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足で歩いた現地取材に基づく「イタリアワイン産地ガイド 地図でわかるDOCGとDOC」が発刊された。イタリアワインを真剣に学ぶのに欠かせない、プロや愛好家の必携ガイドブックに仕上がっている。
ワイン産地に分け入る方程式は、地勢と風土や歴史を理解した上で、品種と公式な規定を把握して、ワインを試飲するところから始まる。イタリアワインの苦手な人が多いのは、まず産地が多岐にわたり、地勢が複雑なため、切り口を定めにくい。DOCGとDOCの変更が多いため、フォローしきれない。多彩な土着品種の整理も手間がかかる。
本書はそうしたハードルを飛び越えるのを助けてくれる。畑の向き、標高、海や山との位置関係などテロワールを構成する要素を、地図を見ながら実感し、アペラシオンの成り立ちまで理解できる作りになっている。
ヒュー・ジョンソンとジャンシス・ロビンソンの編著による「世界のワイン図鑑」はこうしたガイドブックの先駆だが、ワイン産地が世界に増える中で、主要産地にフォーカスしているため、産地ごとの情報量が限られる。更新にも時間がかかる問題を抱えている。
今回のイタリアワイン産地ガイドは、著者が長年かけて全土を歩いてきた現地取材に基づいている。圧倒的な情報量と細やかで深い背景。有名産地だけでなく188のDOCGとDOCをカバーしている。96枚のオリジナル地図と分析的な解説、栽培・醸造のデータを統合しながら読み込むことにより、産地の全体像が浮かび上がってくる。
知名度の高くない産地のワインを試飲する時、地図を眺めながら規定を読めば、味わいの背景にまで想像が広がり、理解が深まる。ソムリエやバイヤーなどのプロは、イタリアワインの広大な海図を整理できる。愛好家は飲みながら知的興奮を深められるに違いない。
全呼称名、ワイン名、品種名から逆引きでき、辞典的な使い方にも配慮している。
著者の中川原まゆみさんはイタリアでソムリエ資格を取得し、「土着品種で知るイタリアワイン」など興味深いイタリアワイン本を出版している。取材・執筆の苦労が想像される。ワイン地質学研究家の坂本雄一さんのオリジナル地図96枚も、地勢や気候が思い浮かぶリアリティある労作。
イタリアワインを試飲するたびに紐解く書となりそうだ。
出版元はガイアブックス。6300円(税抜き)。
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