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ワイン本を大別すると、初心者向け、専門家向け、試験対策と3つのジャンルがある。このうち初心者向けが最も多いのだが、最近になってワインにビジネスを絡めた本がちらほらと登場している。
ワインビジネスを語るためには、トレードでの経験、マーケティングの知識、正確な歴史認識などが求められる。書き手にも高い見識を求められる。これまで出版された本には、基本的な事実や認識が誤っているものが散見されたが、ソムリエ、レストラトゥール、インポーターなどで経験を積んだ渋谷康弘さんの新著「成功する人はなぜ、高いワインを飲むのか?」は、土台がしっかりしている。日本にも増えているコレクターやワイン投機家に役立つだけでなく、愛好家に新しい発見を与えてくれる内容に仕上がっている。
世界的に有名なワイナリーがどのようにしてブランドを構築したのか。日本にもわずかに存在する富裕層の愛好家たちがどのようにワインを楽しんでいるのか。資産となりうる銘柄は何か。興味深いトピックを最新のデータに基づいて紹介している。アラン・デュカス、ピエール・ガニェールらトップシェフと一緒に働いた経験と、現在は会員制ワインクラブを経営する交友範囲の広さが文章の端々ににじんでいる。
欧米では常識化しているビジネスの視点に立脚するワインライフを知り、考えさせてくれるワイン本だ。
朝日新聞出版。1600円。
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