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サンタ・クルーズのスーパースター、ルロワを連想させる官能的なリース

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 ジャンシス・ロビンソンMWとカリフォルニア・ベースのジャーナリスト、リンダ・マーフィの「アメリカン・ワイン」(2013年刊)は、サンタ・クルーズ・マウンテンの「スーパースター」として3生産者を選んでいる。リッジ、マウント・エデン、そしてリースである。異論はない。
 リースの畑仕事は精密で、厳格だ。冷涼な気候と長いハングタイムにより、低い糖度で生理的成熟が得られる。要は、良作年のブルゴーニュと同じ。赤ワインのアルコール度は12.5%前後にとどまる。低アルコール度と凝縮度の両立が、英国の評論家から評価されている。高い標高で、表土の薄い急傾斜の畑だから収量が低い。エイカー当たり1~2トンとは、ヘクタール当たり最大でも28ヘクトリットルを意味する。「10本の樹から1本のワインしかできない」とワインメーカーのジェフ・ブリンクマンが明かす。
 
 醸造も正確だ。岩盤を特殊ドリルで掘ったカーヴは3000平方メートル。ナパヴァレーのコングスガードより規模が大きい。メーリングリストの顧客向けボトルが、積み重なる中を奥に進む。1トンの発酵槽を100基そろえて、区画別醸造に対応している。5日間の低温浸漬の後、発酵期間は3週間。全房発酵するため、足で踏む。「小さい方が何が起きているかよくわかる」とジェフ。

 赤の2013の試飲は、スカイライン・ヴィンヤードに続いて、さらに3つのキュヴェに進んだ。アルパイン・ヴィンヤードは、ダークチェリー、黒鉛、凝縮していて、ヴォリュームが大きいが、重くはない。ピュアで、明るい酸。スパイシー。全房発酵50%というが、もっと少ないと感じた。「そう思われるのはうれしい。青さはないだろう」とジェフ。傾斜は40%。カレラ、スワン、ラ・ターシュなどのヘリテージ・クローンを植えている。
 アルパインからわずか2.4キロ東のホースシュー・ヴィンヤードは、よりエレガント。バラの花びら、レッドチェリー、アニス、果実が幾重にも折り重なりあい、品格と躍動する軽快さがある。ミネラルがまとわりつくフィニッシュ。岩と火山灰の混じる沖積土壌から。

 ハイライトはスワン・テラス。これはアルパインの一部の東向き区画を別に仕込んでいる。シャブリのサブクリマのようなものだ。南向きが支配的なアルパインとは明確に異なる。より正確で、タイト、テンションがあふれている。オレンジの皮とブラックベリーの混じる香りはどこか懐かしい。ルロワのヴォーヌ・ロマネ・ボーモンを思い出した。チョーキーなシェール土壌から。全房発酵比率は3分の2。官能的と呼びたくなるカリフォルニアワインに、初めて出会った。
 ジェフが最も好きなのは、男性的なスカイライン・ヴィンヤードと女性的なスワン・テラスだとか。DRCよりルロワが好きとも。「グランクリュでなくても、どんな畑からも素晴らしいワインを造るから」と。その点は同感。リースがブルゴーニュを感じさせるのは、DRCやルロワと同様に、全房発酵からくる骨組みや複雑性があるから。そこが米国のブルゴーニュ愛好家に支持されているに違いない。とにかく手に入らない。ハーフボトルの飲み残しを栓するだけで持ち帰り、5日後に飲んだが、衰えはない。発展していた。

 「スカイラインは3500万年前、ホース・シューは1500万年前、アルパインは300万年前の地層。狭い土地でこれだけ多様性に富む土壌はほかにないだろう」
 リースのワインは、テロワールのショーケースでもある。

2015年12月7日 カリフォルニア・サンタ・クルーズ・マウンテンのリースで

リース ピノ・ノワール アルパイン・ヴィンヤード サンタ・クルーズ・マウンテン  2013
95点
リース ピノ・ノワール ホースシュー・ヴィンヤード サンタ・クルーズ・マウンテン 2013
希望小売価格:2万4000円
95点
リース ピノ・ノワール スワン・テラス サンタ・クルーズ・マウンテン 2013
96点

輸入元:中川ワイン 

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