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ボルドー・サンテミリオンのシャトー・アンジェリュスの共同オーナー、ユベール・ド・ブアール・ラフォレストは、2012年のサンテミリオンの格付けで、地位を利用して特定のシャトーに利益をもたらしたとして、ボルドーの地方裁判所で6万ユーロの罰金(うち2万ユーロは執行猶予)の有罪判決を受けた。来年の格付けに向けて、世界遺産の小さな街が揺れている。
現地報道によると、ド・ブアールは、2010年から2012年にかけて作業が行われた格付けを監督していたINAO(国立原産地名称研究所)の地域支部委員会に属し、アペラシオンの管理・保護組織(ODG)の委員長も務めていた。その一方で、多くのシャトーのコンサルタントをしており、金銭的な利害関係を持つシャトーに関与していた。ド・ブアールが相談を受けた7シャトーは昇格したか、ステータスを維持した。
判決はド・ブアールが格付けの決定に果たした役割を、受動的な利益相反を超えていると認め、「友人間の取り決め」があったと指摘した。
共同被告となったシャトー・トロット・ヴィエイユのオーナーでネゴシアンも所有するフィリップ・カステジャは無罪となった。トロット・ヴィエイユは、ド・ブアールがコンサルタントを務め、2012年の格付けでプルミエ・グラン・クリュ・クラッセB(1er GCC-B)の地位を維持した。
ド・ブアールのアンジェリュスは2012年の格付けで、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA(1er GCC-A)に昇格した。
この訴訟は、2012年の格付けで降格されたコルバン・ミショットやクロック・ミショット、ラ・トゥール・デュ・パン・フィジャックのシャトー・オーナーが起こした。判決ではド・ブアールが原告シャトーの降格に影響を与えたとは認められなかった。
サンテミリオン格付けの意義にも影響
今回の訴訟に先立つ7月、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAのシュヴァル・ブランとオーゾンヌは格付け離脱を発表した。
両シャトーはINAOが認めた1955年の格付けから1er GCC-Aとして、半世紀にわたりサンテミリオンの頂点に立ってきた。来年に予定される次回の格付けの申請期限は6月末だったが、再申請しなかった。
格付けの審査基準は、15ヴィンテージの試飲が30%、国内、海外の名声、プロモーションの成功、販売手段が35%、地形、土壌学からみるテロワールの均質性、品質が30%、作業、栽培、醸造、トレイサビリティが5%となっている。
両シャトーの格付け離脱の背景には、試飲やテロワールが、プロモーションやレセプション施設に比べて軽視されているという不満があった。アンジェリュスは今回の訴訟の直接の対象となっていないが、品質がだけでなくプロモーションも優れている。それが1er GCC-A昇格の要因の1つになったと見られる。
来年の格付けに向けて、1er GCC-Bのフィジャック、ヴァランドローなどは昇格に意欲をにじませており、シャトーの刷新などを行ってきた。現行の格付けでは、計82シャトーが1er GCC-A(4)、1er GCC-B(14)、GCC(64)に格付けされている。
10年に1度のサンテミリオンの格付けは、来年に向けて準備が進められている。今回の訴訟と両シャトーの離脱は、サンテミリオンの品質向上の原動力となっている格付けの意義に疑問を投げかけるものとなりそうだ。
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