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知られざるスイスワイン 台頭する若きリーダー(1)

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 スイスでイメージされるのは永世中立国、アルプスの山々、時計、チョコレートなどだろう。歴史の長いワイン生産国であることはあまり知られていない。輸出量は2%に満たず、ほぼ全てが国内で消費されてきたが、売り上げが伸び悩んでいる。国際競争と無縁だった国も変化を求められている。スイスワインの現状を踏まえて、台頭する若きリーダーたちの動きを追う。

 

歴史あるワイン生産地

 

 スイスは北緯45-47度のヨーロッパ中心部に位置する。四方を囲むフランス、イタリア、ドイツ、オーストリアなどワイン銘醸地を有する国と同様に、恵まれたテロワールがある。紀元前58年にジュリアス・シーザーに侵攻され、その後400年以上ローマ帝国による支配が続く中でブドウ栽培とワイン生産が根付いた。


 中世にはブルゴーニュの君主やシトー会修道士によってワイン生産が発展した。フィロキセラ禍以降、ブドウ栽培面積は約半分に減ったが、それでも1万4800haと世界第20位の大きさだ。九州ほどの広さの国土にしては畑の面積は広い。


世代交代したスイス・ワイン・プロモーション 


 スイス人の1人あたりのワイン消費量は年間約40本。うち60%以上を輸入ワインが占めている。近年は輸入ワインの割合が増え、売り切れない国内生産者が増えてきた。ヨーロッパ各国のワイナリーは、EUから年間8億ユーロの補助金を得て、単価の高いスイス市場に激しい売り込みをかけている。コストの高いスイスワインは劣勢を強いられている。新型コロナウイルスの影響で追加の補助金を受けた国もあり、競争はさらに激しくなっている。


 スイス・ワイン・プロモーションのディレクターに昨年就任したニコラ・ヨス。10月に38歳になったばかりの彼の仕事は、自国ワインの消費量をあげること。新しいチームを結成し、若い世代にアピールできるよう戦略を練ってきた。26-34歳の女性4人で構成されるチームはSNSでのコミュニケーションにも長け、コロナ禍の中でも柔軟に対応している。


 まずはスイスワインのロゴを配布し、店頭でスイスワインがはっきり視覚化できるようにした。コロナ自粛開けの7-8月にはレストランでのバイ・ザ・グラスキャンペーンを行なった。地方や種類を限定せず、スイスワイン 3種を提供することが条件で、それによりインセンティブがつく。837軒のレストランが参加した。プロモーションが功を奏して上半期の売り上げは前年比10.4%増となった。


 今後は各地の食材と地元ワインをコラボレーションしたプロモーションを行い、地元ワインの積極的な購入を推進する。ワイナリーで収穫、醸造、生産者との食事など1日ワイナリーの仕事を体験できる企画もある。


 スイスでは多くのワイナリーが訪問者を積極的に受け入れており、オーナーが直接出迎えてくれることが多い。そういうオープンでアットホームなスイスの生産者との関係を深め特別な体験をして欲しいという。


 「ここ1、2年、特に若い世代の間でトレーサビリティーの確実な地元の食材、環境に配慮した消費活動を求められるようになっている。それは世界的パンデミックの中でさらに高まった。輸入ワインに比べ価格は少し高くても自国のワインを選んでもらえる良いチャンスだ。新たな視点でスイスワインの魅力を伝えていきたい」


 スイス人の気質として、海外で評価が高まることで自国の製品の良さを認識するという側面があるらしく、海外への輸出も積極的に支援している。少し日本人と共通点を感じた。


 来年のオリンピック開催期間中には東京で展開されるスイス・ハウスでプロモーションを行う。スイス人シェフの料理と合わせてワインを出す。多くの日本の人達にスイスワインを楽しんで欲しいと熱く語ってくれた。

 

text&photo by 長縄三世

世界文化遺産のラヴォーの畑。レマン湖からの反射光もありブドウはよく熟す。湖の向い側はフランス(c)Swiss Wine
ラヴォーのグラン・クリュ、デザレーの畑は中世にシトー会の修道士がブドウを植えた。傾斜が強くブドウの運搬にレールを使う。傾斜を支える石垣の蓄える熱もブドウの成熟を助ける(c)Swiss Wine
スイスワイン ・プロモーションのニコラ・ヨス
ローカルワインのコーナー。ジュネーブのデパートにて

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