サンテミリオンのアンバサダー、中国のトップ女優ヴィッキー・チャオも消息不明

　中国の女子テニス選手、彭帥（Peng Shuai）さんが消息不明になった問題は、北京五輪に飛び火しそうだが、ワイン業界にも同種の問題が存在する。ボルドー・サンテミリオンのアンバサダー的な存在で、シャトー・モンロを所有する中国の人気女優ヴィッキー・チャオ（Zhao Wei）が、今年8月から公の場から姿を消している。

　チャオはチャウ・シンチーが監督した2001年の香港映画「少林サッカー」で日本でも知られるようになった。多くの作品に主演する中国のトップ女優。サンテミリオンのシャトー・モンロ（Chateau Monlot）を2011年に購入し、サンテミリオンのChateau La Vue、アントゥル・ドゥ・メールのChateau Senailhacも所有する。

　シャトー・モンロはサンテミリオン・グランクリュの8haのシャトー。地質学者クロード・ブルギニヨンとペトリュスの栄光を築いた醸造長ジャン・クロード・ベルーエをコンサルタントに迎え、メルロとカベルネ・フランをブレンドした赤ワインを生産。ワイン観光にも力を入れている。

　中国のボルドー右岸人気を牽引し、サンテミリオン騎士団を叙勲した。2014年5月に香港で行われたヴィネクスポ・アジア・パシフィックの開会セレモニーに来賓として出席し、香港特別行政区政府商務経済発展長官グレゴリー・ソー、ヴィネクスポの当時のグザヴィエ・ド・エイザギール会長と壇上に登った。

　ところが、今年8月にいきなり、彼女に関連する動画やSNSが中国のサイバー空間から消えた。映画、テレビ番組などのストリーミング動画がテンセント・ビデオのプラットフォームから削除され、SNSの微博（ウェイボ）のファンクラブもアクセスできなくなった。

　フランスの「ラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」は11月に入って、シャトー・モンロの受付担当者が「今年は収穫に来ないでしょう」と述べ、それ以上を語ろうとしなかったことを伝えた。彼女は自分のシャトーとボルドーワインのプロモーションに力を入れており、収穫時の不在は異例な事態と報じられている。

　中国ではTwitter、Facebook、YouTubeなど世界的なアプリへのアクセスは遮断され、ユーザーは国内サイトのWeibo、Renren、Youkuなどを利用している。彼女がウェブから消えた理由は明らかにされていない。

　中国共産党は、スキャンダル、富の誇示、ファンのトラブルが起きるエンテーテインメント業界の取り締まりを強化。国家サイバー空間管理局(Cyberspace Administration of China)は、最近になって有名人がSNSで贅沢を誇示するのを禁じる通告を出した。

　彼女が経営する企業が投資家から訴えられたことや、チャオと夫の不動産実業家が若き億万長者カップルとして注目されていることが、当局を刺激したとの見方が、英米やフランスのメディアでは流れている。

　中国では、電子商取引の巨大企業「アリババ」創業者のジャック・マーら、ほかにも消息不明になった億万長者や有名人がいる。