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5つのキーワードで読み解く、ルイ・ロデレールのコレクション242

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 ルイ・ロデレールが35年ぶりに刷新するスタンダード・キュヴェ「コレクション242」。10月の発売を前に、シェフ・ド・カーヴのジャン・バティスト・レカイヨンへのメールやZoom取材に基づいて、そのコンセプトと手法を改めて解き明かす。


 ノンヴィンテージの「ブリュット・プルミエ」からマルチヴィンテージに転換する「コレクション242」について書くのは、6月の初報詳細な解説に続いて3度めなので、今回は重要な5つのキーワードを軸に説明する。

 

【気候変動】

熟度ではなくフレッシュ感を求めて奮闘


 シャンパーニュ地方は冷涼で、雨が多く、果実が熟す年や産地が不安定なため、複数のヴィンテージをブレンドする。それで安定した味わいのノンヴィンテージを造る。教本や教科書にある定説は過去の話になりつつある。


 レカイヨンがシェフ・ド・カーヴに就任した1999年ごろから、気候変動が顕著になり始めた。温暖化で熟度が上がり、9月半ばから後半が普通だった収穫が8月に行われるのも珍しくない。2003年以降、7ヴィンテージで8月中に摘み取りが始まった。


 恵まれたヴィンテージに仕込む「クリスタル」は2000年代、雨の2001と猛暑の2003を除くすべてのヴィンテージで生産された。


 1986年に市場に出たブリュット・プルミエのドザージュは12g/Lだったが、9g/Lに減らされ、コレクション242では8g/Lとなった。


 レカイヨンがコレクション開発に乗り出したきっかけは偉大な2002ヴィンテージ。よく熟したブドウから仕込んだベースワインの凝縮感を和らげるため、凝縮度の低いリザーヴワインを使わねばならなかった。


 「できる限り最高なワインを造るのではなく、ブリュット・プルミエのスタイルに近づけるため、和らげようとした」。納得できない体験をしたレカイヨンはそこから、トライアルし、「現代のシャンパーニュは熟度ではなく、フレッシュ感を求めて奮闘する」という考えにたどり着いた。


【オーガニック栽培】

風味、凝縮感、フレッシュ感を獲得


 メゾンは2000年から、自社畑242ha(410区画)でビオロジックとビオディナミへの転換に取り組んできた。ほぼ半分の115haで、AB(Agriculture Biologique)の認証を得た。今年2021年に対象区域から収穫したブドウはオーガニックを名乗れる。


 残る畑も農水省によるHVE3(環境価値重視認証)と、シャンパーニュ地方独自の有機認証「VDC」(Viticulture Durable Champagne) の認証を得ており、オーガニック認証を目指している。


 オーガニックの畑にも、ビオディナミの手法を導入して、3区画の10haはデメターからビオディナミの認証を得ている。ルフレーヴやDRCも指導したコンサルタントのピエール・マッソンの助言をうけて、ビオディナミへの転換を図ってきた。


 オーガニック栽培で、結実するブドウの実が減るため収量は約20%減少する。その分、凝縮感が増して、よりアロマティックでpHの低い、しっかりしたテクスチャーのブドウが得られる。風味、凝縮感、フレッシュ感の獲得が、コレクション実現の基盤を支えている。


【マルチヴィンテージ】

パーペチュアル・リザーヴのもたらす複雑性とテクスチャー


 コレクション242は、2012年から継ぎ足し始めたパーペチュアル・リザーヴ34%と伝統的な大樽熟成のリザーヴ10%に、収穫年2017のベースワインをブレンドした。ベースワイン75%と大樽熟成のリザーヴ25%をブレンドしていたブリュット・プルミエとは大きく変わった。このリザーヴの使い方がコレクションの核心をなす。


 パーペチュアル(永続的な)という意味を持つソレラ・システムのリザーヴは、ジャック・セロスのシュブスタンスが有名だが、カーヴの空間に制約があるグローワーが多用してきた。ルイ・ロデレールにはよりポジティヴな狙いと効用がある。


 320hlから、1000hl、2350hlまで20基のステンレスタンクを室温12度の地下セラーに設置した。計1万5000hl。常に200万本分のストックを抱えていることになる。コレクション242には2012から2016まで5ヴィンテージのパーペチュアルが加えられた。毎年、平均5000hlを継ぎ足して、補充する。


 還元的な環境でタンクに保管されるのはノンマロのシャルドネとピノ・ノワール。テクスチャーが統合され、さらなるフレッシュ感、複雑さを得る。「小型タンクに窒素を使う場合もあるが、きわめて安定している」とレカイヨン。時を重ねるにつれて、パーペチュアルはさらに熟成を深める。


 一方、大樽でヴインテージ、品種、畑別に熟成される伝統的なリザーヴワインは、複雑さをファインチューンし、ロデレールの個性とオークのタッチを加える。コレクションには2009、2011、2013、2014、2015、2016の6ヴィンテージがブレンドされた。


