目なく統合されている。樽のニュアンスはない。熟成ピノ的なうまみ。先日飲んだドン・ペリニヨンのロゼ1996ようなスーボワも出ていない。非常にフレッシュ。恐るべき熟成力だ。ドザージュは通例1、2グラムだが、甘みが舌に残る。熟成したブルゴーニュの赤に通じるまろやかさがある。そこに、ブラン・ド・ブランのミネラル感と酸が加わり、ほかにはない複雑な熟成をしていた。

 エグリ・ウーリエのロゼとはスタイルが違う。エグリのロゼはピノの比率が高い。両者を比較すると、シャルドネの切れ味とピノ・ノワールの豊かさを絶妙にブレンドしたセロスの方が好みだ。ルイ・ロデレールで、クリスタル・ロゼの二次発酵前のブレンドしたヴァン・クレールを試飲したことがある。あれも素晴らしいバランスだった。最良のロゼ・シャンパーニュ造りは、やはりピノ・ノワールがものを言う。

 晴山の料理は、先付のうにと賀茂茄子のクリームがけから、太刀魚の木の芽焼き、時鮭の炊き込みご飯まで、食材の新鮮さと出汁のうまみに、スパイシーなタッチを加えて、繊細に統合している。和食にはブラン・ド・ブランよりロゼがいい。

2016年5月29日 東京・三田の「晴山」で

シャンパーニュ ジャック・セロス・ロゼ 
デゴルジュマン 2008年6月
97点
購入:パリのショップで70ユーロ(2008年)

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