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疲労回復に肉三昧、セヴローで自然派ワイン

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 疲れると肉を食いたくなる。日本なら焼肉だが、フランスなら牛のステーキを。

 産地取材の最後はパリでおいしいものを食べる。今回は気取った星付きより、肉な気分だった。3週間も旅して、やはり疲れたのだ。懐かしい14区の「セヴロー」に予約した。肉を一頭さばいているこのビストロは日本でも有名になったようだ。

 このレストランに初めて訪れたのは2004年。10年も前の話だ。知り合いのインポーターから「フランスで牛のステーキを食べる気はしないけど、ここはおいしい。ワインは自然派ばかり」と勧められた。記憶を頼りに探したら、相変わらずの満員。黒板のメニューも変わりない。変わったのはワインリストが出来たことか。

 サーロインは33ユーロ。当時が24ユーロだった。10年の年月を考えれば良心的だろう。ワインはファニー・サーブルのヴォルネイ2011(64ユーロ)。フィリップ・パカレの下で修行した女性醸造家のワインだ。前菜はサラミ(8ユーロ)。徹頭徹尾の肉攻めだ。

 赤いワインは目の前でデキャンターにゴボゴボと注ぐ。おしまい。潔い。サーブルは、細身でチャーミングな造り。ブドウをいじった感じがなくて、グイグイいける。パカレを優しくした感じだ。サラミが進む。

 サーロインは山盛りのフレンチフライと。肉を切り、口に運び、かみしめる。肉汁の余韻が残る口に、熱いポテトを詰め込み、赤ワインで脂を流す。シンプルな動作の繰り返しに官能が高まる。肉食いの喜びがここにある。

 一人満足していたら、日本人が入ってきた。どこかで会った記憶が。エノコネクションの竹下さんだった。モンペリエの見本市から帰ってきて、肉が食べたくなったという。1日中、ワインを試飲していたせいだろうか。上品な美食よりも、素朴な料理が食いたくなるのだ。

 テーブル常備の黒コショーをバリバリかけながら、さらに肉を食う。果てしない欲望の連鎖だ。竹下さんの頼んだアントル・コート(あばら肉)もおすそ分けしてもらう。さんざん満腹なのに、ワインがあるとさらに入る。肉の別腹もあるのだ。

 シェフも給仕人も、料理も変わっていない。心も体も満たされて地下鉄に乗った。この10年間で得たものと失ったものに思いをはせながら。というのはウソで、1本飲んでかなり酔った。乗り換えもあったのに、寝過ごさずによくホテルに着いたと思う。異国の緊張感のせいか。

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