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サステイナビリティが重視されるワイン産業で、シャンパーニュのメゾンが二酸化炭素排出量を減らすパッケージングに力を注いでいる。ルイナールはスタンダードなブラン・ド・ブランに軽量でリサイクル可能なパッケージ「セカンドスキン」を採用して、世界展開している。
ルイナールは、シャンパーニュのボトル輸送が認められてから、1729年に最初に創業した最古のメゾン。1947年から、ブラン・ド・ブランを造り始めた。ドン・ルイナール1959をコント・ド・シャンパーニュ1952に続いていち早く出したブラン・ド・ブランの名門。フレデリック・パナイオティスが2007年に最高醸造責任者に就任して、正確さが増して、品質が向上している。
セカンドスキンはヨーロッパの森林から調達する天然木質繊維が素材で、100%リサイクルが可能。従来のギフトボックスより9倍軽く、二酸化炭素排出量を60%削減できた。ユネスコの世界遺産に登録された白亜のクレイエールを連想させる純白のパッケージとなっている。
シャンパーニュはラグジュアリーなイメージが大切なため、パッケージングは豪華で重くなりがち。ブラン・ド・ブランは、黄金の液体を透明なボトルに詰めて見せる傾向があり、そのままでは紫外線で品質が劣化するリスクが大きい。そのため、紙製のギフトボックスを利用する例が多い。セカンドスキンは外観の美しさとサステイナビリティを両立させた。
開発に2年かけて、7点の試作品を経て完成させた。スナップボタンで取り外せる。パナイオティスはセカンドスキンをつけたまま、氷水のクーラーにつけるのを勧めている。レストランでサーブする風景も従来とは変わって人目をひくだろう。
「我々は気候変動を深刻に受け止めている。30年間で平均気温は1.1-1.3度上がった。8月に収穫が始まる年も増えた。ブドウの品質に影響する。温室効果ガスを減らして、地球への影響を軽減する。ルイナールはカーヴでLEDの電球だけを使う。航空機での輸送は止めた。フランスの流通では、60%のボトルは最後の1キロを自転車や電気自動車で運んでいる」
セカンドスキンをつけた「ルイナール ブラン・ド・ブラン ブリュット」(Ruinart Blanc de Blancs Brut)は2018ベース。白い花、温かいレモン、洋ナシの皮、白桃、熟度が高く、チョーキーな酸はまろやか。軽やかなライトボディ。トースティ、ジンジャー、塩味があり、スモーキーなフィニッシュ。1万2210円。90点。
気候変動抑止でパッケージングに変化
LVMHグループのワインズ&スピリッツ部門を担う「モエ ヘネシー」は、6つのシャンパーニュ・メゾンを抱えて市場の約2割のシェアを誇る。畑で除草剤を全廃し、サステイナブル農法を強化する方針を発表している。
2位のメゾン「ヴーヴ・クリコ」は、ブドウの廃棄物と再生紙を組み合わせた生物分解性100%のギフトボックスに詰めた「イエローラベル ナチュラリークリコ」を発売したこともある。
また、レミー・コアントローが買収したテルモンは7月から日本市場に参入し、世界で初めてギフトボックスを廃止する決断をした。自社畑の72%がオーガニック認証を受けて、2025年まで100%認証を目指している。
シャンパーニュ委員会は2003年、世界のワイン産地で初めてカーボン・フットプリントの測定を始めた。カーボン・フットプリントを2025年までに25%、2050年までに75%減らし、2025年までに除草剤をゼロにする目標/を掲げている。
ガス圧に耐える重いボトルを使用するシャンパーニュの生産者は、輸送時の二酸化炭素排出量が多くなるのを避けられない。イングリッシュワインやウイスキーでも、リサイクル可能な紙製ボトルが登場している中で、パッケージングにも変化の波が訪れている。
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