お値打ちアロマティックな白、アルファ・エステートのマラグジア

　ギリシャ内陸部のアミンデオン。エーゲ海ではなくマケドニアの風土を宿す高原地帯は涼しい。標高は700メートル近辺。冬は雪の積もるスキーリゾートでもある。出来上がるワインは多様性に富む。冷涼感ある白ワインから、ロゼ、スパークリング、タニックなクシノマヴロまでが生まれる。
　トップ生産者のワインメーカーは現代的な醸造を身につけている。キリ・ヤーニのミハリス・ブタリスはUCデイヴィス卒、アルファ・エステートのアンジェロズ・ラトリディスはボルドー大卒。アルファのコンサルタントは、メドックの4つの1級シャトーを手掛けるエリック・ボワスノだから、死角はない。

　現地から最新ヴィンテージが、いち早く届いた。「マラグジア・シングル・ヴィンヤード　タートルズ　2015」は市場で最もお買い得な白ワインの一つ。2000円台前半。ジャンシス・ロビンソンMWが好きなことでも知られる。青リンゴ、ミント、ショウガ、アロマティックで、口中をリフレッシュしてくれる酸があり、余韻のほろ苦みが心地よい。山菜に通じる大地の力を感じる。標高670メートルの北西向き斜面から。

　「ソーヴィニヨン・ブラン　2015」は芝草、グレープフルーツ、シダの香りがあるが、青すぎるところはない。明るい酸とトロリとした口当たりのバランスがとれており、ミッドパレットは充実している。ニュージーランドとボルドーの中間にある、フレッシュで熟したスタイル。これも4000円を切る価格はヴァリュー。

　「クシノマヴロ　ヘッジホッグ・ヴィンヤード　2012」は黒スグリ、鉄、量の多いタンニンはやや硬いが、こなれていて、甘さを伴う。標高の高さからくる酸とタイトな味わいがあり、焦点のあったフィニッシュ。ピュアな果実は時間とともに丸くなる。これは3000円台半ば。

　「クシノマヴロ・リザーヴ・ヴィエイユ・ヴィーニュ　2012」は金属的な硬質感、甘草、湿った土、はるかに多いタンニンを備えている。層をなす果実の厚みと深みのある構造が、長期熟成力を物語る。栓をして1週間ほどチビチビ飲むと、まろやかなまとまりが出て、バランスのよさがあらわになった。
　白から赤までどのワインも、高い品質とコストパフォーマンスが光る。土着品種をモダンに仕上げている。ボルドーの格付けシャトーのように何を造っても破たんのない、ギリシャ最良の造り手の一つだ。

2016年6月6日　自宅で

アルファ・エステート　マラグジア　シングル・ヴィンヤード・タートルズ　2015
91+点
アルファ・エステート　ソーヴィニヨン・ブラン　2015
92点
アルファ・エステート　クシノマヴロ　ヘッジホッグ・ヴィンヤード　2012
92点
アルファ・エステート　クシノマヴロ・リザーヴ・ヴィエイユ・ヴィーニュ　2012
93点
輸入元：YORUGOS