NZホークス・ベイのエレガンス、MW造るクラギー・レンジのソフィアとル・ソル

　新世界にMWのワインメーカーは多い。クラギー・レンジのスティーヴ・スミスも優れた才能だ。1996年に一発合格し、ブドウ栽培の権威リチャード・スマート博士の下でも働いた。オーストラリア出身のスマート博士は、新世界の多くのワイナリーに手を貸した「空飛ぶブドウ樹ドクター」と呼ばれている。

　ニュージーランドは白ワインの国というイメージが強いが、スミスMWは幅広い知見から世界クラスの赤ワインも造れることを証明してみせた。主要レンジを飲んで、最も印象が強く残ったのはシラーとボルドー・ブレンドだった。1週間飲み続けても、へたるところがない。

　白ワインはマーティンボロの「ソーヴイニヨン・ブラン　テ・ムナ・ロード・ヴィンヤード　2014」とホークス・ベイの「シャルドネ　キッドパッパーズ・ヴィンヤード　2013」。ソーヴィニヨン・ブランはグラッシーで、ライム、洋ナシ、ほのかに甘く、ペッパリーなニュアンスが余韻に残る。シャルドネは白桃、ヘーゼルナッツ、砕いた砂利、余韻に火打石のニュアンスを帯びる。

　赤ワインは4種。マーティンボロで造る「ピノ・ノワール　テ・ムナ・ロード　2012」はザクロ、レッドチェリー、ほのかに黒コショーのヒント。シルキーなタンニン、果実はきれいに抽出されていて、持続性のある余韻につながる。ホークスベイの「テ・カフ　ギムブレット・グレーヴェルズ・ヴィンヤード　2011」はメルロ80％で、残りはボルドー系4品種のプロプライエタリー・ブレンド。ブラックチェリー、クローブの香りがあるフレッシュなミディアムボディ。もうすこし凝縮力が欲しいが、早くから楽しめる。

　やはり、ここの赤ワインの真打ちは、ギムブレッド・グレーヴェルズ・ヴィンヤードから造るメルロ主体の「ソフィア」とシラー100％の「ル・ソル」だ。ギムブレッド・グレーヴェルズはホークス・ベイの影響で涼しく、砂利、シルト混じりの土壌はやせている。カベルネ・ソーヴィニヨンには涼しすぎ、シラーのフェノールの成熟にも厳しい条件だ。

　そうした中で、メルロ60％、カベルネ・ソーヴイニヨン24％が主体のソフィアはボルドーのマルゴー的なエレガンスを表現する。ドライ・プラム、鉛筆の芯、ほのかに山椒の香り。ジューシーな果実があり、よく練れたタンニンとすがすがしい酸。凝縮されすぎていないバランスの良さと透明感がある。ル・ソルはブラックベリー、黒コショー、チョコレート。果実は濃厚だが、重さはなく、冷涼感を感じさせる。コート・ロティを感じさせるフィネスとタイト感がある。
　スミスMWは旧世界の哲学を備える新世界のワインメーカーと言われる。同感である。

2015年12月18日　自宅で
クラギー・レンジ　ソーヴイニヨン・ブラン　テ・ムナ・ロード・ヴィンヤード　マーティンボロ　2014
88点
希望小売価格：3200円
クラギー・レンジ　シャルドネ　キッドパッパーズ・ヴィンヤード　ホークス・ベイ　2013
89点
希望小売価格：3200円
クラギー・レンジ　ピノ・ノワール　テ・ムナ・ロード　マーティンボロ　2012
89点
希望小売価格：4500円
クラギー・レンジ　テ・カフ　ギムブレット・グレーヴェルズ・ヴィンヤード　ホークス・ベイ　2011
88点
希望小売価格：3830円
クラギー・レンジ　ソフィア　ギムブレット・グレーヴェルズ・ヴィンヤード　ホークス・ベイ　2011
93点
希望小売価格：8670円
クラギー・レンジ　ル・ソル　ギムブレット・グレーヴェルズ・ヴィンヤード　ホークス・ベイ　2010
94点
希望小売価格：1万830円
輸入元：アサヒビール