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ブドウ樹を枯れ死させる幹の感染症エスカ(esca)がワインの品質に大きな影響を与えないという研究結果を、ボルドー・サイエンス・アグロ(Bordeaux Science Agro)が発表した。
エスカはフランス、イタリア、スペインなど地中海性気候の産地でよく発生する。菌類がブドウの切り口から感染することで発症し、古木がいきなり枯れ死する。フランスでは対策となっていた亜ヒ酸ナトリウムの散布が禁止され、有効な解決策は見つかっていない。ユーティパ・ダイバック(eutypa dieback)、ボトリオスフェリア・ダイバック(botryosphaeria dieback)と並ぶ幹の感染症。現代の“フィロキセラ”とも言われる。
研究を行ったボルドー・サイエンス・アグロはフランス農務省の監督下にある高等教育と農業研究の公的な機関。vitisphereによると、ボルドー左岸の12のブドウ畑から最も汚染された区画の提供を受けて、2ヴィンテージにわたって5区画からワインを仕込んだ。
研究者たちは、緑色、ピンク色、縮んだブドウを廃棄してワインを醸造した。エンジニアのコラリー・デュワメスによると、エスカの症状を示すブドウ樹は熟すのが遅いことが最初に確認された。「フェノールの熟成が影響を受けて、アントシアニンのレベルがわずかに落ちたが、タンニンの総量に違いはなかった」という。
専門家が収穫の翌年、2年目、6年目のワインを試飲した。デュワメスは「影響を受けた樹は色調が薄く、長さが短い」とコメントしたが、エスカの発生の有無はワインの全体的な評価に影響を与えなかった。「いくつかのフライトでは、発症した樹のワインは最も高い評価を受けたことすらあった」と語った。
今回の研究結果は、エスカにかかった樹のブドウを収穫前にカットすべきか、取り入れるべきかを判断する上で手がかりになる。よいニュースだが、エスカが収量の減少につながるのは間違いない。5ヴィンテージにわたる8区画の評価では、エスカの影響を受けた樹の収量は健康な樹より35%減少した。2年連続で症状が現れた樹の収量は55%減少した。
エスカは剪定の際のブドウ樹の切り口から菌類が感染することによって発症する。葉に黄色い縞模様ができて、葉全体が落ち葉の色に染まる。樹液の流れが影響していると考えられ、ギュイヨ・プーサール(Guyot Poussard)剪定が見直されている。
また、「樹液の皇帝」と呼ばれる剪定と栽培のコンサルタント「Simonit&Sirch」(シモニット&シルク」チームには、フランスやイタリアのトップ生産者から引き合いが強く、各地でコンサルティングを行っている。
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