 2種のリザーヴのブレンドは、ルイ・ロデレールの一貫したメゾンスタイルを安定的に表現する。そこに最新ヴィンテージの個性が加わる。メゾンのスタイルの本質とは、フレッシュ感、テクスチャー、複雑性に基づくフィネスとエレガンスである。コレクションはだから、ノンヴィンテージでなく、マルチヴィンテージなのだ。


 愛好家はレカイヨンと同級生のオリヴィエ・クリュッグが当主を務めるクリュッグのグランド・キュヴェの手法を思い出すかもしれないが、300万本生産されるコレクションの価格は手の届く範囲内にある。


【契約農家】

購入するブドウも区画のテロワールを表現


 ルイ・ロデレールの自社畑比率は75%。メゾンで最も高い。ヴィンテージとクリスタルは自社ブドウから造られ、クリスタルのブドウは100%ビオディナミで栽培されている。数世代にわたるつながりから「高品質」を主張するメゾンもいるが、自社管理にはかなわない。


 20-30%のブドウを購入して造るコレクションでは、契約農家と連携して、ブドウの品質向上に注力している。栽培サポートチームを結成し、ひんぱんに畑を訪ねて助言している。除草剤は使わない。買い取りは区画単位。収穫日も区画ごとに正確に決定し、別々に醸造する。


 コレクション向けブドウは、畑を土壌で川、丘、山の3つに区分している。区画のテロワールを表現したワインを造り、それをブレンドする。テロワール・ドリブンのフォーミュラをコレクションにも徹底しているのだ。


 少量のピノ・ノワールとシャルドネも買ってきたが、購入するメインはムニエだ。コレクションだけはムニエをブレンドする。メゾンもヴァレ・ド・ラ・マルヌに少し畑を所有するが、主にヴァレ・ド・ラ・マルヌとモンターニュ・ド・ランス西部から買い付ける。


 「ムニエはコレクションの複雑さのために不可欠。丸みがあり、柔らかい味わいは若いうちに飲んでもおいしい。ヴィンテージと異なり、早い段階で飲まれることも多いのでブレンドする」とレカイヨンは語る。


 シャンパーニュのメゾンの多くはクローナル・セレクションに頼り、マッサール・セレクションしているのはピエール・ペテルスなどごく少ない。ルイ・ロデレールはモンターニュ・ド・ランス地区のブルーズの畑を苗床にして、マッサール・セレクションを進めている。


 「将来は契約農家にも苗木を供与したいが、現時点では自社畑に使うだけでいっぱい。何年か後に余裕が生まれたらそうしたい」


【創造】

大量のリザーヴを糧に自由に創造


 10年以上前、メゾンで試飲した際、レカイヨンはワークブーツを履いていた。終わるとすぐに畑に出かけていった。優れた醸造家であるが、畑を愛する栽培家でもある。両方に通じるメゾンのシェフ・ド・カーヴは少ないのだが、両者が合わせ鏡であるのは言うまでもない。


 ルイ・ロデレールは数日以内に、2021ヴィンテージの収穫を始める。ミルデューで収量の減少が予想されているが、2021で仕込む「コレクション246」にどう影響するのか?


 「今年のような状況でコレクションを造るのはより簡単だ。パーペチュアル・リザーヴの弾力性が品質と、2012から2020にまでわたる9ヴィンテージの複雑さをまとめてくれる」


 「ヴィンテージは作曲するものだが、ブリュット・プルミエは創造する」と語っていたのを憶えている。コレクション242はより複雑な創造なのか?


 「そのとおり。同時に、味わいはより複雑に、ブレンドの自由さを得られたおかげで、よりエキサイティングな創造になった」


【試飲】

ワインとして優れているコレクション242


「ルイ・ロデレール コレクション 242」(Louis Roederer Collection 242)は生き生きしていて、すがすがしい。レモンオイル、りんご、オレンジの花、チョーキーなテクスチャー、リニアなアタックが広がりをみせ、ピュアな果実の厚みが加わる。クリーミィで、焦点のあった泡、重層的で、濡れた石、ヘーゼルナッツ、塩気を帯びて、まろやかな味わい、正確なフィニッシュ。シャルドネ42%、ピノ・ノワール36%、ムニエ22%。マロは34%。ドザージュは8g/L。


3日ほど飲みつないだ。泡は弱まるが、深みが増し、3日目に酸と味わいのバランスが最もとれて、ほのかにうまみを感じた。ブリュット・プルミエクリュも同様に時間をかけて飲んだが、コレクションの方がボディが崩れず、ワインとして優れている。93点。


 7500円。輸入元はエノテカ。

伝統的な大樽のリザーヴワイン
コレクション246向けムニエ収穫に備える圧搾所スタッフ Twitter @LouisRoederer_
アイの圧搾所 Twitter @LouisRoederer_

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