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接ぎ木をしていない自根のブドウ樹「フラン・ド・ピエ」(franc-de-pied)をユネスコの世界遺産に申請する動きが、ヨーロッパのワイン生産者、学者、ソムリエらの間で起きている。
フラン・ド・ピエは地中に直接植えられた自根の樹。19世紀にヨーロッパのブドウ畑を壊滅させたフィロキセラを生き抜いた樹をさす。大半の樹は、ブドウネアブラムシの耐性を持つ米国産の台木に接ぎ木された。フランスでは現在、約30種の台木が使われている。
だが、虫が侵入できない砂の多い土壌や、冬に水没させて地中の幼虫を窒息死させる畑などで、自根の樹は生き残っている。フラン・ド・ピエのワインが接ぎ木したワインより純粋な味わいで、エネルギーがあると、生産者にも専門家にも官能的に認められている。
Terre de Vinsによると、ヨーロッパの約20人の生産者が先月21日、フラン・ド・ピエで栽培するボルドーの生産者「リベル・パテール」(Liber Pater)に集まって、フラン・ド・ピエのノウハウをユネスコに認めてもらう運動に向けた2回めのシンポジウム「Rencontre des Francs」(フランとの出会い)を開いた。
この運動は昨年6月、アルベール2世 (モナコ公)とフランス美食大使(元エリゼ宮長官)のギョーム・ゴメスの後援の下で、フラン・ド・ピエを守る協会を設立した。長期的にはユネスコの人類無形遺産への登録を目指している。消えかけているフラン・ド・ピエを遺産として保護し、ノウハウを伝え、味わいを守る。
今回のシンポジウムは、リベル・パテールのオーナーのロイック・パテルの招待で、生産者が科学者やブドウ品種の専門家らと共に、栽培、歴史、未来について話し合った。ティボー・リジェ・ベレール(ブルゴーニュ)、シャルトーニュ・タイユ(シャンパーニュ)、マルクス・モリトール(モーゼル)、エゴン・ミュラー(モーゼル)らが、フラン・ド・ピエのワインを持ち寄り、接ぎ木したワインとの比較試飲も行った。
ロイック・パケはfranceinfoのインタビューで、「フィロキセラでテロワールとブドウの間にフィルターができた。自らのテロワールに根ざさなければ、ヴィティス・ヴィニフェラの表現はできない。このヴィティス・ヴィニフィエラを再び直接的に接触させ、自らのルーツを見つけ、場所を表現する」と、原点回帰の重要性を語った。
「ヨーロッパでは8000年前からワインが造られていた。地域によってブドウの品種やワインの作り方が違うので、この遺産をユネスコで保護したい。それぞれのブドウ品種には、それぞれの土地、それぞれの産地があり、それを見つけて守っていきたい」と語り、フラン・ド・ピエの区画のワインを示すラベルの作成などを構想しているという。
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