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ワイン映画の秋、各国舞台にした4作品が公開

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 日本、フランス、レバノンなど各国を舞台にしたワイン映画4作が、この秋に公開される。ワイン映画の多くはこれまで、ボルドーやブルゴーニュなど有名産地に軸足を置いてきたが、産地やテーマが多彩になり、ワイン初心者も楽しめる。


 『シグナチャー 日本を世界の銘醸地に』は、シャトー・メルシャンのチーフワインメーカー安蔵光弘と浅井昭吾(麻井宇介)の師弟関係に光を当てて、日本ワインが世界に認められ始めた1990年代を描く。浅井に感化された若者たちを描いた『ウスケボーイズ』の柿崎ゆうじ監督が、2人の絆に絞った脚本を書いた。


 入社まもない安蔵は、文章力や分析力、素直な性格を麻井に認められる。栽培は農家の専権事項だった時代に、桔梗ヶ原メルローを自ら手摘みして無添加で仕込む。きっかけは浅井がニュージーランドから持ち帰ったプロヴィダンスだった。


 病に倒れた麻井は、留学先のボルドーから帰国した安蔵に、「これからの日本のワイン造りを背負ってくれ」と将来を託す。若かった安蔵は背中を2度叩かれて、たすきを受け取り、国際コンペティションで入賞するワインを仕込み、師匠の期待に応える。


 柿崎監督は安蔵夫妻からじっくりと取材し、結婚式のビデオまで借りて、高い志で結ばれた師弟の信頼関係をリアルに描いた。淡々とした絵作りから畑に吹く風や醸造所の香りが感じられる。ソムリエの田邉公一さんら随所に出演するワイン業界人を探すのも楽しいだろう。


 「カッコよすぎて恥ずかしくなかったですか?」


 安蔵さんにきいたら、「浅井さんを紹介したいのと、日本ワインに興味を持ってもらえるという2点があったので……」と照れながら笑った。


 11月4日から新宿武蔵野館ほかで公開。公式サイトはこちら


 『ソウル・オブ・ワイン』はブルゴーニュファンなら必ず見たくなる場面を詰め込んだフランスのドキュメンタリー映画だ。


 冒頭、DRCの前醸造長ベルナール・ノブレが登場し、ワインの本質を深遠な表現で語る。続いて、ジョルジュ・ルーミエのセラーで、クリストフ・ルーミエとドミニク・ラフォンが、ミュジニーを樽から試飲する。


 ドミニクは「とても吐けない。美味すぎる」と感想をもらす。セラーで何度か試飲した私も同じ感想を抱いた。1樽から1樽半しかできない液体の宝石だ。


 DRCのセラー仕事が映され、オベール・ド・ヴィレーヌのコメントもまた深い。亡くなった醸造学者ジャック・ピュイゼの哲学的なワイン解釈も登場する。


 最後に、パリのレストラン「プティ・ヴェルド」のオーナー・ソムリエ石塚秀哉さんが登場し、ルーミエのシャンボル・ミュジニー・レザムルーズを試飲する。「線が細いのにびくともしない。なんだろう、この力強さは」とワインの本質を語る。


 マリー・アンジュ・ゴルバネフスキー監督に出演依頼された石塚さんは、過去にクリストフとレザムルーズの1928年やボンヌ・マール1945も飲んだ経験がある。


 「こういうのってまず持ってきたクリストフに対して敬意を表し頭を下げて飲む。旨い!以上にありがとうございますってなる。映画で飲んだ1945年はブラインドなら40年代といえないくらい若かったです」という。


 11/4からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー。配給はミモザフィルムズ。公式サイトはこちら


 『チーム・ジンバブエのソムリエたち』は経済危機で南アフリカに出稼ぎした難民たちが初めて飲んだワインに魅了され、ジンバブエ代表として「世界ブラインドワイン・テイスティング選手権」に出場する物語。2017年の実話に基づいている。


 フランスで開かれるこの選手権は”ワインテイスティングのオリンピック”と呼ばれる。4人のテイスターと監督が国を代表して出場し、世界中から出題される銘醸ワイン12本の品種、生産国、生産者、ヴィンテージなどを特定する。2017年の大会では、スイスのシャスラーやレバノンのカベルネ・ソーヴィニヨンが出た。フランスのチームも11位に終わったほどで、難易度は高い。


 最初は当てずっぽうだった若者たちが、訓練を積んで精度を高めていく。大会のレセプションでは、チームをサポートしたジャンシス・ロビンソンと同じテーブルに座る。半年間で世界のワイン舞台で国を背負って闘うまでに成長するのだ。ワイン版『クール・ランニング』のタッチもある。


 4人は翌年の大会にも出場し、2度目の挑戦で日本、スペイン、イタリアを抑えて14位の成績を収めた。ワインを飲まない人の心も揺さぶる人間讃歌となっている。ブラインド・テイスティングがちょっとしたブームの日本の愛好家には興味深いだろう。


 12月16日からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国ロードショー。公式サイトはこちら


 『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン』は内戦中もワイン造りを続けたレバノンの造り手たちにスポットライトを当てたドキュメンタリー。


 英デカンター誌のマン・オブ・ザ・イヤーを1984年に初めて受賞したシャトー・ミュザールのセルジュ・ホシャールが代表格で、ワイン造りの哲学やワインの生命力について語る。


 ミュザールを見出した故マイケル・ブロードベントやジャンシス・ロビンソンらが出演し、レバノンワインの個性を掘り下げて解説する。


 ブドウは太陽と土地さえあれば自然に育ち、野生酵母の力で自発的にワインが生まれる。ワインの魅力と、魅せられる人間たちの関係について考えさせられる。


 11月18日からアップリンク吉祥寺ほかで全国ロードショー。公式サイトはこちら
 

『ソウル・オブ・ワイン』出演のDRCのオベール・ド・ヴィレーヌ (c)2019 – SCHUCH Productions – Joparige Films – 127 Wall
『シグナチャー 日本を世界の銘醸地に』で安蔵光弘さんを演じた平山浩行
『ソウル・オブ・ワイン』出演のドミニク・ラフォン(左)とクリストフ・ルーミエ (c)2019 – SCHUCH Productions – Joparige Films – 127 Wall
石塚秀哉さんとクリストフ・ルーミエ
『チーム・ジンバブエのソムリエたち』で国を背負って闘った若者たち
『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン』出演のセルジュ・ホシャール

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